「フラジャイル5」は新たなリスク? アルゼンチン・ショックが波及【ビジネス塾】


1月末に世界を襲った「アルゼンチン・ショック」。アルゼンチンが急激な通貨安に見舞われたものだが、直接の契機は、米連邦準備理事会(FRB)が1月から金融緩和(QE3)の縮小(テーパリング)を始めたことである。

それ以前、とくに2008年のリーマン・ショック以後は、おおむね、米国など先進国からは資金が流出し、新興国にさまざまな投資資金として流れ込んでいた。これが逆流し始めたのだが、すでに昨年5月に兆候が見え始めていた。

世界経済はどこに向かうのか、日本経済への影響はどうなるだろうか。

■「フラジャル5」だけではない
アルゼンチンに始まった資金流出だが、影響は世界に及んでいる。その影響とは、端的に言えば通貨安である。

市場関係者は、通貨安に襲われている国を「フラジャイル5」(ぜい弱な5カ国)と呼んでいる。インド、インドネシア、ブラジル、南アフリカ、トルコの5カ国である。通貨が下がった国はこれにとどまらず、アルゼンチンもあるし、ロシア、ポーランドなどもそうである。

「フラジャイル5」に共通するのは、経常収支が赤字であること、外貨準備高が減っていること、物価が上昇していることである。この3つを背景に、投資家にとってこれらの国々は「不安な国」として映り、流れ込んでいた資金(先進国からのものが大部分)を引き上げられ通貨安を招き、それがさらに資金を流出させているのである。

この流出は、昨年5月、FRBのグリーンスパン議長(当時)がテーパリングを示唆(しさ)したことに始まった。2013年を通じて、1350億ドルの資金が流出したと言われている。

■アジア通貨危機の再来か?
新興国が資金流出に見舞われるのは、初めてのことではない。1997年にも、タイなどアジア諸国から資金が流出する「アジア通貨危機」に見舞われている。当時、タイ、インドネシア、韓国などが経済が破たん状態となり、国際通貨基金(IMF)の資金援助を受けた。インドネシアでは、スハルト独裁政権が倒されるきっかけになった。

今回の事態は、アジア通貨危機ほどには深刻化しないという見解がある。当時と異なり、新興国の多くは変動相場制を採用しており、通貨を下落させることができる。外貨準備も、アジア諸国は比較的潤沢である。

楽観できないという見解もある。アジア諸国はともかく、「フラジャイル5」は外貨準備が十分ではないという見方がある。また、新興国に流れ込んでいる資金の量(証券投資残高)は、アジア通貨危機当時の約25倍に膨らんでいる。これまた、先進国の金融緩和策が理由である。これだけのマネーの動きは、外貨準備だけで対応できないのではないかということである。

通貨安がどう発展するか、余談は許さない。急浮上した世界のリスクの一つとして、よく見定めておかなければならないだろう。

(編集部)

※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。

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