ここ数日間の株式および外国為替市場は、ウクライナ情勢をめぐって神経質な動きになっている。
ソチ・オリンピックの閉会を待っていたかのように、ウクライナではヤヌコビッチ大統領が解任され、新政権が発足した。だが、これを認めない親ロシア系勢力はクリミアを拠点に抵抗、ロシアはこれを支援する名目で、事実上の軍事介入に踏み切った。
なぜ、ロシアは強硬な態度に出たのだろうか。日本への影響はどうだろうか。
■黒海権益をめぐる争い
ウクライナは人口の約2割をロシア系が占め、とくに東南部に多い。同国は、冷戦崩壊後に旧ソ連から独立したが、外交を「欧州より」にして北大西洋条約機構(NATO)などに加盟するか、旧ソ連時代のロシアとの関係を重視するかで、激しい政治闘争が行われてきた。欧州諸国もロシアも、ウクライナを自陣営に取り込もうと争ってきた。
昨年11月、ヤヌコビッチ大統領が欧州連合(EU)との政治・貿易協定の調印を延期して「ロシアより」の態度を鮮明にすると、これに反発する住民が抗議行動を起こした。大統領はこれに血なまぐさい弾圧を行ったため、ウクライナは騒乱状態となった。欧州諸国の「調停」もあったのだが、結局、冒頭に書いたように大統領は議会に解任されてロシアに亡命することになった。
ウクライナは、欧州とロシアの中間に位置し、黒海にも面している。黒海はロシアにとって重要な内海である。ロシアにとって大きな港、軍港は、首都のサンクトペテルブルク、極東のウラジオストク、さらに黒海である。黒海は、中東やアフリカ、地中海方面への重要な拠点で、ロシアの輸出入の約半分がここを経由している。このような地政学的、戦略的必要性から、ロシアはウクライナ、とくにクリミアが「欧州より」の勢力に支配されることを恐れたのである。
ちなみに、2008年のグルジア紛争(ロシアがグルジアに軍事介入した)の舞台の一つでもあるグルジア西端の「アブハジア自治共和国」(ロシアは独立国として承認している)も黒海に面している要衝である。そのすぐ北西にあるのは、オリンピックが行われたソチだ。
ウクライナは旧ソ連時代に核開発の中心地だったこともあり、各国がほしがるような、優秀な核研究家が多数いるともいわれている。
以上のような事情が、欧州とロシアによる「陣取り合戦」の場になっていることの背景で、ロシアが強硬な態度を取っていること理由といえそうだ。
■対応に苦慮する安倍首相
米国が制裁を含む対応策を検討し、欧州諸国もニュアンスは異なりながらも同調する動きの中、安倍政権の対応はなかなか微妙だ。
安倍政権は誕生以来、プーチン大統領と5回も首脳会談を行うなど、「蜜月」を演出してきた。同盟国でもないのに、外務・防衛担当大臣の会合(2+2)も行っている。中国、韓国の首脳と一度も首脳会談ができていないことと比べると、この熱心さは際立っている。その狙いは、首脳同士の関係強化で北方領土問題の解決に道筋をつけることと、中国に対するけん制である。
だが、ここで日本が「対ロシア制裁網」に加わらなければ、最大の同盟国である米国との関係が悪化する。かといって加われば、ロシアは態度を硬化させて領土問題の解決は遠のく(ロシアが北方領土を返還する意思があるとは思えないが)。安倍政権はこのジレンマをどう解決するだろうか。
もっとも、米欧はさほど強硬な措置は打ち出せないと予想する。その理由は、改めて記したい。
(編集部)
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