米労働省は12月6日、11月の雇用統計を発表した。それによると、非農業部門雇用者数は20万3000人増(前月比)と、予想の18万人増を上回った。10月(20万4000人増)に続き、2か月連続で20万人を超え、過去3か月間の平均は19万3000人となっている。
11月の失業率も7%と前月比0.3ポイント改善、リーマン・ショック直後の2008年11月以来の水準にまで回復した。米国の雇用情勢が着実に改善していることを印象づけるものだ。
■緩和の「出口」は近づいた?
雇用環境の改善ともない、今春からの懸案であった、米連邦準備理事会(FRB)による大規模金融緩和(QE3)の縮小(出口)が確実な状況となってきた。ただ、出口の時期についてはアナリストの間で幅がある。12月に縮小が始まるという意見もあれば、「来春」という予想もある。
編集部としては、FRBが述べてきた「失業率6.5%」にはまだ達していないこと、米国がややデフレ傾向であること、イエレン次期議長が緩和縮小に慎重な「ハト派」であることなどから、12月に「出口」に踏み切ることはないと考える。それにしても、現在の経済状況が続けば、来春には着手されることが確実であろう。
■「出口」でも株価は下がらない
こうした中、米国の株価は堅調だ。米S&P総合500種指数は、年初来で25%以上も上昇している。米金融規制当局が打ち出した新規制(ボルカー・ルール)の内容も想定内のもので、金融機関の活動に大きな影響は与えないものだ。
今秋までは、FRBの「出口」が推測されると、株価が下がるのが一般的だった。「出口」がリスクオフのシグナルと受け止められていたわけで、緩和が続く(景気が回復してない)と株価が上がるという、おかしな状況だった。その点では、株価が「金融相場」であるとの印象は拭いきれなかった。
だが、ここにきて、米国企業の業績は着実な回復を見せており、住宅価格なども底堅い。そこに雇用の回復である。米国経済が本格的な成長軌道に乗り、株価も「業績相場」となってきたと評価できる。
その企業業績だが、S&P500採用企業の第3四半期決算は、前年同期比で6%弱の増益になる見通しだ。
■国債発行上限に要注目
ただ、リスクは引き続き残る。新興国の景気減速とドル高傾向、さらに企業の設備投資に力強さが見えないことだ。
ただ、米議会超党派委員会が約850億ドル規模の予算案で合意し、10月のように、政府機関が閉鎖するような事態は避けられることになった。米国経済の不透明要因の一つが消えたことになり、企業家のマインドも変化し、設備投資にも変化があらわれるのではないか。
米国経済、株価に関しては、全体的には楽観基調を堅持すべきだろう。問題は、2月に迫る再度の国債発行上限の引き上げである。米株価の先行き判断は、2月の動きに注目すべきだ。
(編集部)
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