「会社を継ぐ」という選択肢。トランビが提案する“継キャリ”という新しい働き方

  • 2025-10-22
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国内初のM&Aプラットフォーム「TRANBI」を運営する株式会社トランビは、早稲田大学大学院経営管理研究科(早稲田大学ビジネススクール)教授の入山章栄氏、法政大学キャリアデザイン学部教授であり、一般社団法人プロティアン・キャリア協会代表理事を務める田中研之輔氏らとともに、事業承継を通じた主体的なキャリア形成を後押しする「継キャリ(継業キャリア)推進プロジェクト」を発足した。プロジェクトの始動にあたり、2025年10月9日(木)に発足発表会が開催された。

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■「継キャリ推進プロジェクト」の発足背景と目標
中小企業では、深刻な後継者不足が社会問題として注目されている。国内には約27万社の中小企業があるが、そのうち52.1%が後継者不在であり、後継者難を理由とした倒産は2年連続で500件を超えている。技術、雇用、地域ブランドといった貴重な資源が、「継ぐ人がいない」という理由だけで失われつつある。

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さらに、2025年の休廃業・解散件数は年間7万件を超えるペースで推移しており、過去最多を更新する見込みとなっている。特筆すべきは、その多くが「黒字」や「資産超過」といった余力のある状態で廃業している点である。
一方で、現代のビジネスパーソンには、組織に依存せず、より主体的にキャリアを選択する姿勢が求められており、とくに管理職層においては、経営視点をいかに身につけ、キャリアに組み込むかが課題となっている。
こうした経済・組織・キャリアの課題に向き合うため、「継(けい)キャリ推進プロジェクト」は、「会社を買って引き継ぐ=継業」を通じて、経営視点の獲得や業務領域の拡大を促し、主体的なキャリア形成を実現する「継業キャリア」の概念を発信していくことを目指す。

■「個人でもM&Aに参加できる」仕組みを導入し成功へ
発足発表会では、株式会社トランビ 代表取締役CEOの高橋聡氏が登壇し、会社紹介およびプロジェクトの発足・概要について説明した。

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高橋氏は、創業期である2011年頃を振り返りながら、「当時のM&Aは『高額』『大企業向け』『ネガティブイメージ(乗っ取り・ハゲタカ)』が強かった。しかし、日本企業の大半は小規模事業者や個人事業主である。だからこそ、『個人でもM&Aに参加できる』仕組みをつくる必要があった」と語り、トランビ設立の背景と理念を明かした。

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現在、トランビは登録ユーザー数20万人を超え、累計掲載案件数は22,000件、成約件数は約2,000件に達している。そのうち約8割は「初めて経営に挑戦する人」であり、副業から経営へと踏み出すケースが多いことが特徴だ。また、平均取引額は約600万円、中央値は約180万円と、個人でも手が届く水準である点も強調された。

人気の業種としては、1位が「EC・通販系」、2位が「レンタルスペース」。そのほか「IT・ウェブサイト関連」「ホテル・旅館」「美容・エステサロン系」などが続いている。

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■就職、転職、起業に継ぐ第4のキャリアとしての継業
同社が行った20~50代のビジネスパーソンを対象としたアンケートでは、「新しいキャリアに挑戦したい」と選択した人が80%、「受け身ではなく、自らキャリアを選びたい」が60%、「事業承継に関心がある」が55%という結果になり、“自分の世界を生きるキャリア”を求める声が多いことがわかる。この結果を受けて、高橋氏は「我々はこの継業ということを、1つのキャリアの選択肢として、皆様にご提案していきたいと思っています。就職、転職、起業に継ぐ第4のキャリアとしての継業です」と述べた。

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また、継業のメリットについては「この継業キャリアという仕組みですが、主体的に自らがキャリア選択ができる非常に有効な手段です。まず、低リスクで高い再現性ということがあります。イメージしていただくと分かりやすいですが、自ら経営者になろうと、起業家になろうと思ったとき、ゼロから起業するというのは、非常に成功確率低いんですね。

実際に、ビジネスマンを辞めて起業しようとなったとき、それが本当に選択肢として取り得るかというと、なかなか難しい。一方で、事業承継をすることでで、すでに売り上げとお客様がついている、そういった、そういった“助走”がついている事業を買い、引き継げますから、非常にチャンスに溢れていると思います」と語った。

■「継キャリ推進プロジェクト」の取り組み、内容

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「継キャリ推進プロジェクト」は、M&Aや事業承継といった「継業」の経験者と初心者ユーザーをつなぐオンラインコミュニティを通じ、初めての継業への挑戦を後押しする取り組みである。日本初のM&Aプラットフォーム「TRANBI」を展開する株式会社トランビを中心に、入山章栄氏、田中研之輔氏らが参画し、以下の取り組みを通じて、新たなキャリア形成手段としての「継キャリ」を推進していく。

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1.イベント/コミュニティ運営を通じたビジネスパーソンへの啓発
Facebook グループを通じたコミュニティ形成、イベント開催を通じてビジネスパーソンへ継キャリの認知を拡大していく。

2.継キャリ挑戦へのナレッジ提供
noteなどを活用した継キャリに関するコラム発信、実際の成功・失敗事例に学ぶtipsなどナレッジシェアを行い、継キャリへのチャレンジを支援する。

3.副業として継業しやすくする制度開発
会社員や副業が制限されている場合でも無理なく「継キャリ」のキャリアに挑戦できるよう、「副業としての継業」を支援する制度設計などを開発する予定。

■継業キャリアの可能性を田中研之輔が語る
田中研之輔氏は、「継業キャリアの可能性 ―最先端のプロティアン・キャリア知見より―」と題した講演を行った。

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プロティアン・キャリアは、個人が主体的に自分の価値観に基づき、柔軟にキャリアをデザイン・変化させていくキャリア形成の考え方を指す。

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田中氏は、現在は「キャリア形成の転換期」に入っているとし、昭和的な「会社にキャリアを預ける」時代から、令和の「自律的キャリア形成」の時代へと移り変わりつつあると語った。AIの進展、55歳以降の早期退職者増などにより、社会全体で「個人と組織の関係性」を再定義する必要があるとも。社会課題の解決が、キャリア形成と直結する時代に入っているため、「継キャリ」が時代を担う可能性があると説いた。

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また、キャリアを「資本」として可視化できると主張し、キャリアは感覚的なものではなく、資産(資本)として管理・評価すべきであると強調した。その具体的な手法として、「キャリアBS(バランスシート)」の考え方を導入している。

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ビジネスキャリアにおいて何を蓄積しているかというと「ビジネス資本(スキル・知識・経験など)」と「社会関係資本(人脈・信頼関係・コミュニティ)」の2つだと説明した。

さらに、キャリア形成の4つのタイプも提唱し、「キャリアジャンプ型(転職・起業など)」「フルコミット型(完全専念)」「パラレル型(複数仕事を並行)」「スキマチャレンジ型(小さな副業・実験的活動)」の4つに分類を示した。

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ただ、日本型企業をやめてフルコミットするという意思決定ができる人もいるかもしれないが、それは難しい判断になるため、どちらかというとリスキリングの延長であり兼業型、副業型ということをイメージしつつ、みんなでより良い「継キャリ」を作ることを目指すと話した。

■継業キャリア成約者が語る継業のメリットや起業との違い
高橋氏と田中研之輔氏のほか、トランビで成約し継業キャリアを行っている、合同会社ろけファン 代表 華井玲奈氏、トリム NATURAL WINE IZAKAYA オーナー 田中友英氏が登壇し、パネルディスカッションが行われた。

「キャリアの転換を志した理由について」、華井氏は「マーケティングの業務委託で、当時は飲食業界のクライアント様を中心に担当していましたが、コロナ禍の直撃を受け、一時、マーケティングの業務委託案件がゼロになるタイミングがありました。

本業の経歴の中で、ウェブサイトの運営などさまざまな事業に携わってましたが、いかに新規事業として新しく事業を立ち上げて育てていけるか、そこを再現性もって取り組んでいけるか、それができる人間に非常に価値があると感じていました。

やはりそこを目指していきたい、再現性を持って事業を伸ばしていける、こう、事業家みたいな存在になりたいなっていったところが思いとしてはあった。で、じゃあ、もうこれをきっかけに新規事業として自分の事業に立ち向かおうじゃないかと思い継続キャリアを選択しました」と振り返った。

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「副業で継業するメリット」というテーマで、企業ではなく継業を選択した理由について、田中友英氏は「起業と継業の違いは、自分の家を『新築』で建てるのか、中古を買うのかの違いなのかと思っていて、新築だと割と、自分が理想とするような家をお金かと時間をかけて作れる一方で、使い勝手がいいのか、駅から歩いてどうなのか、といういろんな問題が出来上がりを見て出てきて、リスクもある。一方で、継業はもうすでにあるものなので、物を見られる、ただ自分が好き勝手にじれる範囲も限られてるという中で、どちらを選ぶか、みたいなのも、家と似てるんじゃないかと思っています。

そのため、自分が事業をやるとなると、起業か継業かというのは、やる業態だったり、自分の得意領域だったり、やりたいことに結構よって違ってくると思います。

今回、私は飲食店で継業しましたが、飲食店って割と初期投資が重たくて、自分自身、別に飲食店をずっとやっていたわけでもなく、飲食で成功したわけでもない中で言うと、ある程度、トラックレコードが見えていて、再現可能性だけをきちんと検証できれば、なんとなくうまくいくという、腹落ち感はあるなというところはあったので、そこが今回継業した理由の一つです」と述べた。

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中小企業の後継者不足が深刻化する一方で、キャリア観は転換期を迎えている。トランビが打ち出す“継キャリ”は、既存事業を引き継ぎ、経営に挑むという新たなキャリアの選択肢だ。黒字廃業が相次ぐ現状に対し、継業は社会資源を守りつつ、個人に経営視点をもたらす手段として注目される。就職、転職、起業に続く第4の道として——「継いでキャリアを築く」、その時代が始まりつつある。

テクニカルライター 後藤 響平


事業承継・M&Aプラットフォーム「TRANBI(トランビ)」

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