カスハラ対策を現場任せにしない!BIZTEL勉強会で見えた、従業員を守る組織づくり

  • 2026-10-7
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クラウド型コールセンターシステム「BIZTEL」を展開する株式会社リンクは、2026年10月1日、東京都内で「企業のカスタマーハラスメント対策勉強会 兼 ラウンドテーブル」を開催した。「なぜカスハラは起きるのか?する側・される側の心理から紐解く、現場と組織が取るべき対策とは」をテーマに、実態調査の結果を発表するとともに、専門家と企業の担当者が、判断基準づくりや従業員を守る仕組みについて議論した。

調査では、問い合わせ窓口業務の担当者の約2人に1人が、過去1年間にカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)に該当すると感じる行為を経験していた。一方で、対応マニュアルやフローが周知されているとの回答は2割台にとどまった。顧客の声を受け止めながら、働く人の安全と安心をどう確保するのか。会場では、心理面、テクノロジー、教育研修、組織運営の各側面から具体策が示された。

■約半数がカスハラを経験、対応ルールの周知は22.3%
2026年10月1日施行の改正労働施策総合推進法により、事業主にはカスハラ防止のための措置が義務付けられた。方針の明確化や相談体制の整備に加え、発生後の事実確認、被害を受けた従業員への配慮、再発防止など、組織としての対応が求められる。

リンクが発表した実態調査では、過去1年間にカスハラに該当すると感じる行為を経験したとの回答は47.0%。経験者に発生した接点を尋ねたところ、電話が61.5%で最も多く、対面が56.0%で続いた。電話で顧客と向き合う現場にとっても、カスハラ対策は身近な課題となっている。

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しかし、発生時の対処について、マニュアルや対応フローがあり、周知されているとの回答は22.3%だった。「ルールはあるが、現場の判断で対応せざるを得ない」が29.3%、「決まったルールはなく、その場の判断に任されている」が29.1%で、合計58.4%が現場の判断に頼る状況にあった。

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従業員への影響も大きい。経験者の55.6%が仕事への意欲低下、38.5%が出勤に対する不安・憂鬱感を挙げた。一方、対応後の上司や組織のフォロー体制に満足しているとの回答は29.6%にとどまった。

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株式会社リンク 取締役 BIZTEL事業部長の坂元 剛氏は、判断基準の統一から対応後のフォローまで、組織全体で取り組む必要性を指摘した。カスハラへの対応で時間や気力が奪われれば、従業員の意欲や定着だけでなく、本来の顧客対応や組織の生産性にも影響が及ぶ。現場の負担を経営課題として捉える視点が必要だ。

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株式会社リンク 取締役 BIZTEL事業部長の坂元 剛氏


<調査概要>
調査方法:インターネット調査
調査主体:株式会社リンク
調査期間:2026年8月14日(金)
調査対象:20~99歳 男女(性年代別均等割付)
調査対象地域:全国
回答数:560 (有効回答 547)
※ グラフ内の数値は小数点第二位を四捨五入し小数点第一位までを表記しており、単一回答の合計が100.0%にならない場合がある。

■カスハラはなぜ起きるのか、顧客の期待と企業の対応から考える
東洋大学 社会学部 社会心理学科 教授の桐生 正幸氏は、カスハラが生じる過程を、顧客の期待と実際の商品・サービスとのずれから説明した。

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東洋大学 社会学部 社会心理学科 教授の桐生 正幸氏


期待が満たされず、不満を抱いた顧客が苦情を伝える。そこに顧客側の特性と、企業側の対応や仕組みが相互に作用することで、言動がエスカレートする場合があるという。説明が伝わらない、手続きが煩雑といった要素を見直すことも、未然防止を考えるうえで重要になる。

今回の調査でも、経験者がカスハラに至った要因・背景として挙げた項目は、「企業のたらい回し・過度な待機時間」が47.1%で最多だった。「客は神様」という特権意識の36.2%、孤独感・承認欲求の33.1%を上回った。これは対応者が捉えた背景を尋ねた結果であり、顧客の不満を増幅させるような業務プロセスがないか、企業側が点検する手掛かりとなる。

同時に難しいのが、正当なクレームとの境界だ。大手航空会社のコールセンターに18年間従事し、スーパーバイザー(SV)も務めたブライシス株式会社 shouin事業部の佐藤 綾氏は、要求の内容が正当でも、同じ主張を長時間繰り返したり、強い口調で責め続けたりすることで、対応者が疲弊するケースを振り返った。

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ブライシス株式会社 shouin事業部の佐藤 綾氏


判断には、要求内容に加えて、言動の態様や継続時間、対応の経過も関わる。坂元氏は、提供する商品・サービスや状況を踏まえ、企業ごとに基準を整える必要性を説明した。担当者によって判断が大きく変わらないよう、具体的な事例を通じて認識をそろえていくことが課題となる。

■池田模範堂が実践する「30分」の目安と、対応を終える基準
「MUHI」ブランドを展開する株式会社池田模範堂からは、研究開発部 医薬情報グループ グループ長の高橋 亜貴子氏と、同グループ くすり情報チームリーダーの小幡 珠紀氏が登壇した。

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株式会社池田模範堂 研究開発部 医薬情報グループ グループ長の高橋 亜貴子氏(中央)、同グループ くすり情報チームリーダーの小幡 珠紀氏(右)


同社は、業界団体での事例共有やマニュアルづくりを踏まえて自社の対応を整備し、2025年11月にカスハラ対策宣言を公表。2026年8月には、法務部門と連携して全社向けのマニュアルを作成したという。

高橋氏が紹介したのは、顧客の話を丁寧に聞きながら、対応者を守るための判断基準だ。同社では、最初の1回の応対だけでカスハラと認定せず、同じ内容が繰り返されるか、担当者を交代しても状況が変わらないか、折り返し対応をしても同様の要求が続くかなどを見ている。

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株式会社池田模範堂 研究開発部 医薬情報グループ グループ長の高橋 亜貴子氏


時間については、まず30分を傾聴の目安としている。ただし、医薬品メーカーの窓口には症状などに関する相談も寄せられるため、必要な説明や相談であれば長くなることもある。30分という数字だけで一律に対応を終える運用ではなく、話の内容や繰り返しの状況と合わせて判断する。

こうした基準を設けたうえで、状況によっては電話対応を終了してよいことをマニュアルに明記した。電話を切る判断まで担当者の我慢や勇気に委ねていた状態から、組織として対応を支える仕組みへと整えた形だ。現場からは、どこまで対応し、どの段階で終了を判断できるかが明確になり、安心して応対できるようになったとの声があるという。

通話前に録音を案内する取り組みも行っている。同社の説明では、導入後、セクシュアルハラスメントを目的とする電話は体感としてほとんどなくなったという。録音の案内は抑止への期待に加え、会社が従業員を守る姿勢を伝える点でも意味を持つ。

小幡氏は、WebサイトのFAQを充実させ、簡単な問い合わせは顧客自身で解決しやすくしていることも紹介した。その分、じっくり相談したい人に時間を充てる。日々の振り返りやロールプレイングと合わせ、カスハラに発展しにくい応対にも力を入れている。

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株式会社池田模範堂 研究開発部 医薬情報グループ グループ長の高橋 亜貴子氏


■録音・AI・研修を組み合わせ、対応を個人に背負わせない
テクノロジーの面では、坂元氏が通話録音、音声認識、AIによるカスハラ判定、管理者によるモニタリングなどを紹介した。通話内容を記録して事実確認に役立てるほか、企業独自の観点をAIの判定に組み込み、判断基準の統一を支援する活用が考えられる。

管理者が通話を聞き、担当者だけに音声で助言する「ささやき」など、その場の対応を支える機能もある。ただし、調査で録音・AI検知などのシステムを導入し、カスハラ対策に活用できているとの回答は26.3%だった。導入した機能を、実際の対応手順や支援体制に結び付けることが求められる。

佐藤氏は、ルールを知っているだけでなく、実際の場面で使える状態まで準備することが重要だと説明した。対応を終えるタイミングや、その際に顧客へ伝える言葉を具体化し、研修やロールプレイングで練習しておく。クラウド型 教育管理システム「BIZTEL shouin」でも、カスハラタイプ別の対処法や対応中・対応後のセリフ例、メンタルケアなどを学べるコンテンツを用意している。

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ブライシス株式会社 shouin事業部の佐藤 綾氏


それでも強い言葉を受ければ、担当者は動揺する。佐藤氏が重視したのは、管理者が通話を聞いていることや、必要なときに助けることを本人に伝え、1人で抱えなくてよいと実感できる環境だ。

池田模範堂でも、難しい応対を管理者やSVがモニタリングし、状況に応じて助言する体制を整えている。月1回のお客さま相談検討会には社長や専務、品質・安全性に関わる責任者らが参加し、現場で起きた事例を共有する。日常の相談対応と経営判断をつなぐ仕組みが、対策を支えている。

桐生氏は、難しい案件をうまく処理できる人にも、気付かないうちにストレスが蓄積する可能性があると指摘した。頼れる担当者に案件が集中する状況にも目を配り、対応力のある従業員にも継続的なフォローが必要だとした。

質疑応答では、筆者が、専任担当者や十分な予算を確保しにくい中小企業は何から着手すべきかを質問した。桐生氏は、ガイドラインやマニュアルを整えて方針を公表すること、同じ業種・業態の企業が連携し、対応の基準や知見を共有することを挙げた。坂元氏も、企業規模にかかわらず、経営陣が現場の声や状況に向き合うことの重要性を強調した。

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東洋大学 社会学部 社会心理学科 教授の桐生 正幸氏


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今回の議論を通じて筆者が重要だと感じたのは、従業員を守るという方針を、日々の応対で実感できる形にすることだ。判断に迷ったときに相談でき、必要なときには管理者が支援し、対応後も負担を抱え込まずに済む。その土台に録音やAI、研修を組み合わせることで、顧客の声に向き合う余力も生まれる。カスハラ対策の実効性は、経営と現場が継続して連携できるかにかかっている。

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