ウクライナ情勢がさらに緊迫してきた。
米国はロシアの一部高官や軍人に対するビザ停止などの制裁措置を発動、欧州連合(EU)はそれよりもやや軽いが、制裁に向かって動き出した。北大西洋条約以降(NATO)はロシア周辺国に対して航空機などを増派し、「万が一」に備えている。一方、ロシアも制裁への「報復」を明言した。
当面の焦点は、クリミア自治共和国の住民投票だ。
ところで、先行きを見る上で忘れてはないのは、「あの国」の動向である。
■戦争はあり得るか?
ロシアは現在のウクライナ政府を「正当」なものとは認めていない。米国などの制裁に臆する構えもなく、クリミアの自国への併合を強行するようだ。せいぜい妥協しても、「ウクライナからの分離とロシアの傀儡(かいらい)国化」だろう。
あるいは、2月にEUが提案したように、「全勢力による挙国一致内閣」をウクライナに樹立することだが、これは現在のウクライナ政府が受け入れないだろう。仮に成立しても、数カ月で崩壊して内戦状態に陥ることは必至だ。
こうなると、米国は厳しい。ロシアが妥協しない限り、戦争に訴えるしか方法がないからだ。だが、米国はようやくアフガニスタン駐留軍を撤退させようとしているところで、他国に軍隊を振り向ける余裕はない。それゆえに、昨年のシリア危機の際に武力行使を断念し、ロシアの「解決案」に乗ったのである。
しかも、今回の「敵」は核大国のロシアである。相当な犠牲(人的、経済的、財政的)を覚悟しない限り、戦争には踏み切れそうにない。
■中国はどう動くか
ところで、今回の事態をほくそえんでいるのが中国である。
昨年の中国による防空識別圏の設定が、米国がシリア問題、イラン問題で立て続けに妥協した直後であったことを想起してほしい。米国がロシアに対して妥協すれば、「これ幸い」と、尖閣諸島周辺や南シナ海で攻勢に転じる可能性がある。米国にとって、まさに「悪夢のシナリオ」だろう。
ただ、中国は現在のところ、米国とロシア、どちらを支持するとも言っていない。制裁措置には反対しているので「ロシア寄り」のように見えるが、そう単純ではない。中国はチベットやウイグルなど少数民族の独立運動を抱えているため、クリミアの「独立」を支持すれば、これらの勢力が勢いづいてしまう可能性がある。そのため、「ロシア支持」とは言えないのだ。
また、中国はウクライナとの経済関係が深く、大量の兵器を購入している。クリミア半島のインフラ整備や食料調達をめぐって前政権と交渉してきた経過もある。現政権が中国のこの権益を認めるなら、さっさと「現政権支持」と言いかねない事情があるのだ。
ウクライナ問題は、思わぬ形でアジアにも影響しそうなのである。
(編集部)
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