育児負担、意識と実態に約30ポイント差!「子育て女性のウェルビーイング白書2026」発表

  • 2026-10-30
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筑波大学と株式会社つくばウエルネスリサーチは2026年10月29日(木)、都内 日本生命保険相互会社のオフィスにて、「子育て女性のウェルビーイング白書2026」の記者発表会を開催した。全国47都道府県で未就学児を育てる男女6,334人を対象に、子育ての役割分担や働き方、母親自身の健康状態、地域の子育て環境などを調べたものだ。

調査は、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「包摂的コミュニティプラットフォームの構築」の研究開発の一環として実施された。会見には、同プログラムのプログラムディレクターを務める筑波大学大学院教授の久野譜也氏が登壇。共働きが広がる一方、家事・育児や自身の健康管理の負担が女性に集中する実態を説明した。

■「意識は令和、実態は昭和」。母親への負担集中が明らかに
久野氏がまず強調したのは、女性自身の努力だけで健康問題を解決することの難しさだ。発表では、女性の「やせ」や運動不足も背景として提示。スポーツ庁の統計を用い、20~50代女性のスポーツ実施率が男性より低いことや、30~40代女性の体力が低下傾向にあることを示した。仕事に加えて家事・育児を担う女性が、余暇に運動する時間を確保するのは容易ではないという。

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図1 女性の年代別スポーツ実施率と体力の推移(出典:久野教授・当日発表資料4ページ)


〇「母親が中心」の意識は35.5%、実態は66.1%
白書で目を引くのは、子育ての分担に関する認識と現実の隔たりだ。「子育ては母親が中心で行うものだと思う」と肯定的に答えた割合は35.5%だったのに対し、「子育ては母親が中心で行っている」とする回答は66.1%。その差は30.6ポイントに達した。

子どもの体調不良時も同様で、「母親が仕事を休む方が自然だと思う」は35.4%だったが、実際に「母親が仕事を休んでいる」は63.5%。理想や認識が変わりつつあっても、家庭内の実際の役割分担は追いついていない。久野氏は、こうした前提を当然視する「アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)」に目を向ける必要性を訴えた。

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図2 育児の役割分担をめぐる「意識」と「実態」の差(出典:白書結果報告2ページ、N=6,334)


〇第2子への希望に影響する、母親自身の健康
少子化をめぐる議論で焦点になりやすい経済的支援に対して、白書は別の切り口も示した。「現状のままでは次子を希望しない人が希望する要件」を尋ねた資料では、「自分の心身の健康」が20.1%、「家族や地域の精神的・役割支援」が18.3%で、「政府・自治体の経済的支援」の5.7%を大きく上回った。久野氏は、経済面だけでなく、母親の体調や周囲の支援環境を政策に組み込む重要性を指摘した。

〇次子を希望するために求める条件

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図3 次子を希望するために求める条件(出典:白書結果報告3ページ、図中の女性回答者数は3,230人)


地域の温かさと、子どもを連れて出かけやすい街づくり
地域別の結果では、沖縄県が「子どもが安心して成長できる」「地域の一員として大切にしてくれる」など5つの子育て環境評価項目すべてで上位に入り、うち3項目で全国1位となった。発表資料には、2025年の合計特殊出生率で沖縄県が1.52と全国1位だったことも併記された。ただし、子育て環境の評価が出生率を直接押し上げたと断定できる調査ではない。

〇子育て環境評価の都道府県ランキング

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図4 子育て環境評価の都道府県ランキング(出典:白書結果報告4ページ)


また、居住地域を子育てしやすい場所として推奨しない理由では、「公園や遊び場が少ない」が34.9%で最多。「行政の子育てサービスが利用しにくい」も30.9%に上った。久野氏は、これらの地域別データを自治体に届け、施策に活用してもらう考えを示した。

〇余暇時間だけに頼らず、職場で健康づくりを
健康支援の解決策として紹介されたのが、就業中に運動やセルフケアの機会を設ける「Wellpathy(ウェルパシー)コンディショニング」だ。筑波大学などが監修し、セルフチェック、ミニ講座、コンディショニング、有酸素運動などを約20分で行う。日本生命、武蔵野銀行、スズケングループなどでモデル事業が進められている。久野氏は、健康づくりを個人の余暇時間に任せる発想を変え、企業による支援につなげたいと説明した。

〇健康づくりの場を余暇時間から就業中へ

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図5 健康づくりの場を「余暇時間」から「就業中」へ(出典:久野教授・当日発表資料9ページ)


■質疑応答──制度づくりだけでは変わらない職場の風土
〇男性の育児参加には、企業の意識改革も必要
質疑応答では、男性が育児により主体的に関わるために何が必要なのか、という質問が寄せられた。久野氏は、就業時間が長い現役世代の意識や行動を変えるため、企業を通じた働きかけが重要だと回答。経営層、人事部門、男性社員、女性社員の認識を比較し、職場の課題を数値化する「Wellpathy」の評価法にも言及した。

埼玉県の中小企業で進める評価の例として、女性の健康課題への職場の理解などについて、経営者側の自己評価は100点満点中おおむね75点、人事は約70点、男性社員は約65点だったのに対し、女性社員側の評価は約40点にとどまったという。

経営側が十分に配慮しているつもりでも、当事者の受け止め方には大きな差がある。久野氏は、結果を企業に示し、研修や就業中の健康支援へと結びつける狙いを説明した。

〇育休取得率だけでは見えない「質」の問題
男性の育児休業についても、取得日数や取得率が増えても、家庭内の役割分担の変化につながっているとは限らないとの見方を示した。生理休暇なども制度があれば十分というわけではなく、利用しやすい雰囲気や上司・同僚の理解が欠かせないという。

ハラスメント防止研修についても、禁止事項の周知だけでなく、女性の健康課題への理解を深める内容を検討すべきだとの問題意識を語った。

〇白書を社会に届け、変化を継続して検証へ
白書の結果をどう社会実装するのかとの問いには、2026年11月から新潟県で、自治体や地元企業などと連携した情報発信を進める計画を明かした。

まず県民や企業経営者に実態を知ってもらい、その後の意識変化を調査する考えだ。成果を検証したうえで他県への展開も目指す。また、白書を継続的に発表することによって、社会の意識と現実のギャップが縮まっているかを測っていきたいとした。

■「母親任せ」を変えるには
今回の発表で印象的だったのは、支援制度の数ではなく、日常の負担を誰が引き受けているかを数字で示した点だ。「母親が中心で育てるべきだ」と考える人が減っても、子どもが熱を出したときに休むのは母親。そんな現実が変わらなければ、女性が自分の健康に時間を使う余地も生まれない。

次子を考える際の健康不安、地域の公園や支援サービス、職場での理解。これらは別々の課題に見えて、実はつながっている。母親一人の頑張りに依存する「孤育て」から、家庭・企業・地域が役割を分け合う「共育て」へ。白書で可視化されたギャップを、具体的な行動の変化に結びつけられるかが、今後の重要な焦点になるだろう。

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