日本、米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダによる主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)が6月4日、ベルギーのブリュッセルで行われた。
ウクライナ問題を契機に、ロシアを含む「G8」が崩壊、従来の「先進国クラブ」が復活した。今回のサミットの特徴は何だろうか。
■昔のG7ではない
もともと、先進国の会合はG5(日本、米国、英国、西ドイツ、フランス)として行われていたが、1970年代初頭の石油ショックを機に、イタリアが加わる形でサミット(首脳会合)として定期的に開かれるようになった。その後、カナダが参加した。当初、主要議題は世界経済に先進国が協調して対応することだったが、1970年代末からの冷戦の激化と米レーガン政権の「対ソ強硬論」の台頭で、徐々に「政治サミット」としての色彩が強まった。
1990年代初頭にソ連が崩壊すると、核保有国であるロシアを大国として遇する意味合いもあり、1998年からは「G8」となった。だが、ウクライナ問題を契機にした対ロシア制裁措置の一環として、ロシアが排除されることになったわけだ。また、2008年のリーマン・ショックを契機に、中国、インド、ブラジル、サウジアラビアなどを加えた「G20」が開かれるようになった。
「G8」や「G20」が行われるようになってからも、G7は続いてきた。だが、その比重は徐々に低まっていた。どちらかというと、G20の前に先進国だけで「示し合わせをする」ためという色彩が強まり、存在感は低下していたといえるだろう。
■強気の首脳宣言のようだが…
さて、今回のG7では、ウクライナ問題でのロシア非難と追加制裁の可能性への言及、中国を念頭においた東・南シナ海での緊張への「懸念」、北朝鮮の核・ミサイル開発を非難、イランにも核問題解決の要求といった内容の外交問題に関する「首脳宣言」が採択された。
むろん、世界経済についても議論されるので、これだけで評価するのは禁物だが、再び「政治サミット」化したような印象を与える。「昔はソ連、今は中ロ北」といったところか。
逆に言えば、世界が先進国の「思い通りにならない状況」になっているということだ。世界の総生産(GDP)に占める先進諸国の割合は、サミットが始まった当時は8割近かったが、現在では6割程度にすぎない。購買力平価ベースでは、中国のGDPが米国を抜いて世界一になったという推計もある。先進諸国が集まってアピールしても、その影響力は以前に比べてずっと小さくなっているということだ。
ロシアや中国の行為がよいこととは思わない。だが、相手構わず「非難」を繰り返すのは、あまり得策とも思えない。老人が杖を振り上げても、若者は大して恐ろしいとは思わないものだ。G7に求められているのは、「老獪(ろうかい)な政治」ではないだろうか。
(編集部)
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