なぜ武蔵野大学は通信制でデータサイエンスを始めるのか——社会人に向けた明確な答え

  • 2026-1-30
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武蔵野大学は2026年4月に新たな学部「通信教育部国際データサイエンス学部」を開設する。新学部の開設に先立ち、デジタル庁参事官 浅岡 孝充氏、株式会社CustomerPerspective 代表取締役 紣川 謙氏をゲストに招き、2026年1月27日(火)に武蔵野大学有明キャンパスで、「通信教育部国際データサイエンス学部」開設に関する記者発表会を実施した。

■AI時代、大学は何を教えるべきか――武蔵野大学の一つの答え
武蔵野大学は1924年に創立した伝統ある大学だ。2024年に100周年を迎え、「守り」に入ることなく、仏教精神に基づいた「世界の幸せをカタチにする」という理念のもと、時代ごとに社会が抱える課題と向き合い、教育の中身を更新し続けてきた。

少子化、大学の淘汰、学問の再定義。そんな中、武蔵野大学が打ち出したのが、2026年に新たに打ち出すのが、「通信制教育部国際データサイエンス学部」だ。

生成AIの進化で、集計や分析といった“作業”は急速に自動化されつつある一方で、データを前に「何を問い、どう判断し、その決定にどう責任を持つか」という仕事は、むしろ重みを増している。しかし、その判断力を体系的に学んできた人は多くない。

今回立ち上がる学部が通信制であることには、もう一つ大きな意味がある。それは、学生がそれぞれの地域や職場と向き合いながら学べる点だ。

大学側は「社会課題は現場にあります。通信制にすることで、学生は自分が暮らす地域や働く職場を起点に、データサイエンスをどう使えば社会を変えられるのかを考えることができる設計にしています」と説明する。

さらに、この学びは一人で完結するものではない。オンライン環境を通じて、国内外、世界各地にいる学生と議論を重ねながら学ぶことができる点も大きな特徴だ。言語の壁についても、翻訳ツールやデジタル技術を前提とした設計がなされており、異なる文化や背景を持つ学生同士が、同じ課題を多角的に捉え直す環境が用意されている。

■データサイエンス=分析、ではなく「決断の学問」

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武蔵野大学の国際データサイエンス学部(MIDS)が掲げるのは、先端的なデータサイエンス教育研究を通じて、データサイエンス(DS)を“使う側”に立つ先導的リーダーを育成することだ。

特徴的なのは、単なる座学ではなく、未来を予測し、課題を発見し、解決へと導くプロセスを実践的に学ぶ「研究体験連動型学修」を軸に据えている点にある。

分析結果を覚えるのではなく、問いを立て、仮説を検証し、意思決定につなげるーーその一連の思考と行動を、学修そのものとして設計している。

小西聖子学長は、学部新設の背景について、次のように語る。「AIやテクノロジーが発達するほど、人間にしかできない“問いを立てる力”や“判断する力”が重要になります。大学は、知識を与えるだけの場所から、社会で意思決定できる人を育てる場所へ変わらなければなりません」

武蔵野大学が掲げる教育理念は「世界の幸せをカタチにする」。その実践として、データサイエンスを単なる専門技術ではなく、社会課題に向き合うための思考様式として位置づけている。

一般的にデータサイエンスというと、統計やプログラミング、AIアルゴリズムといった“技術”が前面に出がちだ。だが武蔵野大学の定義は少し違う。「問いを立て、課題を可視化し、解決策を設計し、それを社会にどう実装するか」までを含む、一連のプロセスとして捉えられている。分析はゴールではなく、途中工程にすぎない。

この思想は、キャンパスの空間設計にも表れている。有明キャンパスには、教授の研究室に仕切りがなく、壁一面がホワイトボードになったオープンイノベーションスペースがある。誰かが書いたアイデアに、通りがかった別の学生や教員が解決策を書き足す。ハッカソンもここで行われるという。

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国際データサイエンス学部長を務める清木康氏は、学びの場づくりについて次のように語る。「イノベーションは、個人の頭の中だけでは生まれません。異なる視点が交差する“場”があって初めて生まれる。だから私たちは、垣根をなくすこと自体を学びにしています」

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知識は個人に閉じず、場で循環し、対話の中で磨かれる。その前提が、教育設計の根幹にある。武蔵野大学では、こうした「垣根のない場」をデザインすること自体が学びの一部となっている。

■なぜ武蔵野大学は「分析できる人」より「決められる人」を育てるのか

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他大学の多くが「高度な分析ができる人材」を育てようとするのに対し、武蔵野大学が見据えるのは、「社会課題は現場にある」という前提に立ち、働きながら学び、自分の仕事や地域の課題を題材にデータで考え、分析を意思決定につなげられる人材だ。

武蔵野大学データサイエンス学部客員教授の紣川謙(かせがわ けん)氏は「企業の現場では、データ分析が目的になってしまうケースが少なくありません。本来は、その結果をもとに何を決め、どんなアクションにつなげるのかが重要です。データサイエンスは、分析技術ではなく“意思決定のための道具”として使われるべきだと考えています」と語る。

求められるのは、正解を当てる力よりも、不確実な状況で判断を引き受ける力。この違いは、特に社会人にとって大きい。実務の現場では、データが100%揃うことはほとんどない。それでも決めなければならない。そのとき必要なのは、分析結果をどう読み、どう使い、どう説明するかという「判断の設計力」だ。

■通学しないからこそ学べる――通信制が社会人に最適な理由

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今回立ち上がる学部は通学が前提ではなく、オンラインを中心に学ぶ設計になっているのは、単なる利便性の話ではない。

デジタル庁統轄官付参事官の浅岡孝充氏は、今回の通信制学部について「データやテクノロジーは、現場から切り離した瞬間に意味を失います。社会課題は常に地域や職場にあり、学びもまた、そこに接続されている必要がある」と指摘する。

データサイエンスはPCとデータがあれば成立する学問である。むしろ社会人にとっては、自分の業務データや現場課題をそのまま学びに持ち込める点で、通信制との相性はいい。学んだことが翌日の仕事に直結する。

IT未経験でも構わない。大切なのは、正解のない課題に向き合い、データを使って考えたいという姿勢。年齢やバックグラウンドよりも、「何を問いにしたいか」が重視される。

■ AI時代のリスキリングは、「スキル」ではなく「判断力」を取り戻すこと

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武蔵野大学の通信教育部国際データサイエンス学部は、単なる新設学部の話ではない。それは、「AI時代に、ビジネスパーソンは何で評価されるのか」という問いを突きつけている。

資料作成、集計、分析――そうした作業は、すでにAIの方が速く、正確だ。では人間の仕事は何か。残るのは、不完全なデータを前に、それでも決めること。そしてその判断に責任を持つことだ。

通信制という形で、社会人が自分の職場や地域の課題と向き合いながら学べるこの学部は、「学ぶために仕事を離れる」のではなく、「仕事をしながら、判断力を鍛え直す」という現実的な選択肢を示している。

リスキリングとは、スキルを積み上げることではない。「このデータで、あなたは何を決めるのか」と問われたときに、自分の言葉で答えられるようになること。大学が変わろうとしている今、その変化は、会議室で立ち止まるビジネスパーソン一人ひとりに向けられている問いでもある。

もし今、仕事のどこかで「判断に自信が持てない」と感じているなら、それは学び直しのサインかもしれない。武蔵野大学の通信制教育部国際データサイエンス学部は、次の肩書きのためではなく、次の決断のために学ぶ場所として、その選択肢を差し出している。

テクニカルライター 脇谷 美佳子


武蔵野大学

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