- 2014-12-25
- ITビジネス
- 3国業務提携発表, アジアITベルト地帯, エボラブルアジア, サイバーミッションズ, もっとオフショア開発, 株式会社BJIT
- アジアIT開発ベルト地帯でオフショア開発10倍へ!エボラブルアジアが「もっとオフショア開発宣言」 はコメントを受け付けていません
「Vietnam Worksが全面協力! Evolable Asia Town 構想が明らかに」という記事で日本国内の開発エンジニア不足、給料の高止まり、といった需給バランスの崩れから来ている問題を解決するため、株式会社エボラブルアジアは、業界最大手のベトナムオフショア開発会社として「Evolable Asia Town構想」を発表。現在約500名のエンジニアの雇用を、3年後に5000名、5年後に1万名へ拡張する計画だ。この動きをさらに広げる新しい動きがあった。
同社はオフショア開発の市場が中国から東南アジア、南アジアにシフトしている動きを受け、バングラデシュのオフショア開発企業である株式会社BJITと、ミャンマーのオフショア開発企業である株式会社サイバーミッションズとの業務提携を明らかにした。
エボラブルアジアが中心となり「もっとオフショア開発宣言」と銘打たれた発表会が開催されたのでその内容を紹介しよう。
発表会には、エボラブルアジアの日本法人代表である吉村英毅氏、BJIT代表取締役社長である佐藤一雅氏、サイバーミッションズ代表取締役社長の有馬治彦氏が登場し、3社共同で、今後の“アジアIT開発ベルト地帯”を盛り上げることを高らかに宣言した。
■日本のオフショア開発市場10倍規模を目指す
発表会は、エボラブルアジア日本法人代表の吉村英毅氏による事業説明から始まった。日本での開発リソース需給の現状としては、システム開発者の需要は非常に旺盛であるが、大手も含め、特に中堅中小企業は必要とする日本人エンジニアを自前では確保できてない状況が相変わらず続いているという。
「日本人の開発エンジニアが自前で用意できないのであれば、海外のリソースを求めるしかない」ということで、エンジニア不足への解決策として、オフショア開発が注目され、利用されてきた。日本からのオフショア委託先としては、これまで長年、中国がメインであったが、オフショア開発企業が乱立したため仕事のクオリティが低かったり、発注が集まったことで人件費が異常な高騰をしたり、といったことにより中国でのオフショア開発委託を避け、新天地を求める企業が増加してきている。
その結果、親日度が非常に高く、日本人以上に勤勉で優秀な人材が確保できるベトナムに注目が集まり、エボラブルアジアを筆頭にオフショア開発の波がベトナムに押し寄せることとなった。この波の勢いは衰えることなく広がっており、いまではベトナム全土を巻き込みバングラデシュ、ミャンマーなどを含む地域が“アジアIT開発ベルト地帯”へと変貌を遂げつつある。
現在、日本における開発市場10兆円のうち、オフショア開発はわずか1%の1000億円規模であり、そのうちの800億円が中国・インド、残りの200億円がアジアITベルト地帯へ配分されている。
例えば日本におけるオフショア開発比率は1%、日本以上に成熟したオフショア開発市場を持つ欧米となると全体の約10%を占めていることから、日本でも現在の10倍程度までは、オフショア開発が成長する伸びしろがあると見込めば、1兆円市場へと成長できることになる。
吉村氏いわく、開発ニーズが十分にあり、リソースが圧倒的に不足している日本のオフショア開発の委託先の、今後の受け皿となるものがアジアIT開発ベルト地帯であるという。
そうであるならば、アジアIT開発ベルト地帯の主要3か国であるベトナム、バングラデシュ、ミャンマーの主要オフショア開発会社が業務提携を行うことは当然の流れとなる。提携を行うことで営業面、リソース面の協力が可能となり、さらに日本企業がオフショア開発を行える範囲が広がり、なおかつ日本企業がオフショア開発を導入するハードルを下げる。これにより、日本のオフショア開発市場の占有率1%から10倍の10%、1000億円から1兆円への成長を目指す。
まずはエボラブルアジア、BJIT、サイバーミッションズの3社で「クラウドを活用したクロスボーダー開発」、「アジアITベルト地帯3国と日本の相互人員交流制度」、「エンジニア育成のためのプログラムの実施」といった施策が「オフショア開発10倍化計画」の全貌となる。
■バングラデシュ最大のIT企業を目指す
引き続き、株式会社BJIT代表取締役社長の佐藤一雅氏により、同社の会社内容の説明、および今回の業務提携についての話しがあった。
BJITは2001年にバングラデシュの首都ダッカで設立されて以来13年間、同国におけるグローバルIT企業として経験を積み重ねてきた。現在、グループ全体で約220名のエンジニアたちが勤務している。バングラデシュは、インドとミャンマーに挟まれた場所に位置する国で、民族文化的にも理系的能力の点でもインドに近い。すなわちプログラミングで優秀な人材が多いということだ。
バングラデシュの人口はアジア4位。中国、インドを除けば、インドネシアに次いで2位であり、特に20歳以下の若年人口を比べると、50%以上ということで、インドネシアを凌ぎ、これから成長が期待できる国でもある。
バングラデシュ政府は、「デジタルバングラデシュ」という戦略を掲げ、ITを国策として優先的に推進している。具体的にはハイテクパークとソフトウェアテクノロジーパークを国内複数都市に設立しているほか、法人税が5年から最大7年まで無償、利益の100%を本国送金、コンピュータ、ハードウェアなどの資本資材関税ゼロ、駐在員の所得税3年間無償といった魅力的なインセンティブ政策がある。こうした優遇政策によりバングラデシュでのIT産業における輸出額は、飛躍的に増加しているという。
同国の独立の際に日本が資金援助したこともあり、同国国旗のデザインベースは日の丸、いちばん好きな国のアンケートでは、日本が過半数を取り堂々の第1位となるほどの親日国だ。最近では、日本国政府が5年間で最大約6000億円の経済協力を約束しており、そのうちの10~15%はIT産業に投資されるのではないかと言われている。
欧米においても同国は、ゴールドマンサックスの“NEXT11”、J.P.モルガンの“Frontier Five”に選出されるなど、注目されている国のひとつである。こうしたこともあり世界のIT業界からバングラデシュへ進出する企業が増加、世界的にも有名なテクノロジー人材を輩出する国へと変貌を遂げつつある。
そのバングラデシュの企業であるBJITは2020年までにバングラデシュ最大のIT企業を目指す。
■ミャンマーにおけるラボ型契約の受注拡大を目指す
株式会社サイバーミッションズ代表取締役社長有馬治彦氏より、同社の概要と今回の業務提携の意義についての説明があった。同社は設立12期目で横浜・ヤンゴンを拠点にしており、特に金融・製造・公共分野のソフトウェア開発に強い。
ミャンマーでは、「ミャンマーDCR」、「大和総研」に次いで3番目に設立された日系のIT企業で日本経済新聞・日経コンピュータなど、数々のメディアで紹介されている。現在「日立」、「三菱」、「パナソニック」、「電通」といった大手企業のオフショア開発を担っている。現地では入社前の研修で、3~6か月、プログラミング言語(Java、C#)、および日本語(N4)教育を行い、入社後も研修を続けることで、社員のスキルアップを図っている。さらに日本に来る機会も多く与えることでコミュニケーション能力の向上を図っている。
同社はこれまで請負契約中心で事業をスタートし、ミャンマー向け案件も請負契約が中心だった。これからはラボ型開発の受注契約を増やすことを目標にしていた。そういった事情から、ラボ型契約のスペシャリストであるエボラブルアジアと提携するのは当然の成り行きと言えるわけだ。
来年5月13日(水)~15日(金)には、東京ビッグサイトにて、「ソフトウェア開発環境展2015 ミャンマーパビリオン」を主宰する予定である。
以上、「もっとオフショア開発宣言」発表会の内容を紹介してきた。今回提携を結んだ3社は、それぞれが、それぞれの持つ特徴を必要としており、この提携がアジアITベルト地帯をさらに活性化させる起爆剤となることは間違いないだろう。親日国の優秀な人材によるオフショア開発は、「大好きな日本向けの仕事」となるわけで、当然普段以上の力も入ることにより、より高品質な仕上がりにつながる効果も期待できる。今回の提携が実を結べば、アジアIT開発ベルト地帯のオフショア開発市場は1兆円どころではなく2兆円、3兆円へと成長するかもしれない。