個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第三十六回


■はじめに
今回はAdobeのページレイアウトソフト、InDesignのEPUB書き出し機能について触れてみようと思います。

今回InDesignのEPUB書き出し機能を扱おうと思ったのは、1つには最近InDesign CS6のEPUB書き出し機能に関するトレーニングを担当させていただいたこと、もう1つは最近CC2014がアップデートしてEPUB書き出し機能が強化されたことがキッカケです。

ということで、今回は少し前のバージョンのCS6と最新バージョンのCC2014.1(以後「CC2014」)の違いなども少し触れていきます。

とはいうものの、正直なところ私InDesignについては全く詳しくありません。その辺り不備がございましたらご容赦ください。

■基本的な部分について
個人的に、シンプルながら評価したい点は、メタデータの指定が1ヵ所で行えるようになった点です。

CS6では、書籍タイトルや著者名などは[ファイル]メニュー→[ファイル情報]で[ファイル情報]パネルを開いて指定し、出版社や書籍IDなどは書き出し時の[EPUB書き出しオプション]パネルで指定しました。

CS6 [ファイル情報]パネル

CS6 [ファイル情報]パネル

CS6 [EPUB書き出しオプション]パネル

CS6 [EPUB書き出しオプション]パネル

CC2014では[EPUB書き出しオプション]パネルで全て指定できるようになっています。

CC2014 [EPUB書き出しオプション]パネル

CC2014 [EPUB書き出しオプション]パネル

次に評価したいのは、EpubCheckに通るようになった点です。

EpubCheckというのは、EPUBファイルがEPUB仕様に適合しているかどうかをチェックするためのアプリです。

CS6で書き出したEPUBは、EPUB2用の目次ファイルであるNCXファイルに問題があり、EpubCheckでのテストでエラーが出ていましたが、CC2014ではこの点が修正されて、エラーが出なくなりました。

ただ改めて考えると、エラーが出なくなったというのは、今までマイナスだったのが0になっただけ、とも言えるので「普通になった点」と言った方がいいかもしれません。

さて、基本的な部分での残念な点は、日本語のファイル名に関する部分です。

例えば、inddファイルの名前はEPUB化したときの、コンテンツ部分のXHTMLのファイル名として使われます。つまり、inddファイルの名前に日本語を使っていると、EPUB内にも日本語名のファイルが含まれることになります。

日本語のファイル名もEPUB仕様では許容されていますが、実際の運用上は日本語名のファイルが含まれていない方が何かと安心です。

また、画像をリンクしている場合、画像ファイルが日本語名の場合も同様で、日本語名の画像ファイルがEPUB内に含まれることになります。

他に、言語の指定(opfファイル内のdc:languageの指定)が「ja」ではなく「ja-JP」となっている点も残念です。

「ja-JP」になっていると、リーダーアプリが日本語の書籍であることを適切に理解できない場合があります。

例えば、iOSのiBooksでは「ja-JP」と指定されている場合、表示フォントの候補が欧文フォントになってしまいます。

言語指定が「ja-JP」の場合

言語指定が「ja-JP」の場合

これを「ja」に修正すると、適切に日本語の書籍であると認識され、表示フォントの候補が日本語フォントになります。

言語指定が「ja」の場合

言語指定が「ja」の場合

とりあえず、基本的な部分についてはこのぐらいにしておきましょう。

■応用的な部分について
何を以て「応用的」とするかという問題もありそうですが、単に私の主観です。

さて、評価ポイントとしてまず挙げたいのは、CC2014で固定レイアウトに対応したことです。

固定レイアウトとして書き出すには書き出し形式を「EPUB(固定レイアウト)」に設定します。

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固定レイアウトの[EPUB書き出しオプション]パネルでは、2HTMLで見開きを構成する形の他、1HTMLで見開きを構成する紙芝居方式の指定も行えます([一般]カテゴリの[スプレッドコントロール])。

ebook0070

見た目の再現度も高く、新鮮な驚きを感じました。

InDesign上の表示

InDesign上の表示

iBooksでの表示

iBooksでの表示

固定レイアウトについては、CC2014.1のアップデートで[アニメーション]パネルを使ってエフェクトアニメーションの追加なども行えるようになりました。

例えば、ページを表示したときに画像をフェードインで表示させることができます。

ただし、もちろんこれはリーダーアプリ側の対応が必要です。

[アニメーション]パネル

[アニメーション]パネル

設定したアニメーションは、InDesign内で[EPUBインタラクティブプレビュー]パネルで状態を確認できます。

[EPUBインタラクティブプレビュー]パネル

[EPUBインタラクティブプレビュー]パネル

後は、epub:typeプロパティを設定した脚注を設定することもできるようになっています。
epub:typeプロパティを設定した脚注は、iBooksなど一部のリーダーアプリでは、脚注の内容がフキダシのようなポップアップで表示され、他のページに切り替える必要がありません。

iBooksの脚注ポップアップ

iBooksの脚注ポップアップ

スペースの関係もあるのでここまでにしておきますが、固定レイアウトについてはなかなかいい感触を持ちました。

■最後に
CC2014の固定レイアウトの日本語対応について、次のような既知の問題がありました。

・縦中横や割り注が失われる。
・縦組で入力した文字が 90 度回転する。
・縦組テキストの各行末にハイフン「-」が追加される。
・縦組テキストの脚注位置にずれが生じる。

InDesingヘルプより

CC2014.1のアップデートでは、これらの問題の内、「縦横中が失われる」以外の問題は解消されたとのことです。

・InDesign CC 2014.1 リリース:固定レイアウト EPUB の日本語版対応について

InDesignのEPUB書き出し機能がEPUB3に対応したのは、たしかCS5.5だったと思います。

バージョンを重ねるたびにだんだん良くなっていますが、個人的には書き出されるCSSスタイルの制御をもう少し柔軟に行えるといいな、と思っています。

次回は私の個人的な都合により、お休みさせていただきます。ということで、次は11月に入ってからとなります。大分年の瀬が近づいてきますね。

風邪などひかないようお気を付け下さい。

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■著者プロフィール
林 拓也(はやし たくや)
テクニカルライター/トレーニングインストラクター/オーサリングエンジニア
Twitter:@HapHands
Facebook:https://www.facebook.com/takuya.hayashi

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