トップ人材の「暗黙知」を経営資産へ!ADTANKがAIエンジン「デジブレ」を本格提供

  • 2026-8-7
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ADTANK株式会社は2026年7月31日、企業のトップパフォーマーが持つ暗黙知を抽出・構造化し、組織全体で活用できるようにするAIエンジン「デジブレ」のメディア向け説明会を開催した。人材の流動化や熟練人材の退職が進むなか、優れた人材が経験を通じて身につけた判断基準や思考プロセスを、いかに組織へ残すかが経営課題となっている。説明会では、「デジブレ」の開発背景や独自性に加え、マーケティングや採用に関する活用例が紹介された。

■退職や異動によって失われる「暗黙知」
説明会では初めに、ADTANK株式会社 代表取締役CEOの菅野健一氏が、同社の事業構想と「デジブレ」の開発に至った経緯を説明した。

企業の現場には、マニュアルや手順書として残せる情報だけでなく、熟練人材やトップパフォーマーの頭の中にしか存在しない知見がある。「この顧客にはどこまで踏み込むべきか」「数字のどこに違和感を覚えるか」「どのタイミングで提案内容を変えるか」といった判断は、本人も意識せずに行っている場合が多い。

こうした言語化されにくい思考プロセスや判断基準が暗黙知だ。優れた人材が退職・異動すれば、その人が長年かけて蓄積した暗黙知も、組織から失われる可能性がある。

また、トップパフォーマーが直接指導できる人数や時間には限界がある。同じ会社に所属していても、部署や地域、役職によって、優れた人材から学べる機会には差が生じる。こうした限られた接点を一部の社員だけの経験で終わらせず、組織全体で共有・活用できる知識へ変えることが「デジブレ」開発の狙いだ。

菅野氏は、優れた経営者やエース社員が持つ思考プロセスや判断基準を抽出して残すことは、企業だけでなく、社会全体にとっても価値があるとの考えを示した。

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ADTANK株式会社 代表取締役CEOの菅野健一氏


■暗黙知を抽出し、AIが実行できる形へ変換
続いて、crack株式会社 代表取締役で「デジブレ」の開発を担当する大野陣氏がオンラインで登壇し、暗黙知をAIへ実装する考え方を解説した。

大野氏によると、暗黙知を抽出する研究は、認知的タスク分析、自然主義的意思決定、インタビュー、エスノグラフィー、知識工学、SECIモデルなど、少なくとも6つの学問分野にまたがり、30年以上にわたって蓄積されてきたという。

しかし、従来の研究は、抽出した暗黙知を人間が読んで理解するところまでが中心であり、それをAIが実行できる形へ翻訳する方法は十分に体系化されていなかった。「デジブレ」は、「人間から暗黙知を引き出す技術」と「AIを動かす技術」の間にある空白を埋めることを目指している。

人間であれば、「このような傾向がある」「この話題は避けるべきだ」といった表現でも意味を理解できる。しかし、AIを安定して動かすには、「どのような条件で何を実行するのか」「何をしてはいけないのか」といった判断条件や行動を具体的に定義する必要がある。

「デジブレ」は、トップパフォーマーへの独自のインタビューなどを通じて、本人も明確に意識していない判断の勘所を抽出する。さらに、抽出した暗黙知をAIが実行できる形式へ変換し、提案や分析として出力する仕組みだ。ADTANKは、この暗黙知の抽出・構造化技術について特許を出願している。

大野氏は、質問をする前に、相手が答えやすくなる言葉を添える行為を例に挙げた。熟練した記者が無意識に使う前置きも、「なぜその言葉を添えたのか」「その言葉がなければ相手はどう感じるのか」と掘り下げることで、対話を円滑にする暗黙知として抽出できるという。

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crack株式会社 代表取締役/デジブレ開発担当の大野陣氏


■マーケティングと採用の「次の一手」を提案
「デジブレ」の特徴について、ADTANKは「料理のレシピではなく、料理そのものを出力する」と表現する。利用者が学ぶための素材を提示するだけでなく、現場でそのまま活用できる提案書や分析レポートを生成するという意味だ。

発表時点では、マーケティング、採用、人事、ブランディング、経営コンサルティング、クリエイティブなど、各領域のトップパフォーマーが持つ暗黙知を実装しているという。企業独自の知見を組み込んだ専用AIエンジンの構築にも対応する。

提供サービスの一つである「デジブレ for Marketing」は、Webサイト、広告、SEO、コンテンツ、営業導線などを横断的に分析し、売上につながる課題と、次に実行すべき施策を提示するものだ。公開情報や競合情報などを読み込み、施策に優先順位を付けた提案書として出力する。

「デジブレ for HR」は、採用サイト、企業サイト、口コミ、SNS、第三者による言及などを分析し、求職者から見た企業像と、企業が伝えたい姿とのズレを可視化する。採用コンセプトや求人媒体、採用広報、面接時の表現など、求職者との具体的な接点の改善まで支援する。

説明会では、老舗企業を想定した採用戦略レポートの例も紹介された。歴史や財務基盤といった企業の強みが求職者に十分伝わっていない状況を分析し、工場の仕事を単なる条件比較から切り離して、新たな価値として訴求する方策を提示する内容だった。さらに、同レポートを基に生成した動画も披露された。

ADTANK株式会社 取締役CROで「デジブレ」共同開発者の髙森塁氏によると、テキストベースの資料は読み進めにくいうえ、企業の課題など耳の痛い内容は、受け手に敬遠される場合もある。また、既存のAIでテキスト中心の分析を動画化しても、意図した内容や表現とは異なる、いわゆる「これじゃない感」が生じることがあるという。

「デジブレ」を活用すれば、トップパフォーマーの構造化された思考や知見を基に、分析レポートを誰もが理解しやすい動画資料へ変換できる。テキストを単に映像へ置き換えるのではなく、内容の見せ方や訴求する角度まで考慮した動画を生成できる点が特徴だ。

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ADTANK株式会社 取締役CRO/デジブレ共同開発者の髙森塁氏


■暗黙知の再現性とAIの信頼性が今後の焦点
質疑応答では、暗黙知をどこまで正確に抽出できるのかという質問も出た。
暗黙知の総量自体が見えないため、「全体の何%を抽出できたか」を定量的に測ることは難しいという。現時点では、抽出元となったトップパフォーマー本人に出力内容を確認してもらい、その人物の判断や考え方が反映されているかを検証する方法を採っている。

また、生成AIが事実とは異なる情報を出力するハルシネーションについても議論された。「デジブレ」でもハルシネーションを完全に排除できるわけではなく、複数の確認工程と人間によるチェックを組み合わせる考えだ。外部へ公表するレポートと、社内で傾向を把握するための資料では、必要となるファクトチェックの水準や提供方法を分けることも検討している。

「デジブレ」では、暗黙知だけでなく、会議の議事録や社内文書などの形式知も組み合わせる。暗黙知と形式知の双方を活用し、企業ごとの判断基準や実務に即した出力へつなげる方針だ。

ADTANKは今後、「デジブレ for Marketing」と「デジブレ for HR」の提供を拡大するとともに、企業の創業者やトップ営業担当者などの思考を組み込んだ専用AIエンジンの構築を進める。同社によると、企業向けカスタマイズについても、複数の商談や実証が進んでいるという。

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生成AIが広く普及すれば、一般的な知識へアクセスできること自体は、企業の差別化要因になりにくくなる。そのとき競争力を左右するのは、組織が独自に蓄積してきた経験や判断基準を、どれだけ有効に活用できるかだ。

「デジブレ」の興味深さは、優れた人材の知識を保存するだけでなく、その人物ならどのように考え、何を提案するのかを、実務で活用できる形にしようとしている点にある。一方、抽出した暗黙知の再現性や情報の正確性、本人の退職後に知見を利用する際の権利管理など、今後整理すべき課題もある。

就業者の約7人に1人が65歳以上となり、企業が知識の大規模な流出に直面するなか、人の頭の中にある見えない価値を残す仕組みの重要性は高まっている。「デジブレ」が暗黙知を企業の持続的な経営資産へ変えられるのか。その真価は、導入企業における成果と検証の積み重ねによって明らかになりそうだ。

ADTANK株式会社

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