勝算あり!?日本進出の中国ゲーム大手「KONGZHONG/空中网」のTGSブースで本気の覚悟を聞いてきた!


先日「日本と中国の橋渡しとなれ!中国のゲーム大手「KONGZHONG/空中网」が日本進出しTGS出展」というニュースで、中国でPCやモバイル向けオンラインゲームを展開する「KONGZHONG/空中网」が日本に進出してきたことをお伝えした。

そのニュースをお伝えした際に「この時期になって日本市場に参入してくる意味はあるのか?」「それほど大きくない日本市場よりも規模的に大きなEUや北米への拡大を狙ったほうがいいのでは?」という疑問が出てきた。

そこで「KONGZHONG JP(コンゾン・ジャパン)」にコンタクトを取り、直接話しを聞きたいと取材をお願いしたところ、「東京ゲームショウ2014」(以下、TGS)のビジネスデイ初日(9月18日)に本家中国KONGZHONGのナンバー2である副総裁と6月に設立されたばかりの日本法人「KONGZHONG JP」代表および執行役員とインタビューのセッティングをしてもらえることになった。ということで東京ゲームショウでの出展ブースの様子などを交えて紹介したいと思う。

■ビジネスデイ初日ながら人の出入りの多いTGSコンゾンブース
今回のTGS、期間は9月18日~21日の4日間となっており、そのうちの2日間がビジネスデイとなっている。商談がメインで一般入場のない分、盛り上がり方が異なるが、KONGZHONGのブースに足を止めパンフレットを入手していたり、説明員の話に熱心に耳を傾けていたり、という人がこちらの予想に反して多かったというのが率直な感想だ。

常に何人かの人が足を止めてはブース内の説明パネルを熱心に見ていた。

常に何人かの人が足を止めてはブース内の説明パネルを熱心に見ていた。

中には説明員の話を熱心に聞く人の姿も・・・。

中には説明員の話を熱心に聞く人の姿も・・・。

■利益を出し続ける超優良企業
まずKONGZHONGについておさらいしてみる。同社は、中国でトップクラスのゲーム会社である。事業の中心はPCおよびモバイル向けのオンラインゲーム開発と運営だ。中国では、PCオンラインゲーム、スマートフォンオンラインゲーム、モバイル関連サービスの3本を主軸に事業を展開している。

2002年の創業以来、急成長を続け、設立からわずか2年後の2004年に米ナスダック(NASDAQ KZ)への上場を果たしている。2014年4~6月の営業収入が5787万ドル(約60億6593万円。前年同期比32.8%増)。

■KONGZHONG日本進出の目的とは?
日本において何らかのゲームで遊んでいる人の総数は全人口のおよそ1/4、3000万人程度であるとされている。中でもPCやスマートフォンを経由したソーシャルゲームをプレイしたことのある人となると、およそその半分、1500万人程度になる。

KONGZHONGの事業の柱、PCオンラインゲーム、スマートフォンオンラインゲーム、モバイル関連サービスを日本で展開するとした場合、1500万人を同業他社と獲り合うことになるわけだ。もちろんゲームは複数プレイできるので、1500万人が2タイトルをプレイしていれば実質3000万人ということにもなるが、中国や北米、EU圏と比較しても、日本市場はそう大きな市場であるとは言えないだろう。

KONGZHONGの中国における主要サービス

KONGZHONGの中国における主要サービス

さらに、日本にはすでにゲームメーカーが多数存在しており、ハンゲームやネクソンといった韓国資本などの外資系のオンラインゲームメーカーも含めると、かなりの数の企業がひしめき合っている。そんな市場にあえて参入してくる意味はあるのか? また勝算はあるのか? といった疑問を直接ぶつけてみた。

インタビューに応じてくれたのは、中国本家KONGZHONGの副総裁(Vice President)である张 涛(Tao Zhang、張)氏、そして日本法人KONGZHONG JP(コンゾン・ジャパン)の代表取締役である楊 彬(Bin Yang)氏、そして執行役員の木村 優(きむら まさる)氏の3名である。

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写真中央:KONGZHONG副総裁(Vice President)张 涛(Tao Zhang)氏
写真左:日本法人KONGZHONG JP代表取締役 楊 彬(Bin Yang)氏
写真右:日本法人KONGZHONG JP執行役員木村 優(きむら まさる)氏

■条件的に良いと判断した日本市場への参入
先述したようにゲームメーカーが群雄割拠する日本市場への参入において勝算はあるのか? どうして日本なのか? といった疑問を直接、副総裁の张 涛(張 涛、以下、張氏)にぶつけてみた。難しい内容が返ってくるかと思いきや、実にシンプルな答えが返ってきた。

「弊社のオンラインゲームのラインアップに三国志をテーマにしたゲームがいくつかあります。また、中国の戦国時代をモチーフにしたゲームもあります。三国志や中国の戦国時代は欧米では認知度が高くない。対して日本では、誰でもが知っているほどポピュラーです。そうした点から、日本展開という自然な発想が出てきました」と張氏。

さらに張氏は「中国と日本は、極めて近い国であること、そしてお互いに漢字文化を持っていること。さらに、皆さんもご存知のように前漢(紀元前200年~)の時代から中国と日本は長期交流を続けて来ています。そうした長い歴史からも、KONGZHONGの日本参入は当然だと思っています」と続けた。

KONGZHONG副総裁 张 涛氏

KONGZHONG副総裁 张 涛氏

要はKONGZHONGが日本市場に参入するための条件が、北米やEU圏への展開よりも有利であると判断したということである。“三国志”という日本市場に持ってきて勝負できるメジャータイトルがあることが参入理由の1つというわけだ。日本参入の理由は理解できた。だからといって勝算はあるのだろうか? これについては、直接の実働部隊となる日本法人の代表取締役である楊氏に聞いた。

KONGZHONG JP代表取締役 楊 彬氏

KONGZHONG JP代表取締役 楊 彬氏

■日本法人は日本らしさを押し出して行く
まず楊氏より、KONGZHONG JPとして日本でどう展開していくのか? 勝算はあるのか? といったことに関しての質問に答える前に「自分はこれまで日本に長く暮らし日本の習慣や文化、そして気質というものを理解している。日本に骨をうずめるくらいの気持ちでいる」と、かなりの覚悟でKONGZHONG JPの代表取締役を引き受けたと説明があった。

IT系(ゲーム系含む)の企業経営では「ある程度会社を大きくしたら上場して売り抜けて大金持ちになって手を引いて、あとはのんびり過ごそう」と一攫千金を狙うという風潮があるが、楊氏はそうした経営者とは異なるタイプの経営者である。

楊氏いわく「日本法人KONGZHONG JPは、中国KONGZHONG本体から単なる伝令役ということでは決してなく、日本に根付いた経営を行うのが大前提である」と言う。「もちろん同じビジョンを掲げて、それを追及していく部分もある。しかし、中国と日本で、それぞれ異なる部分は、しっかりと分けて考える」(楊氏)。

「例えば、外資系のゲーム会社は日本法人と言っても管理職全員がその国の人間だけで占められていて会議もメールも日本語がよく通じないということがあるが、KONGZHONG JPは日本の会社です。だから日本語で仕事ができる。日本の人たちに働いてもらう」と楊氏は日本語で言いきった。

この楊氏、日本語が非常に堪能で、コミュニケーションを取るのにまったく問題を感じない。そして表現・発音を含めて、非常にきれいな日本語を話す。もちろん中国語は堪能なので、中国本体と日本法人の間で言葉による行き違いが発生するということは、彼が間に入っていることで起きにくいであろうということは容易に理解できた。

KONGZHONG JP執行役員木村 優氏

KONGZHONG JP執行役員木村 優氏

また、執行役員の木村さんによると「楊氏は日本人の微妙な気持ちの揺らぎなどを理解してくれる。たとえば中国の人が自然に考えること、日本の人が同じ状況で考えるであろうこと。この2つを理解できる人物である」と説明があった。

楊氏は「中国からの連絡事項を私が受けて、日本の人にわかりやすいように噛み砕いて説明をする。逆に日本から吸い上げたことは、私のところで中国の人にわかりやすいように変換されて中国に伝える」と言葉の壁が問題にならないというのである。

ちなみに、このインタビューでは張氏への中国語への通訳は、楊氏がすべて行ってくれたのだが非常にスムースに会話ができたことでも、楊氏の言っていることにウソはないと実感できた。

副総裁から日本法人への希望はないかを聞いてみると張氏は「日本市場の中で中国系の同業他社(百度など)の中でトップ3を取ること。中国製ゲームが諸外国と比べても劣らない素晴らしいタイトルが多数あることを多くの人に知ってもらうこと」と楊氏の顔を見ながら答えていた。

KONGZHONG JPが日本市場で行う展開

KONGZHONG JPが日本市場で行う展開

■中国進出を狙う日本企業へのパートナーとしてのKONGZHONG JP
今回の日本市場参入は、KONGZHONGが日本に入ってくるというだけでなく、日本のゲームメーカーが中国市場に打って出ることにつなげることも目的であることは、先日のニュースで紹介した通りだ。

人口約13億と言う中国におけるゲームのプレイ人口は日本の比ではない。PCゲームおよびスマートフォン版ゲームも含めて日本のゲームメーカーにとって中国進出は魅力的な市場である。なにしろ2013年の中国スマートフォン向けゲーム市場の実績が2,100億円と前年比250%もの急成長を遂げており、今後もさらに発展することが見込まれている。

ただし、中国市場参入となると気になるのがローカライズやカルチャライズといった中国向けへのカスタマイズである。これがうまくいかないことには、日本で大ヒットを飛ばしたゲームであっても、人気が出るとは限らない。

その辺のノウハウは、中国で実際にサービスを行っている企業が持っているものだ。まったくのゼロから中国市場に参入するというのは、かなり無謀である。そこでKONGZHONG JPが、日本企業の中国進出の手伝いをするというのも日本参入の大きな理由である。

「1500万人で頭打ちになってしまう日本市場に対し、中国市場は、もっと伸びしろがあります。魅力的な市場ではあるけれど言葉や文化の違いを乗り越えて参入するにはハードルが高いと感じているメーカーさんのお手伝いをしたい」と木村氏。

「さらに、日本のアニメは世界的に有名です。アニメの版権問題をクリアにして日本企業にきちんとお金が落ちる形にする。中国におけるIP(Intellectual Property Right=知的財産権)管理事業、いわゆる海賊版撲滅といった点も、重要になってくると思います」(木村氏)。

楊氏は「KONGZHONG JPは、日本ではゲームライセンス(ローカライズ、カルチャライズ)、IPライセンス、共同開発の3本を柱に事業展開を行います。この3つを2~3年以内に収益を上げることができる形にまで持って行く。まずは第一段階としてそこを目指す」と当面の目標を説明してくれた。

なお、すでに国内大手のサイバーエージェントとのパートナー締結および開発が進んでいるとのことだ。その第一弾としてサイバーエージェントが持つ人気のスマートフォンゲーム「ウチの姫さまがいちばんカワイイ」(国内200万ダウンロード達成)の中国向けローカライズを行っている最中で、年内にKONGZHONGを通じて中国国内での配信を開始するという。

「ウチの姫さまがいちばんカワイイ」(サイバーエージェント)

「ウチの姫さまがいちばんカワイイ」(サイバーエージェント)

さて、話は尽きないがこの辺でまとめておきたい。日本市場に参入してきたKONGZHONG JPの当面の展開であるが、単に日本市場で自社ゲームを普及して収益を上げるということだけが日本参入のメインの目的ではないということが一点。次に自社タイトルの日本語ローカライズを行い日本でKONGZHONGを認知してもらいパートナー企業を増やす。そうやって獲得したパートナー企業のタイトルを中国向けにローカライズ&カルチャライズし、中国展開のサポートを行うことが二点目。

そして海賊版やコピー商品の氾濫する中国において正しくIP管理されたアニメやキャラクターグッズの展開を行い、権利者に利益を届けるということが三点目となる。KONGZHONG JPが日本市場で一定の位置に着くことができるかは、この三点を柱として日本でパートナー企業を求めアライアンスを締結し、増やしていくことができるかにかかっていると言えるだろう。中国進出に興味のあるゲーム会社(PCでもスマホでも)の担当者は、まずコンタクトを取ってみることをおススメする。

KONGZHONG/空中网

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