- 2022-12-12
- ITビジネス
- 2022年、最も売り上げを伸ばした漢方は、咳に効く『麦門冬湯』!「KAMPO OF THE YEAR 2022」発表会 はコメントを受け付けていません
漢方薬を中心とした一般用医薬品と医療用医薬品を販売するクラシエ薬品株式会社は2022年12月1日、都内 鉄鋼カンファレンスルームにて、漢方薬市場の長期的動向や、2022年に売り上げを伸ばした注目の漢方薬をまとめた「KAMPO OF THE YEAR 2022」の発表会を実施した。
■漢方市場は、コロナ禍で微減した2021年度から回復傾向に
発表会は、クラシエ薬品株式会社 代表取締役社長 草柳徹哉氏による漢方市場の説明から始まった。
近年、健康の価値や暮らしのあり方が大きく変化する中で、漢方薬の市場は医療用、一般用ともに拡大傾向にある。高齢化社会の到来、健康志向の高まりに加え、ストレスを起因とする心身の不調の顕在化など、不調も多様化している。漢方薬への需要が高まる中で、同社は薬局やドラッグストアで販売される「一般用漢方薬」と、医師により処方される「医療用漢方薬」の両面から漢方薬を提供してきた。
草柳社長は「一般用漢方薬の2022年の見込みは、600億円強でございます。この5~6年を見てもしっかりと伸びてきていますが、2021年に市場の2割ほどを占める風邪薬や葛根湯(かっこんとう)の関係が、マスクの定着により風邪をひく方が減り、一時的に減少しています。今年は昨年を超えるようなかたちで、その他の処方の底上げもあり、市場が拡大している状況でございます。」と、最近の漢方市場について語った。
草柳社長によれば、医療用の漢方薬も3%の年率で、この5~6年処方せんの数が増えている。トータルで見ると、コロナ禍にあっても漢方薬は一般用・医療用でしっかりと着実に浸透してきていることが見てとれるという。
■データで見る漢方トレンド!『葛根湯』(風邪)と『防風通聖散』(肥満改善)が市場の35%に
引き続き、クラシエ製薬株式会社 ヘルスケア事業部 マーケティング部長 西村英徳氏が登壇し、「データで見る漢方トレンドの変化」について説明した。
西村部長は直近6年間増加を続ける一般用漢方薬市場の中で特筆すべきこととして、「葛根湯(風邪)と防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん:肥満改善)の2処方で、35%を構成すること」を挙げた。
西村部長は「これら2処方を除くマーケット推移は、年平均成長率3.62%と非常に高い伸び率を示している状況にあります。コロナ禍にあっても市場成長が継続で推移しているということでございます。」と、その他の処方も順調な成長を見せていることを明らかにした。
では、世代別の漢方需要の推移はどうなっているのか?
西村部長は「これまで漢方薬を購入してきたのは60代、70代の人たちが多かったが、昨今、20代、30代の人たちの購入が高く伸びています。」と語った。「全世代へ漢方薬の裾野が広がっている」ことがデータから確認できる。
西村部長は「コロナ禍の影響をうけつつ、漢方薬市場は拡大している状況にあります。また、若年層の漢方需要も増加傾向にあり、幅広い年代に漢方薬へのニーズは高まっています。そして、「風邪」、「メタボブーム」、「不調の多様化」、これらを経て今後ますます漢方薬へのニーズが高まるものというふうに認識しております」と語った。
2022年の漢方市場の振り返ると、2022年1月から10月までの販売実績1位は『防風通聖散』(肥満)、2位は『葛根湯』(風邪)で、例年と大きな変化はなかった。3位にランクインした『八味地黄丸』(はちみじおうがん:尿トラブル)は頻尿や夜間尿に用いられる処方で、2019年ごろから急拡大し、2020年からは3位の座をキープし、成長株だ。4位の『辛夷清肺湯』(しんいせいはいとう:鼻炎)で蓄膿症に用いられる処方であり、5位の『芍薬甘草湯』(痛み止め、足のつり)は漢方薬がもつユニークな効能・効果が評価されたものと考えられる。
注目される「伸び率」を見ると、『麦門冬湯』(ばくもんどうとう:から咳)が最も大きく、コロナに罹患する人が増え、一気に需要が伸びた。第2位は『八味地黄丸』(頻尿、夜間尿)、3位は『苓桂朮甘湯』(りょうけいじゅつかんとう:めまい、立ちくらみ)、4位は女性に代表的に処方される『当帰芍薬散』(とうきしゃくやくさん:冷え、めまい)、5位は『五苓散』(頭痛、気象病)と続く。
西村部長は「めまいや気象病など今まで見られなかった新しい疾患ニーズが2022は台頭したという状況でございました」と語った。
一方で、軒並みダウンしたのは肥満系の『大柴胡湯』(だいさいことう)と『防風通聖散』で、2021年度に拡大した反動などが考えられるという。
■2022年のトレンドキーワードは?
西村部長は、2022年度のトレンドキーワードとして、次の3つを挙げた。
① 気象病
第一のトレンドは、「気象病」だ。
西村部長は、気象病に注目する理由として「気圧の変化に起因する不調ということで、実は、2013年ごろからインターネットの検索が拡大している傾向にございます。そして、直近2年では、この検索が急拡大したという背景がございます」と述べた。こうした検索行動で、気象病が漢方薬で改善されることが認知されたことにより、一気にマーケットが急拡大したという。
さらに西村部長は、「店頭に行きますと、「気圧頭痛」であったり、「低気圧頭痛」であったり、「低気圧コーナー」といった気象関連の売り場がつくられ、漢方薬がその中心的な扱いとなった、鎮座していたと認識しております」との現状認識を示した。
関連する処方としては、伸び率第3位の『苓桂朮甘湯』や第5位の『五苓散』が大幅に伸びたことが確認できる(図)。
② 夜間尿・頻尿
第二のトレンドは、「夜間尿と頻尿」だ。
この代表的な処方は『八味地黄丸』で、2019年以降、継続して伸びている(図)。
西村部長は、この拡大要因として、「夜間尿に八味地黄丸が効く、という認知が広がり、市場が拡大したものと考えています」との分析を示した。特に60代から70代を中心に購入指数も高まっており、今後高齢化社会においてニーズはますます拡大していくものと期待される。
③ 女性の悩み
第三のトレンドは、「女性の悩み」だ。
西村部長は、「人口減少・少子高齢化を前提とし、女性の社会進出が活発化している状況にあります。2012年を機に女性の社会進出は拡大し、直近の2021年にはですね、共働き世帯が専業世帯を上回るという傾向にあり、女性の社会進出が背景にあると認識しております」と、注目する理由を述べた。
労働力の中心である20代後半から40代は、月経や更年期など、女性特有の疾患や症状が多く見られる年齢でもある。また、2年ほど前から「フェムテック」というキーワードが広く周知されるようになり、「女性の生きやすさ」について、漢方薬に対する期待が高まりつつある。
実際、女性に適用できる漢方薬は多く、西村部長によれば、「婦人科疾患における漢方薬の成長率は2022年度に二桁以上伸びている」という。クラシエとしては来年以降ますます「フェムテック」がキーワードになり、漢方薬への関心が高まっていくとの期待を示した。
■どうなる? 2023年の漢方トレンド
最後に、草柳社長が再登壇し、漢方が役立てるメガトレンドとして、「超高齢化」、「ストレス社会」、「女性の社会進出」、「コロナ後遺症」の4つを挙げ、「ストレス社会」と「コロナ後遺症」について分析を述べた。
① 2023年度は「ストレスと漢方薬」に引き続き注目!
草柳社長によれば、ストレスを最も受ける環境としては「仕事内容・労働環境」がトップに来るという。そして3位に「職場の人間関係」が入ることにも注目。仕事の仕方が変わり、コミュニケーションも変わる中で、引き続きストレスを受ける状況は続くと予測した。
過度なストレスは身体的・心理的に多様な症状を引き起こす。ストレスを感じると落ち込むタイプ、イライラして攻撃的になるタイプは、同等の割合で存在するという。さらには両方の状況に陥る人もいる。
一人ひとりが生きやすいWell-beingな社会を実現するためにも、西洋薬では対応しにくい多様な症状をカバーできる漢方薬に期待が高まっているようだ。
② 新たに「ウィズコロナと漢方薬」にも注目!
2020年から始まったコロナ禍においては、20代から30代の漢方薬の購入が目につく。単に治療目的ではなく、「免疫を上げたい」というニーズがあると分析される。こうした情報はネットで流布されており、若年層により購入されるという特徴が現れた。
さらにコロナ後遺症については罹患後症状が幅広く、倦怠感、頭痛、咳、筋肉痛など肉体的なものから、不安障害、気分障害など精神的なものまであり、時間が経過しても改善が見られないケースがある。この後遺症がなぜ生じるのかについては、世界や日本の研究機関でも明確にはわかっていないという。無症状であっても2割の人に後遺症が見られ、症状も起き上がれない重度から軽度まで様々だ。
草柳社長は、「いくつかの症状においては漢方が対処できる分野もあるため、来年以降、一般用に限らず医療用のほうもお医者様の判断によっては漢方薬がコロナ後遺症の対処に用いられるケースも増えてくるだろう」との認識を示した。
■カスタマイズとデジタルで、一人ひとりに漢方薬を届ける
漢方薬は、カスタマイズ=「個を診る」というのが根本的な考え方だという。
その根底には「四診」という考え方がある。
「望診」=視覚によって観察する
「聞診」=聴覚・視覚によって観察する
「問診」=対話によって情報を把握する
「切診」=直接手を当てて診断する
草柳社長は「多分そのような温故知新のような世界と、これからのAIやDXということが組み合わさることで、より一人ひとりの患者様が健康のために漢方薬をですね、チョイスをしやすい、そういう時代が来るのではないかと私どもは願っていますし、またそのための努力をしていきたいというふうに考えています。」と抱負を述べた。
クラシエでは、「漢方薬が分かりにくい」というメディアの声に応えて、年に3~4回、メディア向けのセミナーを開催している。今後もこうした機会を設け、漢方薬の有用性やトレンドを伝えていきたいという。草柳社長は、「来年度も、患者様が健やかな明日を過ごせるように、漢方薬をしっかり提供してまいりたい」と締めくくった。
先の見えない不安定な現代では、ストレスとは縁が切れない。さらに現状ではコロナへの不安もある。現代人がさらされる「疲れやすい、体がだるい、気力が湧かない」といった全身症状への対応から、「コロナへの免疫を高めたい」、「咳を止めたい」、「肥満を防ぎたい」といった多岐にわたる要望にまで応えようとするのが漢方薬の世界だ。
漢方薬について知ることが、私たちの生活をより健やかなものに導いてくれるのかもしれない。
テクニカルライター 坂本知枝美
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