個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第二十六回


■はじめに
前回、前々回とパッケージドキュメントについて、大まかな仕様と構成を見てきました。今回も少し関連したお話しをしておきたいと思います。今回はEPUB3の「コアメディアタイプ」について紹介します。

■コアメディアタイプとは
コアメディアタイプとは、EPUB3仕様で標準的に利用できるファイル形式のことです。EPUB3仕様では、どんな種類のファイルが使えるかきちんと決められているわけです。

ファイル形式 MIMEタイプ
画像
GIF形式 image/gif
JPEG形式 image/jpeg
PNG形式 image/png
SVG形式 image/svg+xml
アプリケーション
XHTML形式 application/xhtml+xml
NCX形式(EPUB2用ナビゲーションドキュメント) application/x-dtbncx+xml
OpenTypeフォント形式 application/vnd.ms-opentype
WOFFフォント形式 application/font-woff
EPUBメディアオーバーレイ文書(SMIL形式) application/smil+xml
読み上げ発音辞書形式 application/pls+xml
オーディオ
MP3形式 audio/mpeg
MP4コンテナを利用したAAC LC形式 audio/mp4
テキスト
EPUBスタイルシート形式 text/css
JavaScript形式 text/javascript

これらに加えて、EPUB3仕様ではビデオデータにも言及されています。

EPUB3仕様ではビデオデータはコアメディアタイプとしては規定されていません。コーデック(圧縮・展開方式)について、H.264かVP8コーデックの少なくとも1つをサポートすることを、リーディングシステムに対して推奨しています。

オーディオやビデオのファイルは、コーデックとコンテナ形式を考える必要があります。コンテナ形式とは、ファイル形式と考えて差し支えありません。

例えば、同じH.264方式で圧縮されたビデオデータでも、AVIコンテナに格納された場合にはファイル形式はAVIになり、QuickTimeコンテナに格納された場合にはMOV形式やM4V形式になります。

H.264方式のビデオ用のコンテナ形式で最も汎用的なのはMP4形式で、VP8方式のもっとも一般的なコンテナ形式はWebM形式です。

先の表と同様の形でまとめると次のようになります。

ファイル形式 MIMEタイプ
ビデオ
MP4ビデオ形式 video/mp4
WebMビデオ形式 video/webm

さて、ビデオデータは置いておくとして、コアメディアタイプに含まれるデータはEPUB3仕様では標準的に使用可能なデータとなっていますが、実際には必ずしもそうではありません。

販売用に制作するのであれば、そのストアサービスの制限や指定がある場合があります。また、汎用のEPUBであっても、推奨環境として特定のリーダーアプリ示しておくのが一般的です。その場合、推奨アプリの制限や仕様によって使えないファイル形式がある場合があります。

EPUBを制作する場合には、ストアやリーダーアプリの仕様も確認しておく必要があります。

■パッケージドキュメント内でのMIMEタイプの指定
先の表にはMIMEタイプの欄があります。ツールを使ってEPUBファイルを作成する場合、MIMEタイプはほとんど意識することはありません。

ですが、様々なケースでパッケージドキュメントを編集する機会が増えてくると、MIMEタイプを意識するケースも増えていきます。

例えば、EPUBで写真集を制作していて、後から写真を増やしたり、ビデオも入れることにしたりするなどというケースでは追加したファイルをパッケージドキュメントのmanifest要素に追加することになります。

manifest要素については前回簡単に紹介しました。item要素内では、EPUBで使用しているファイルをitem要素で定義します。

item要素の書式は次の通りです。

〈item href=”ファイルのパス” id=”ファイルを表すID ” media-type=”MIMEタイプ“/〉

item要素のmedia-type属性でそのファイルのMIMEタイプを指定することになります。

データを追加する度にツールやアプリに追加して、EPUBファイルを作成しなおす、という形でももちろん構いません。しかし、一度作成したEPUBにデータを追加するのであれば、そのEPUBを解凍し、パッケージドキュメントを直接編集して再度EPUB化する方が効率的である場合もあります。

ということで、少しEPUB制作に慣れてくると、MIMEタイプの一覧表が便利になってきます。

今回掲載したものが役に立つことがあると幸いです。

■最後に
次回は個人的な都合によりお休みさせていただきます。その代り…でもありませんが、5/30に飯田橋で下記JEPAさんのセミナーに登壇させていただきます。

電子書籍「もうひとつの“イプシロン・ザ・ロケット”」企画・制作・リリースまでの一部始終~ソニー・ミュージックコミュニケーションズ初の電子出版の軌跡~

今回の例で挙げたパターンを経験して作成した電子写真集の事例紹介です。

制作が進むにしたがって、写真の点数が増えビデオも追加されていきました。もちろんパッケージドキュメントを直接編集して再EPUB化したりもしました。

実際の制作工程の紹介もしますので、ご興味があればぜひお越しください。

■著者プロフィール
林 拓也(はやし たくや)
テクニカルライター/トレーニングインストラクター/オーサリングエンジニア
Twitter:@HapHands
Facebook:https://www.facebook.com/takuya.hayashi

ITライフハック
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iBooks Authorレッスンノート
林 拓也
ラトルズ
2013-07-19


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