- 2025-3-17
- パソコン
- 手のひらにのる高性能!M4 搭載の新Mac miniレビュー はコメントを受け付けていません
2024年10月29日(米国時間)、Appleが発表したMac miniの新型が、同年11月8日に発売された。M4と呼ばれる超高性能プロセッサを搭載し、手のひらに収まるコンパクトサイズ。ベーシックモデルでは10万円を切るという驚きの価格設定だ。あまりに衝撃的で、筆者は思わず衝動買いをしてしまった。
筆者にとっては久しぶりのMacである。
もともとWindows PCを主に使ってきた筆者だが、Macも嫌いではない。最近はAIに強く関心を持っており、Appleが発表したAI「Apple Intelligence」にも注目している。これをいち早く試せることも、大きな魅力のひとつだ。
では、さっそくレビューしよう。
■圧倒的にコンパクトながら存在感のあるデザイン
筆者が購入したのは、256GB SSD・16GBメモリを搭載したベーシックモデルであり、シリーズ内では最下位のモデルとなる。
外観デザインは非常にAppleらしく、シンプルでスタイリッシュな仕上がりとなっている。上部にはAppleロゴが配置され、角の取れた正方形のフォルムが特徴的だ。アルミ合金の質感は高級感があり、まるで「Mac Studio」をそのまま小型化したような印象を受ける。
高さ:5.0cm
幅:12.7cm
奥行き:12.7cm
重量:0.67kg
ここまでコンパクトなデスクトップ機であれば、設置場所にも悩むことはなくなりそうだ。シンプルなデザインが魅力的で、どんなデスク環境にも自然になじむ一方、洗練された外観によってしっかりとした存在感も放っている。
デスク上のスペースを有効に活用できるだけでなく、軽量かつコンパクトな設計のため、ディスプレイの問題さえクリアできれば、持ち運んで使用するのも一案だ。
従来は背面に集中していたポートを前面にも配置することで、日常的なケーブル接続の利便性が大幅に向上した。前面にはUSB-Cポート×2、3.5mmヘッドフォンジャックを搭載し、背面にはThunderbolt 4ポート×3、HDMI、Ethernet、ACインレットが配置されている。これにより、使い勝手が格段に向上し、周辺機器の接続もスムーズに行える。
電源ボタンは筐体の底面に配置されており、操作性に関しては賛否が分かれるところだ。全体のデザインバランスを考慮した上での選択だろうか、ユニークな点である。ただし、本機は小型かつ軽量なため、電源ボタンが底面にあっても特に不便を感じることはない。実際、電源を入れる際は、ごく稀にしか押さないため、軽く持ち上げて押せば問題なく操作できる。
■M4プロセッサ搭載のパフォーマンス
新型M4 Mac miniは、最新のApple M4チップを搭載し、日常作業からクリエイティブな高負荷タスクに至るまで、幅広い用途に対応できるよう設計されている。
M4チップは、10コアのCPU(高性能コアと効率コアの組み合わせ)と10コアのGPUを搭載している。Appleの発表によると、前モデルのM1チップと比較して、CPU性能は約1.8倍、GPU性能は約2.2倍向上したという。
実際使ってみると、日常のマルチタスクはもちろん、画像編集や動画編集などの負荷の高いアプリケーションを複数同時に起動しても、操作は非常にスムーズであり、処理速度の向上を顕著に実感できる。
試しに画像生成AI「Stable Diffusion」を実際にインストールして使ってみた。
結果、画像のサイズを少し大きくすると処理に時間がかかり、かなり待たされることがあった。場合によってはマシンの動作が不安定になることもあり、実用性ギリギリと感じた。この用途では、プロセッサの処理能力はともかく、16GBでは明らかにメモリ不足ということだ。
現状、「Stable Diffusion」や、そのライバルとなる画像生成AI、さらには動画生成AIでは、NVIDIAの高性能GPUを搭載したWindows PCの方が環境が整っており、お薦めである。どうしてもMacで試したい場合は、最低限もう少しメモリ容量の大きい機種の方が良さそうだ。
とはいえ、こうした特殊な用途でなければ、本機の処理速度は十分に速い。メモリも一般的な用途には十分な容量と言える。重い処理の代表格である動画編集も快適にこなせる性能を備えている。
ネットワークは、前述のEthernetポートに加え、Wi-Fi 6EおよびBluetooth 5.3に対応している。
ディスプレイは、HDMIポートに加え、Thunderbolt対応のUSB-Cポートを使用することで、最大3台まで同時に出力可能だ。
また、M4プロセッサは最新の3nmプロセス技術を採用しており、電力効率が大幅に改善されている。高いパフォーマンスを発揮しながらも、電力消費を抑えることができる。さらに、静音性も高く、ファンの騒音はほとんど気にならないほどだ。
■ストレージ容量不足は外付けで解消可能
筆者の購入したM4 Mac miniのストレージは256GBで、正直かなり小さい。この容量では、普通の使い方でもすぐに容量がいっぱいになってしまうだろう。とはいえ、上位モデルを選ぶとなると、価格が大きく跳ね上がるのが悩ましいところだ。
M4 Mac miniは、従来のM2モデルで採用されていたSSDの基板直結方式から一歩進化し、取り外し可能なSSDモジュールを採用している。ただし、SSDの交換は上級者向けの作業であり、Appleの保証対象外となる可能性が高いため、必ずしも推奨できる選択肢とは言えない。
そこで筆者は、外付けのSSDディスクドライブを購入し、1TBのブートディスクとして設定した。高速なThunderbolt 4接続のおかげで、外付けでありながら内蔵ドライブと同等か、それ以上のアクセススピードを実現できている。
M4 Mac miniのデザインにぴったりな「HUB兼SSDエンクロージャ」といった製品が登場しており、筆者もこれを使用している。機会があれば、別途レビューしたい。
このような外部機器を利用することで、M4 Mac miniには搭載されていないUSB Type-AポートやSDメモリーカードスロットなども使用でき、利便性が大幅に向上する。
■Apple Intelligenceへの期待
本機は、Apple Intelligence対応機種である。
Apple Intelligenceでは、独自のAIを活用した文章作成や要約、翻訳、画像生成などの新機能が利用可能になる。
現在、OSの言語を英語に切り換えることで、日本でもApple Intelligenceの一部の機能が利用できるものの、日本語に対応しておらず、制約が大きい。2025年4月には本格的に使えるようになるとアナウンスされているので、それまでの辛抱だろう。
実際にMac OSの言語設定を英語に切り換えて起動し、Apple Intelligenceを使用した画面を掲載する。

Image Playgroundというアプリで画像生成をしたところ。プロンプトは「Mt. Fuji,spring landscape」である。出力画像の内容は飛び抜けて優れているとはいえない。今後に期待である。
もちろん、現時点でもChatGPT、Gemini、Claude、Perplexityなど、Apple以外のAIを本機で利用することは可能だ。
特にChatGPTのアプリ(ダウンロードし、インストールして使うタイプ)は、Mac版ではWindows版と異なり、MacOS標準アプリの「テキストエディット」「ターミナル」「メモ」、さらにマイクロソフトの「Visual Studio Code」などと連携できる機能が備わっている。これら対応アプリでは、表示されている内容をChatGPTが直接参照できるため、ユーザがチャットで状況を説明する必要なく、AIが状況を把握してくれる機能がある。これは大変便利である。
これらのAIは、現時点ではほとんどがMac内部ではなく、クラウド上で動作するシステムとして構築されており、インターネット接続がないと利用できない。アプリはあくまで、クラウド上のAIとやり取りするための操作画面に過ぎない。
しかし、Apple Intelligenceでは、プロセッサの性能向上に伴い、ローカル、つまり手元の端末(この場合はMac)でAI処理を実行する部分が増えていくと考えられる。たとえば、ローカルで処理を行うことで、セキュリティやプライバシーの問題をよりクリアしやすいということだろう。本機にM4プロセッサが搭載されたことで、AIのローカル処理が可能になり、初代のApple Intelligenceを動作させる仕組みが提案されているのだ。
さらに、端末内部でのOSとの密な連携により、AIは人間に代わってOSを細かく制御し、複雑な処理を自律的に実行するようになると考えられる。これは現在最先端技術として注目されている「AIエージェント」と呼ばれる機能であり、ユーザーの意図を理解し、より高度な支援を行うことが期待されている。
AIの進化は非常に速い。クラウド側の技術が発展するだけでなく、Macのような端末側も同時に進化して、新しい時代に適応していくことになるだろう。
とにかく、まずは4月が待ち遠しい。
■まとめ
本機 M4 Mac mini は、性能・デザイン・接続性といった多くの面で大きく進化を遂げた製品である。しかも、ベーシックモデルは10万円を切る価格で提供されており、非常に手の届きやすい選択しとなっている。
一方で、電源ボタンが筐体底面にあること、USB Type-AポートやSDカードスロットがないこと、ストレージ容量が限られることなど、いくつかのマイナスポイントがあるため、購入の際には注意が必要だ。ただし、これらには対処方法も存在する。
今回レビューしたのはベーシックモデルだが、M4 Proプロセッサを搭載した上位モデルも用意されており、予算に応じて選択するのも良いだろう。
また、昨年発表されたApple Intelligenceが日本で本格的に利用可能になるのは4月頃と見られており、その日が待ち遠しい。
AI時代の高性能マシンとして、比較的手軽に購入できるM4 Mac miniはお薦めできる製品だ。
テクニカルライター 鈴木 啓一
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