メーデーと安倍首相 賃上げはうまくいったのか?【ビジネス塾】


オバマ大統領が来日し、ニュースはこの話題で持ちきりだ。本来なら、この問題について書くべきところだが、環太平洋経済連携協定(TPP)など不確定な問題もあるので、次回に回したい。

今回は、安倍政権が「デフレ脱却」のためとして経済界に働きかけた、賃金引き上げ問題について述べたい。

■メーデーへの出席は小泉首相以来
安倍首相は4月26日、労働組合の連合が主催するメーデー集会に参加する予定だ。自民党の首相が参加するのは、小泉元首相以来のことになる。

安倍政権は「デフレ脱却」を掲げ、日銀による「質的量的緩和」をはじめとするアベノミクスを実施、その一環として、経済界に「賃上げ」を求めてきた。

以前の記事でも書いたが、その狙いは、4月からの消費税増税の景気への悪影響を最小限に抑えるためには、勤労者への賃上げとそれによる消費の下支えが必要だったからだ。まだ不確定要素が多いが、これまでのところ、4月以降の消費の落ち込みは、各種予想の「想定内」の範囲らしい。

■賃上げは想定内か?
では、賃上げはどうだったのか。経団連のまとめによると、定期昇給とベースアップ(ベア)などを合わせた賃上げ額は月平均7697円で、1998年以来久しぶりに7000円台になった。

これだけだと「上がった」という印象を受けるが、消費税が3%分上がっているので、それを考慮しないといけない。この賃上げ率は2.39%。上がったとはいえ、増税分を考えると、実質的には0.61%のマイナスだ。

しかも、この調査は従業員500人以上の上場企業に限られている。通常は中小企業の方が経営が厳しく、賃金が低いのだが、この分は調査されていない。というわけで、すべての正社員の賃金が7000円台上がったわけではないのだ(給料をもらっている人には言うまでもないことだが)。

■中小や派遣はわずか
また、同じ賃上げでも、ボーナスが上がったのと月給のベアでは大きな違いがある。通常、ボーナスは「月給の○カ月分」という形で決まるので、月給がベアで上がると、ボーナスも上がることになる。だから、昔の労働組合は、ボーナスが増えてもベアが上がらないと、「賃上げができた」とは言わなかった。

今年の賃上げも、ベアではなくボーナスで「賃上げ」と言っているケースがある。最近はこの両者の違いがあいまいになっているようだが、知っておいて損はないポイントだ。

また、パート、派遣などの非正規労働者の賃金は、ごくわずかの企業しか上がっていない。これで消費が増え、「デフレ脱却」となるのかどうか。日本経済の正念場は近い。

(編集部)

※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。

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