- 2015-3-20
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- 個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第四十五回 はコメントを受け付けていません
■はじめに
去る2015年3月11日にJEPA(日本電子出版協会)主催のセミナー「デジタル教科書の国際標準「EDUPUB」 第5回」が開催され、私も参加させていただきました。
電子教科書や電子教材は、本ブログのメインテーマである個人出版とは少し距離のあるトピックですが、個人的に興味がある分野なので今までもたまにネタとして取り上げてきました。
これまでも何度かEDUPUB関連のセミナーに参加したことはあったのですが、正直なところ前提となる知識が不足していて、受講してもあまりピンとくることがありませんでした。
今回のセミナーでは具体的に技術的な部分に触れたセッションもあり、今までよりもEDUPUBの輪郭が少し明瞭に見えてきました。
■EDUPUBの技術的な面について
『デジタル教科書の国際標準「EDUPUB」 第5回』の様子と資料はJEPAによって公開されています。
EDUPUBは電子書籍のフォーマットとして世界で最も普及したEPUB仕様を、教育分野で利用・応用しやすくするために拡張するための取り組みのことです。
拡張される機能には様々なものがあり、既存の他の仕様を参照するものもあります。
「既存の他の仕様を参照する」というのは、EPUB仕様でも行われています。EPUBの場合はコンテンツ部分にはHTML(XHTML)やCSS仕様を利用し、パッケージ化にはZIP仕様を利用しています。
これにより、一から仕様を構築するよりも迅速に進めることができるというメリットがあります。
この辺りの技術仕様については、JEPAのリンクの高瀬拓史氏の資料が端的にまとまっていて分かりやすいと思います。
ちなみに高瀬氏は、本ブログでも何度か扱ってきたEPUB3ファイル生成サービス「でんでんコンバーター」の開発を手掛けておられます。
さて、EDUPUBでの拡張では個人的に以下のものが目を引きました。
・印刷版がある場合にはページ番号を含める
リフロータイプの電子書籍では閲覧環境によって1画面(=仮想的なページ)に表示される分量が異なるので、絶対的なページ数が存在しません。
ですが、教科書では先生が生徒に開く位置をページ番号で指示する、というのが一般的です。
EPUB仕様にも印刷版のページ番号をリフロータイプのコンテンツに指定することはできますが、EDUPUBではもっと厳密に指定するようになるようです。
これにより、電子教科書でも開くページを指定するような使い方ができるようになるでしょう。
先進的な機能やリッチな表現が可能になるのも重要ですが、こういった部分のサポートも電子教科書の普及には大きなポイントになりそうです。
・LMS(学習管理システム)との連携
もしかしたら勘違いがあるかもしれませんが、QTI(テストと採点に関する仕様)やCaliper Analytics(学習状況の収集と分析に関する仕様)あたりは、LMSとの連携に関わるものと理解しています。
LMSの仕様として広く使われているSCORMとの連携がスムーズに行えるようになれば、既存の多くのE-ラーニングシステムに組み込めるようになるのではないかと期待しています。
・Open Annotation in EPUB
Open Annotationは注釈の共有のことです。
W3Cによって仕様化が進んでいる「Open Annotation Data Model」をEPUBで利用するための仕様という感じでしょうか。
ある人が電子教科書につけた注釈を別の人が見られる、というものでニコニコ動画をイメージすると分かりやすいと思います。
うまく利用できれば深みのある学習に繋げられそうです。
・EPUB Scriptable Components
これはいわゆる「ウィジェット」と呼ばれるものです。
HTMLファイルとJavaScriptで構成されるインタラクティブオブジェクトとでも言えるものです。
詳細な仕様はまだ把握していませんが、Appleの電子書籍作成アプリ「iBooks Author」にもウィジェットと呼ばれるインタラクティブオブジェクトが用意されています。
iBooks Authorでは、あらかじめ用意されているウィジェットの他に、自分で制作したオリジナルのものも利用できます。
EDUPUBのScriptable Componentsもこれに近いイメージのものかと理解しています。
EPUB仕様ではJavaScriptの使用は許容されていたものの積極的ではありませんでした。EDUPUBでは必要性が段違いとなるので積極的に利用する前提となるようです。
ざっといくつか挙げてみましたが、これら以外にもさまざまな拡張仕様やルールがあり、相当なボリュームとなりそうです。
ふと思い出したのは、EPUB3仕様が正式リリースされた後のことです。EPUB3仕様は当時かなり大きな仕様と認識され、リーダーアプリのEPUB3対応がなかなか進みませんでした。EDUPUBも仕様が決まってからのリーダーアプリ側の対応が大変そうです。
■最後に
前回の第四十四回では、佐賀県立高校の電子教材の運用について触れました。
電子教科書の仕様やリーダーアプリといった環境が整っても、それをどうやって運用するのか、いつまで電子教科書を利用できるのかといった部分でも色々問題が出てきそうな気がします。
先日、政府が義務教育課程における電子教科書を無償配布の対象とする検討を始めた、というニュースも目にしました。
コスト面に加えて周辺の問題についても、様々な想定のもと議論をしていただきたいと思います。
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■著者プロフィール
林 拓也(はやし たくや)
テクニカルライター/トレーニングインストラクター/オーサリングエンジニア
Twitter:@HapHands
Facebook:https://www.facebook.com/takuya.hayashi
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