- 2026-11-7
- カルチャー
- 神社仏閣を彩る職人技!「八平」が受け継ぐ彩色と文化財修復の技【天理 倉の耕流祭】 はコメントを受け付けていません
神社仏閣の柱や梁、天井などを彩る、色鮮やかな絵画や文様。その美しさの背景には、千年以上にわたって受け継がれてきた「彩色(さいしき)」という伝統技術がある。奈良県天理市を拠点とする「八平(はちべい)」では、お宮絵師・文化財修復士の中川次郎氏が、神社仏閣の彩色や文化財修復、壁画制作などを手がけている。2026年11月6日(金)から8日(日)まで開催されるオープンドア・イベント「天理 倉の耕流祭」では、八平による絵馬制作の体験企画も実施される。伝統的な彩色技術や文化財修復の仕事を通じて、日本の歴史や文化を未来へつなぐ職人の取り組みに迫った。
■神社仏閣の彩色と文化財修復を手がける「八平」
「八平」は、奈良県天理市柳本町に工房を構える彩色工房だ。主宰する中川次郎氏は1988年、福井県生まれ。2011年に京都嵯峨美術大学の油画分野を卒業後、京都の文化財修復会社「有限会社彩色設計」に入社した。神社仏閣の建造物彩色や文化財修復の経験を積み、2020年に独立。「八平」の屋号で活動を始めた。
中川氏が手がけるのは、神社仏閣の建造物彩色や文化財修復、神仏画や壁画の制作などだ。「彩色」とは、建造物や彫刻などに絵具を用いて色彩や文様を施す技術だ。その歴史は古く、日本には仏教の伝来とともに大陸から伝わったとされる。社寺建築では、柱や梁、天井などに龍や鳳凰、草花などの文様が描かれ、建物を荘厳に彩ってきた。こうした彩色は、単なる装飾ではない。時代ごとの文化や美意識、信仰などを表現する役割も担っている。
中川氏は、長年の文化財修復で培った技術や知識を生かし、伝統的な彩色を守りながら、現代の空間にも調和する作品づくりに取り組んでいる。
■文化財の美しさを未来へ!彩色師が担う保存と修復
八平の重要な仕事のひとつが、文化財の保存・修復だ。神社仏閣の彩色は、長い年月を経ることで劣化が進み、絵具が剥がれたり、色が薄くなったりすることがある。こうした文化財を後世に残すためには、使われている材料や技法、劣化の状態などを調査し、適切な方法で修復する必要がある。
八平では、社寺建造物や美術工芸品の塗装に関する調査・分析、絵画や塗膜の「剥落止め(はくらくどめ)」、伝統技法による修理・復元、模写制作などを行っている。剥落止めとは、経年劣化によって浮き上がったり、剥がれかけたりした絵具の層を再び定着させる技術だ。
文化財修復では、単に色を塗り直して美しくするのではなく、当時の材料や技法を理解し、作品が持つ歴史的な価値を損なわないことが重要となる。そのため、彩色師には絵を描く技術だけでなく、歴史や伝統的な材料に関する幅広い知識も求められる。
中川氏はこれまで、東京の築地本願寺の彩色修理、京都の知恩院本堂の来迎壁絵画修理、名古屋城本丸御殿の欄間彩色、沖縄の首里城の彩色修理など、全国各地の文化財修復に携わってきた。
歴史的な建造物や美術品の美しさを守り、次の世代へ受け継いでいく。こうした仕事が、文化財の保存を支えているのだ。
■伝統の技術を現代へ!「お宮彩色プロジェクト」にも挑戦
八平では、文化財修復だけでなく、地域の神社などを対象とした「お宮彩色プロジェクト」にも取り組んでいる。
中川氏によれば、神社仏閣の彩色修復には費用がかかるため、文化財に指定されていない小さなお社などでは、修復を諦めてしまうケースもあるという。
一方、文化財指定を受けていない社寺では、地域の歴史や人々の思いを反映した、新しい彩色表現に取り組める可能性もある。こうした考えから、八平では地域の人々とともに、お宮の彩色を考える活動を展開している。これまでに、奈良県大和郡山市の風神社の彩色や、和歌山県みなべ町の鹿島神社の船だんじり彩色などを手がけてきた。
また、神社仏閣だけでなく、宿泊施設や飲食店などの壁画制作、タイル絵、デザインにも取り組んでいる。八平が掲げる「新古典彩色」には、古典的な技法や表現を大切にしながら、現代の空間に新しい価値を生み出そうとする姿勢が込められている。
■「天理 倉の耕流祭」で絵馬制作を通じて伝統の彩色に触れる
今回の「天理 倉の耕流祭」では、八平による絵馬制作の体験企画も実施される。
2026年の企画では、天理市にある和爾下神社の本殿に描かれた絵や文様を題材に、絵馬を制作する。和爾下神社の公式サイトでも、10月5日付のお知らせで、八平による絵馬制作イベントが紹介されている。
普段、神社を参拝する際には、建物の形や彫刻などに目を向けることが多い。しかし、柱や梁などに描かれた文様にも、伝統的な技術や美意識が息づいている。今回の企画は、絵馬制作を通じて、こうした社寺建築の彩色や文様に親しむことができる取り組みだ。
なお、2025年の「天理 倉の耕流祭」では、大和神社に奉納する馬の絵馬を描く体験が実施された。日本画の絵具を使い、膠(にかわ)と顔料を混ぜて絵具を作り、絵付けを行う内容だった。
伝統的な彩色というと、専門的で難しい印象を受けるかもしれない。しかし、絵馬という身近な題材を通じて体験することで、普段は接する機会の少ない技術に親しむきっかけとなる。
■日本の伝統的な彩色文化を未来へつなぐ
今回、八平の取り組みに触れて印象に残ったのは、神社仏閣の美しい彩色の背景に、高度な知識と技術を持つ職人の仕事があるということだ。歴史的な建造物に描かれた絵画や文様は、長い年月を経て、現在まで大切に守られてきた。しかし、その美しさを維持するためには、文化財の状態を見極め、適切に保存・修復する専門的な技術が欠かせない。
また、八平では古い文化財を修復するだけでなく、伝統技術を生かした新しい彩色や壁画の制作にも取り組んでいる。伝統を守ることと、新しい表現に挑戦すること。その両方が、日本の彩色文化を未来へつないでいくうえで重要なのだろう。
「天理 倉の耕流祭」は、普段は触れる機会の少ない地域の仕事や文化を知ることができるイベントだ。
今回の取材を通じて、神社仏閣を訪れる際の見方が変わった。次に参拝するときは、建物の歴史や規模だけでなく、柱や梁に描かれた色彩や文様にも注目してみたい。そこには、日本の伝統文化を守り続ける彩色師たちの技術と、ものづくりに対する思いが込められている。
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代表取締役・ITライフハック代表
ITライフハック編集長・ライター
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