- 2026-10-30
- ITビジネス
- 仕事中の20分で健康づくり!筑波大学とつくばウエルネスリサーチが「Wellpathyコンディショニング」を公開 はコメントを受け付けていません
筑波大学と株式会社つくばウエルネスリサーチは2026年10月29日(木)、都内 日本生命保険相互会社のオフィスにて、働く女性のウェルビーイング向上を目指す健康増進プログラム「Wellpathy(ウェルパシー)コンディショニング」の様子を報道陣に公開した。同プログラムは、就業時間内の約20分を活用して身体を整えることで、女性の健康管理を個人の努力だけに任せず、企業が支援する仕組みだ。当日は、取り組みの紹介に続き、日本生命保険相互会社の従業員が実際にプログラムを体験。その後、参加者や担当者への囲み取材が行われた。
■女性の健康を個人の努力から企業の仕組みへ!「Wellpathyコンディショニング」の取り組み
はじめに、株式会社つくばウエルネスリサーチ取締役副社長の塚尾晶子氏が、「Wellpathyコンディショニング」の開発背景と取り組みについて説明した。
「Wellpathy」とは、健やかさを意味する「Well」と、共感を意味する「Empathy」を組み合わせた言葉だ。すべての人の健やかさに共感し、一人ひとりが自分らしく過ごせる社会の実現を目指すという理念が込められている。
塚尾氏は、働く女性を取り巻く健康課題として、若い女性のやせや筋肉量の不足、運動不足などを挙げた。説明資料によれば、日本の20~30代女性の約5人に1人がやせに該当する。また、20~40代女性の体力が過去25年間で最低水準となるなど、運動不足や体力低下が深刻な課題となっている。
塚尾氏は、筋肉が身体を動かすだけでなく、マイオカインと呼ばれる物質を分泌し、さまざまな臓器の働きにも関係していることを紹介。筋肉量の不足が将来の健康リスクにつながる可能性についても説明した。
さらに、女性特有の健康課題と仕事の関係にも言及した。
2026年のSIP調査によると、月経・更年期関連症状の重さ別にみた3カ月以内の退職意向は、症状が軽い女性で37.5%だったのに対し、症状が重い女性では55.5%に達した。体力不足についても、仕事のパフォーマンスや心身のコンディション、会社へのエンゲージメントとの関連が調査で示されている。
こうした状況を改善するため、運動や健康づくりの重要性が指摘されてきた。しかし、仕事や家事、育児に追われる女性にとって、自分自身の健康管理に充てる時間を確保することは容易ではない。
塚尾氏は、忙しい女性ほど自分のケアを後回しにする傾向があり、疲れや身体の不調を当たり前のこととして受け入れてしまっている点を問題視した。
そこで考案されたのが、従来は余暇時間に行っていた健康づくりを、就業時間内に取り入れるという仕組みだ。従業員の自主的な参加に任せる福利厚生とは異なり、企業が仕事の時間を確保して健康づくりを支援する。健康を個人だけの問題ではなく、企業が取り組むべき課題として位置付けた点が特徴である。
「Wellpathyコンディショニング」は、こども家庭庁の令和8年度「こどもとともに成長する企業」構想推進事業として、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の研究成果を活用して展開されている。
2026年9月からは、武蔵野銀行、日本生命、スズケン、EPファーマラインの4社で実証を開始。筑波大学が成果の第三者評価を担っている。
また、プログラムの開発には、コンディショニング分野の専門企業R-body、筑波大学、つくばウエルネスリサーチが携わった。
ベースとなっているのは、東京オリンピック・パラリンピックの選手村でアスリートに提供されたトータルコンディショニング技術だ。
激しい運動で身体を鍛えるのではなく、自分の身体の課題を把握し、正しい動作を身につけ、適切な負荷で身体を整える。肩こりや腰痛などの不調を改善するとともに、将来的な健康リスクの低減を目指している。
紹介の中では、日本生命の常務執行役員である増山尚志氏によるビデオメッセージも上映された。企業として女性従業員の健康支援に取り組む意義が示され、仕事時間の20分を自分自身の現在と将来の健康づくりに活用するよう呼びかけた。
■首や肩のこりを改善へ!社員が「Wellpathyコンディショニング」を体験
取り組みの説明に続き、日本生命の従業員を対象に「Wellpathyコンディショニング」が実施された。
今回の運動を指導したのは、株式会社R-bodyに所属するコンディショニングコーチの西原利来氏だ。この日のテーマは、首や肩のこりを軽減するための姿勢改善だった。西原氏は、日常生活でパソコンやスマートフォンを長時間使用することが、首や肩への負担につながる可能性があると説明した。
人間の頭は体重の約10%に相当する重さがあるとされる。通常は背骨が頭を支えているが、背中が丸まった姿勢になると、首や肩の筋肉に負担がかかりやすくなるという。
プログラムは、まず椅子に座った状態でのセルフチェックからスタートした。最初に行ったのは、両手を上げる「バンザイ」の動作だ。腕をまっすぐ伸ばした状態で上げられるか、肘が曲がっていないか、腰が過度に反っていないかなどを確認する。一見すると簡単な動作だが、普段の姿勢や身体の動かし方の癖に気付くきっかけになる。
続いて、首や肩の筋肉を伸ばすストレッチを実施した。椅子に浅く腰掛けて背筋を伸ばし、頭をゆっくり前に倒すことで、首の後ろ側の筋肉を伸ばす。さらに、頭を左右に傾け、首の側面を伸ばす運動も行った。
西原氏は、動作中に背中を丸めないことや、呼吸を止めないことなどを指導した。
次に取り組んだのは、肩甲骨を大きく動かすコンディショニングだ。
両手を肩に置き、肘で大きな円を描くように回す。肩甲骨を動かすことを意識しながら、同じ動作を繰り返した。さらに、背筋を伸ばした姿勢を保ちながら、股関節から上半身を前に倒す運動にも挑戦した。猫背にならないよう注意し、日常のデスクワークでも正しい姿勢を維持できるよう身体の使い方を学んだ。
椅子に座って行う運動を終えた後は、椅子を片付け、立った状態で身体を動かすプログラムへと移った。終盤にはリズムに合わせて身体を動かすチャレンジも取り入れられた。
今回のプログラムは、激しい運動を伴わないことが特徴だ。特別な運動器具を使用せず、オフィスでも取り組める内容となっている。
西原氏は、身体を整えた状態を維持するには、継続的な取り組みが重要だと説明。首や肩のコンディショニングについて、仕事の前後などに週2回程度実施することを勧めた。
短時間のプログラムながら、自分の身体の状態を確認し、正しい姿勢や動作を身につけるための工夫が盛り込まれていた。
■「身体がポカポカしている」参加者が語る体験後の変化と継続への期待
プログラム終了後には、運動を体験した日本生命の社員への囲み取材が行われた。
参加者の一人は、運動後の身体の変化について「今も体がポカポカしている」と話し、首まわりがすっきりした感覚があることを明かした。別の参加者は、運動の必要性を理解していても、一人ではなかなか実行できないと説明。そのうえで、職場の仲間と一緒に取り組めたことで、また参加したいと感じたという。
運動の負荷については、強い疲労感はなかったという声が聞かれた。特に、プログラムの大部分が椅子に座って行う動作だったため、心地よく身体を動かせたという意見もあった。
一方、後半に行われたリズム運動については、慣れない動きでついていくのが難しい部分もあったという。
ただ、参加者同士で同じように動作に苦戦する場面もあり、互いに笑い合いながら取り組めたことが、楽しさにつながったようだ。
囲み取材では、普段の運動習慣についても質問が寄せられた。参加者からは、仕事が忙しく、定期的に運動する時間を確保できていないという声が聞かれた。また、家庭では家事や育児に追われ、自分自身の健康管理が後回しになっているという参加者もいた。
運動の必要性は頭では理解していても、帰宅後に自分のための時間を確保することは難しい。そのため、就業時間内に運動できる機会があることを前向きに評価していた。
実際、参加者の一人は、曜日や時間が決まっていることで、運動習慣がない自分でも続けられるのではないかと期待を寄せた。
別の参加者も、一人では継続しにくい運動について、仲間同士で声を掛け合いながら取り組める点が、継続しやすい仕組みになっていると評価した。
一方、プログラムによって仕事や生活に具体的にどのような変化が生まれたかについては、現時点ではまだ判断が難しいという率直な意見もあった。それでも、自分自身が健康づくりに取り組めていることに喜びを感じているという声が聞かれた。
参加者の言葉からは、健康づくりに必要なのは、運動への意欲だけでなく、無理なく続けられる環境や、一緒に取り組む仲間の存在であることがうかがえた。
■対面とオンラインを組み合わせて継続!日本生命の担当者が語る導入の狙い
続いて、「Wellpathyコンディショニング」の導入に携わる日本生命の担当者への囲み取材が行われた。
同社で子育て支援事業を担当する担当者は、今回の取り組みに参加した背景について説明した。
日本生命では、従来から子育てしやすい社会の実現を目指す活動に取り組んできた。その活動を通じて、筑波大学の久野譜也教授らと接点を持ち、子育て世代の女性が抱える健康課題について理解を深めてきたという。
担当者は、子育て中の女性が自分自身の健康に目を向ける時間を確保しにくいことを課題として挙げた。
母親が健康であることは、本人だけでなく子どもにとっても重要だ。また、20~30代の若い女性の運動不足についても、将来を見据えて取り組むべき課題だと認識したという。こうした考え方に賛同したことが、今回の実証実験への参加につながった。
一方、実際に企業でプログラムを運用するにあたっては、課題もある。
社員はそれぞれ異なる業務を担当しており、働き方も多様だ。そのため、週に複数回、全員が同じ時間に集まって運動することは容易ではない。そこで日本生命では、参加者が集まって運動する機会に加えて、オンラインでもプログラムに取り組める仕組みを活用している。対面での実施に加え、残りの回は自宅などで各自の都合に合わせて参加できるようにすることで、継続的な運動機会の確保を図っている。
この方法であれば、業務の都合で集合形式のプログラムに参加しにくい社員も、自分の生活に合わせて健康づくりを続けやすくなる。
また、実証実験の効果については、現時点ではまだ明確な変化を判断できる段階ではないと説明した。
取材時点では開始から約1カ月で、実施回数も限られているという。今後は翌年2月まで取り組みを継続し、社内でどのような効果が表れるかを検証していく考えだ。
日本生命にとって今回の取り組みは、単なる運動プログラムの導入にとどまらない。
従業員の健康を企業が支援する仕組みを実際の職場に取り入れ、その効果や運用上の課題を確かめる試みでもある。
今後の検証によって、身体のコンディションだけでなく、仕事への意欲や職場環境などにどのような変化が生じるのかが注目される。
■仕事中の20分が健康づくりの第一歩に!企業による継続的な支援に期待
今回の取材で特に印象的だったのは、参加者の多くが運動の必要性を理解していながら、仕事や家事、育児などによって、自分のための時間を確保できていないという点だ。
健康づくりの重要性は広く知られている。しかし、それを日常生活の中で継続することは、想像以上に難しい。
「Wellpathyコンディショニング」は、運動内容そのものにも工夫が見られるが、最大の特徴は、健康づくりを個人の努力に任せず、企業の仕組みとして実施していることだろう。仕事中のわずか20分を自分の身体と向き合う時間に変える。さらに、職場の仲間と一緒に取り組むことで、運動を続けるきっかけにもなる。
参加者が楽しみながら身体を動かし、運動後の変化を前向きに受け止めていたことは、こうした仕組みの可能性を感じさせるものだった。もちろん、運動による健康状態の改善や仕事の生産性への影響については、今後の実証結果を慎重に見極める必要がある。
また、就業時間内に運動する時間を確保するためには、企業側の理解だけでなく、業務との両立や参加しやすい環境づくりも欠かせない。働く女性の健康は、もはや個人だけの問題ではない。従業員が健康で、自分らしく働き続けられる環境を整えることは、企業の持続的な成長にもつながる重要な課題だ。
「健康づくりは仕事が終わってから」という従来の常識を変えられるのか。日本生命をはじめとする実証企業の取り組みが、働く女性の健康を支える新たな企業文化として広がることに期待したい。
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代表取締役・ITライフハック代表
ITライフハック編集長・ライター
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