AIが働く時代、データ基盤はどう変わる?IPA津田氏が語る、「Open Data Spaces」が拓く企業の未来【CEATEC 2026】

  • 2026-10-13
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一般社団法人自動車・蓄電池トレーサビリティ推進センター(ABtC)は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との共催のもと、2026年10月13日、幕張メッセで開催中の「CEATEC 2026」において、「Agentic AIとデータ基盤の未来-Open Data Spacesが拓く、AIネイティブ経営のための技術戦略」セッションを開催した。基調講演には、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)Open Data Spaces 最高設計責任者の津田通隆氏が登壇。「Agentic AI時代の次世代アーキテクチャパラダイム:Open Data Spaces」をテーマに、AI時代の競争力を支えるデータとコンテキストの重要性、企業に求められるデータ基盤の変革を解説した。

■AI時代の競争力を生む「データとコンテキスト」
津田氏は冒頭、AI時代にはデータとコンテキストが企業にとって「唯一の競争力の根源」になると強調した。コンテキストとは、データが生まれた背景や、業務の中でどのような意味を持つかという「文脈」のことだ。

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講演ではまず、Frontier Labs(AI開発一般)はモデルの性能を決定する「スケーリング則」を追い続けており、そのボトルネックはデータとコンピュートであるとした。

AIモデルの進化を支える要素として、「Model Size(モデルの規模)」「「大規模な学習データセット」「半導体と電力」を挙げた。半導体や電力、データセンターへの注目が高まる一方で、学習に使えるデータをどう確保するかも重要な課題になっているという。

そのうえで津田氏は、すでに公開されているAIモデルも、企業の業務で成果を生み出し得る能力を備えているとの認識を示した。企業が向き合うべき課題として重視したのが、自社の現場でしか分からない情報や、その意味をAIにどう伝えるかという点だ。

一般的な知識を持つAIであっても、個々の企業の業務や判断の前提まで理解しているわけではない。人間の代理として判断・行動するAIエージェントを業務に組み込むには、現場固有のデータと文脈に加え、行動やデータ利用を適切に制御するルールも必要になる。

津田氏は、データマネジメントの関心が、基盤モデルを学習させるためのデータ整備から、AIエージェントを実際に動かすためのデータ整備へと移りつつあると説明した。

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■SaaSに求められる価値も「機能」から「成果」へ
データを利用する主体が人間からAIエージェントへと変わることは、ソフトウェアの構造やビジネスモデルにも影響する。
津田氏は従来のSaaSを、「GUI」「SoR(Systems of Record)」「ビジネスロジック」という3つの要素で整理した。人間が画面から情報を入力し、システムが扱える形に整えられたデータをもとに、決められた処理を実行する。こうした仕組みは、人間が状況を把握し、操作することを前提としてきた。

一方、AIエージェントは、テキストや画像などから状況を読み取り、必要な処理を呼び出して行動する。そのため、人間が画面を操作するための機能を提供するだけでなく、AIエージェントが利用できる形で業務上の成果につなげることが、サービス提供側に求められるという。

一定のサービス品質を約束して提供するという本質は変わらないものの、提供する内容や相手、方法が変化する。津田氏は、利用人数に応じた課金から、APIを通じて実行される処理単位などを軸とするビジネスモデルへの変化にも言及した。

また、すべての業務処理をAIの判断だけで実行する必要はない。決められた手順で確実に処理すべき部分は、既存システムの機能をAIがツールとして呼び出せばよい。こうした構造の中で、業務に不可欠なビジネスロジックや、企業固有のデータを持つことの価値が高まるとした。

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■同じ「高さ」でも意味は違う。データ集約で失われる文脈
企業固有の文脈をAIに伝えるには、データの管理方法も見直す必要がある。津田氏は、各部門のデータを中央のチームに集約する従来の方法について、処理の集中と文脈の喪失という課題を指摘した。

全社のデータ整備を中央のチームが引き受ければ、依頼が集中し、対応待ちが生じる。さらに、現場の業務を十分に理解しないままデータを変換・統合すると、数値や項目名は残っていても、その意味が抜け落ちるおそれがある。

その具体例として挙げたのが、航空分野における「高さ」だ。同じ「高さ」という項目でも、地面を基準とする高さなのか、海面を基準とする標高なのかによって意味は異なる。名前が同じだからと単純に結び付ければ、重大な誤りにつながりかねない。

こうした違いを理解しているのは、そのデータを日々の業務で扱う現場だ。AIにデータを渡す際にも、値や項目名だけでなく、何を表し、どのような前提で利用できるのかという情報を保つことが重要になる。

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■現場にデータの責任を戻す「データメッシュ」
そこで津田氏が紹介したのが、業務領域ごとにデータを管理し、文脈を保ちながら利用できるようにする「データメッシュ」の考え方だ。

データを中央に集めて管理する方法に対し、データメッシュでは、それぞれの業務領域、すなわちドメインがデータに対する責任を持つ。現場をよく知る人が、データの意味を説明し、他の部門やAIが利用できる形で提供することが基本となる。

津田氏は、データを集める過程で責任の所在が曖昧になる問題にも触れ、データとコンテキストを最もよく理解している現場に、オーナーシップを戻す重要性を説いた。

分散管理を進めるうえでは、各部門が使う技術やツールの違いも障壁となる。ただし同氏は、データ基盤技術の進展によって、各部門が自らデータを提供するための環境は整ってきたと説明した。技術の整備とともに、現場が責任を持ってデータを扱える組織づくりが問われている。

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■データ主権を保ち、必要な相手とつながる「Open Data Spaces」
こうした分散データマネジメントを支える技術コンセプトが、IPAの主導する「Open Data Spaces」だ。各組織が自らのデータを管理する主権を保ちながら、安全に連携し、新たなサービスや価値の創出につなげる基盤を目指している。

講演で上映されたコンセプト映像では、貴重なデータも、外部から遮断して蓄積するだけでは価値を生かせないことを提示した。同時に、データを集約する過程で文脈を失ったり、管理を他者に委ねて自らの主導権を手放したりすることへの問題意識も示された。

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「Open Data Spaces」で重視するのは、自社のデータを自ら管理し、信頼できる相手を選んでつながる仕組みだ。企業や部門の境界を越えてデータを活用する場合も、誰に、どのデータを渡すかを提供側が選択できることが重要になる。

津田氏は、AIが必要なデータを探せるようにすることと、データの提供に適切な制御を設けることの両立を課題に挙げた。AIにとっての使いやすさと、企業にとっての守りやすさを、同じ基盤の中で実現しようとしている。

また、「Open Data Spaces」はオープンソースで取り組みを進めており、日本と米国の企業が参加するコミュニティ活動も展開していると紹介した。個々の企業でのAI活用に加え、企業間のデータ連携を通じて、産業全体でAIを活用する姿を見据えている。

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講演を通じて津田氏が訴えたのは、データ基盤の変革を経営の問題として考える必要性だ。
データの意味や文脈に対して、現場がどのように責任を持つのか。人間とAIが協働する業務をどう設計し、部門間の壁をどう越えるのか。こうした課題に取り組むには、経営と現場の距離を縮めることが重要だとした。

今回の講演で印象的だったのは、AIの競争力を支えるものとして、日々の業務で蓄積してきた現場の知識が位置付けられていた点だ。データの意味を理解する人が責任を持ち、必要な相手やAIに適切な条件で届けられる体制をつくる。その取り組みが、企業の経験やノウハウを、Agentic AIによる事業の成果へと結び付ける出発点になるだろう。

■「Open Data Spaces」公式サイト

■CEATEC 2026 公式サイト
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