- 2018-9-19
- カルチャー
- 虹色のダイヤモンドも夢じゃない! 日本発の「ラボグロウンダイヤモンド」を世界へ はコメントを受け付けていません
「ピュアダイヤモンド」新事業説明会 |
つい先日、ピュアダイヤモンドファームシンガポールが都内某所にて「ピュアダイヤモンド」新事業説明会を開催した。同説明会では、天然ダイヤモンドと全く同じ組成を持つ人工ダイヤモンド「ラボグロウンダイヤモンド」についての発表と、最新のIT技術であるブロックチェーンを使ったビジネスモデルについての説明があった。
■ダイヤモンド市場に大きな変革をもたらす可能性を持つ「ラボグロウンダイヤモンド」
新規事業説明会は、先述した「ラボグロウンダイヤモンド」の公式ムービーの公開から始まった。ラボグロウンダイヤモンドとは、研究所で生成されたダイヤモンドのことだ。天然ダイヤモンドが生成される地球の地下深くの環境を研究所で再現して、天然ダイヤモンドと同じ組成のダイヤモンドを作り出すことに成功したという。
挨拶に立ったピュアダイヤモンドファームシンガポールの代表取締役クリス・ヤン氏は「全世界でダイヤモンドの埋蔵量や産出量が減少傾向にある中でも、顧客は有名ブランドの高価なダイヤモンドを購入する傾向があります。ダイヤモンドの価値は、鑑定会社を通して保証されており、好きな大きさや色のダイヤモンドを安価に入手することは非常に難しくなってきているのです。天然資源に頼りすぎているのが現状ですが、こうしたダイヤモンド市場に変革をもたらすのが、今回ご紹介するラボグロウンダイヤモンドなのです。」と語った。
■ダイヤの価値をブロックチェーンで保証
ヤン社長によれば、ラボグロウンダイヤモンドでは、同ダイヤの価値はブロックチェーンの技術で保証するという。仮想コインは現物の貨幣が存在せずに相場が上下するが、ラボグロウンダイヤモンドでは、実際にダイヤが存在している点が大きく異なっている。
ラボグロウンダイヤモンドであれば、好きな大きさや色のダイヤモンドを作れるうえ、限りのある天然ダイヤモンドを消費せずに済む。地球環境にも優しい、まさにこれから注目を集めるダイヤモンドというわけだ。
ピュアダイヤモンドファームシンガポール代表取締役クリス・ヤン氏 |
続いてピュアダイヤモンド株式会社代表取締役社長である石田茂之氏が登壇。ダイヤモンドビジネスの日本における歴史とマーケットについて話した。
ダイヤモンドの輸入が日本で自由化されたのは1960年だという。「給料3か月分の婚約指輪を贈る」というプロモーションが始まったのは1967年からで、そんなに古い歴史ではないそうだ。とはいえ50年は過ぎている。ダイヤモンド全体の歴史から見れば、50年は古くないというわけだ。
その石田社長はダイヤモンドの輸入業者の家に生まれ、業界では現在最年長になるという。石田社長は現在、アントワープワールドダイヤモンドセンター(AWC)の大使を務めている。いわば、日本を代表するダイヤモンドの専門家というわけだ。
現在ダイヤモンド取引の中心地はベルギーのアントワープだという。
・ダイヤモンド原石の約80%
・研磨済みダイヤモンドの約50%
は同地を通って市場に流通していくそうだ。
ダイヤモンド市場は1990年代から、2010年には約半分ほどになってしまったようだ。そして昨年、同社は2018年9月よりグロウンダイヤモンドを扱うことを明らかにした。
「いろいろな考え方がありますが、ラボグロウンダイヤモンドを認めなければ、ダイヤモンドの市場が成り立って行かないというのが、最終的な答えだと思います」と石田社長。
日本のダイヤモンド市場の規模は大きく、6千億円規模で伸びているという。ブライダル市場は、ダイヤモンド業界にとって大きなマーケットだが、高級ガラス製品のようにダイヤモンドと似た製品も売れている。「どこまで本物にこだわるのか」というのは、今後も考えて行かなければならないことだと石田社長はいうのだ。
ピュアダイヤモンド株式会社代表取締役社長石田茂之氏 |
ダイヤモンドの価値は、
・カラット
・カラー
・カット
・クラリティ
という4つの要素で決まり、これを4Cと言う。
石田社長はカットを計測する機械を日本のすべての鑑定機関に納めており、その機械がなければ、鑑定書を発行できないそうだ。
ダイヤモンドは「Triple Excellent+H&A」のカッティングが2009年に誕生して以来、新しいことがないため、価格競争が止まってしまい、業界的には非常に大きな問題となっていたと石田社長。
「ラボグロウンダイヤモンドは、天然の中でたった2%しかないピュアな炭素だけのマテリアルで出来上がっています。不純物がないので、もの凄く綺麗です。今後、ラボグロウンダイヤモンドが市場で大きくなっていく、ひとつの要素だと思っています。」(石田社長)
■ラボグロウンダイヤモンドの魅力
ラボグロウンダイヤモンドは、
・綺麗
・リーズナブルなプライス
であることから、いろいろな場所に使われる可能性を秘めている。
石田社長によると、天然ダイヤモンドでダイヤモンドパウダー入りの入浴剤を作ったところ、想像以上に売れたそうだ。
「アイデア次第で、ハイエンドなものと日常消費財を組み合わせた大きな市場拡大というのも、今後は考えていけるのではないかと思います。もっと身近になるラボグロウンダイヤモンドによって、いろいろなアイデアが生まれてくるのではないか」(石田社長)。
■日本ではこれから市場に出回る
アメリカの小売店では、ラボグロウンダイヤモンドは普通の小売店ですでに購入できるが、日本ではいまだに販売されていない。そういう意味で、デパートを含めて、すべての小売店がラボグロウンダイヤモンドの市場となる可能性を秘めている。
ダイヤモンドパウダー入りの入浴剤(ちょっと欲しいかも・・・) |
ピュアダイヤモンド株式会社代表取締役/プロデューサーTakuya Ito氏より「ラボグロウンダイヤモンド」についてのさらなる説明があった。
世界中に流通しているダイヤモンドのほとんどは、サリン社の測定器を利用しており、同社がなければ、ダイヤモンド市場が成り立たないとまで言われているという。同氏は同社の日本マネージャーとして仕事をしていたことから、ダイヤモンド鑑定の世界では名を知られている。
同氏は、
・天然ダイヤモンド
・ラボグロウンダイヤモンド
・キュービックジルコニア(CZ)
・モアサナイト(Moissanite)
を例にとり、ラボグロウンダイヤモンドは天然ダイヤモンドとまったく同じであることを強調した。
「ラボグロウンダイヤモンドは、正真正銘、本物のダイヤモンドとまったく同じものです。」(Takuya Ito氏)
ピュアダイヤモンド株式会社代表取締役/プロデューサーTakuya Ito氏 |
ラボグロウンダイヤモンドの製造方法としては、
・CVD法
・HPHT法
の2種類がある。前者はガスを使う比較的新しい方法で、後者は高温高圧を掛ける方法だ。
後者は昔から研究されており、5000気圧の圧力を掛ける。
実際にはできないが、エッフェル塔をひっくり返して指先にのせると、圧力はだいたい5000気圧だという。どれほど高い圧力を掛けてダイヤモンドが作られるのかがわかるだろう。日本のラボグロウンダイヤモンドの技術は世界一と言われており、工業用ダイヤモンドやダイヤモンドワイヤーのほかに、スペースシャトルのオプティカルウインドウにも使われていたほどだ。
天然ダイヤモンドは、地下150~200kmという非常に深い場所で長い年月を掛けて成長する。炭素の結晶として成長するが、成長の過程で他の物質も取り込んでしまう。ほとんどの天然ダイヤモンドは窒素を取り込んだものだが、極稀に不純物を含まない炭素だけの天然ダイヤモンドがある。
後者は産出量のうちわずか2%以下で、オークションではプレミアが付いて高値になるほどの価値がある。それに対してラボグロウンダイヤモンドは、研究所で作っているので、窒素を入れずに作ることができる。
「ラボグロウンダイヤモンドの大きな特徴としては、ピュアなダイヤモンドとして、すべてが成長するということです。天然ダイヤモンドと比較すると、物凄く大きなアドバンテージになると思います」(Takuya Ito氏)
Takuya Ito氏によると、天然ダイヤモンドの中には、非人道的な扱いで採掘を行ったり、自然破壊などがあったりして、そうしたことが大きな社会問題となっている。そういった問題がない点は、ラボグロウンダイヤモンドの大きなアドバンテージにもなる。
ラボグロウンダイヤモンドの組成は天然ダイヤモンドとまったく同じだ |
ピュアダイヤモンドラボ株式会社代表取締役社長/主席研究員の石塚宏彰氏は「日本の養殖ダイヤモンドテクノロジー」について説明した。
石塚氏は神奈川大学に在学していた時代から、ダイヤモンドの生成法について研究していたという。主に工業用の人工ダイヤモンドについてだったが、縁あって現職に至る。
「理想的な天然ダイヤモンドに近いダイヤモンドが、ラボグロウンでも出来る様になった」(石塚氏)
同氏はダイヤモンドの透過率のグラフを示し、ラボグロウンダイヤモンドの品質の高さを強調した。
前述のようにラボグロウンダイヤモンドの生成法としては、
・HPHT法
・CVD法
の2種類があるわけだが、それぞれの生成法で、様々なノウハウがある。
たとえば、HPHT法では、大きなダイヤモンドを生成するうえで、種(Diamond sees)を置くが、その種の置き方や、どういうものを使うのか、というノウハウがある。技術的にも、なかなか難しいもので、そこが企業の技術にもなる。一般的には5~6ギガパスカルの圧力を掛けて温度管理をすると、ダイヤモンドが成長する。
ただし、ダイヤモンドの合成領域を外れてしまうと、ダイヤモンドではなく、グラファイトになってしまう。グラファイトというのは、シャーペンの芯と同じ物質だそうで、ラボグロウンダイヤモンドでは高温高圧のコントロールが非常に難しいそうだ。メレと言われる小さいサイズのダイヤモンドを作るのに適している。
一方、CVD法はガスでダイヤモンドを成長させる方法だ。炭素を含んだガスを放出させた後、プラズマ状態にしてガスを分解して、化合物がイオン化されることで、ダイヤモンドが生成されるというものだ。世界的に主流の方法であり、0.5~1カラット以上の大きいサイズのダイヤモンドを作るのに適している。
「ピュアダイヤモンドラボのホームページにも書いてあるんですけれども、マルチカラーのダイヤモンドのように、天然にはないダイヤモンドをラボで作っていけたらよいなと思っています。原理的には十分に可能かと思っています。たとえば、レインボーカラー。7色のダイヤモンドは、天然には絶対に存在しないので、皆さん、ここに価値を見出されるのではないかなと思います。天然にはなく、我々の手だからこそ、出来るダイヤモンドをやっていきたいと考えています。」(石塚社長)
ピュアダイヤモンドラボ株式会社代表取締役社長/主席研究員石塚宏彰氏 |
ピュアダイヤモンドラボ株式会社最高技術責任者河崎純真氏は、「ピュアダイヤモンドブロックチェーン」について説明した。
同氏は自社で仮想通貨やブロックチェーン、アプリケーションなどの開発を行っている。最近では、今年2月に起こったコインチェック事件で見えた仮想通貨を追跡する有志のチームに参加して、その内容はNHKスペシャル「仮想通貨ウォーズ~盗まれた580億円を追え!~」にも取り上げられたそうだ。いわばブロックチェーン技術のスペシャリストなわけである。
今回、ラボグロウンダイヤモンドにブロックチェーンの技術を組み込むために、同氏に白羽の矢が立ったのも理解できる。
「話しを聞いてみると、ラボグロウンダイヤモンドとブロックチェーンの相性は非常に良いです。今の状況でブロックチェーンを活用した流れで、ラボグロウンダイヤモンドの市場を展開し、新たなマーケットを作っていくのは、今しかできないし、今やるべきことだと感じました。」(河崎氏)
同氏によると、ブロックチェーンの技術は、トレーサビリティ(追跡可能性)との親和性が高いという。天然ダイヤモンドの中には、問題を抱えて流通しているものがある。これからラボグロウンダイヤモンドの市場を作る際、ブロックチェーンでダイヤモンドをひとつひとつ管理して市場に流通されることで、今までの天然ダイヤモンドとは異なるクリアで信頼性の高いルートで、流通させることが可能になるという。天然ダイヤモンドの鑑定システムのように、今まで人の手で行っていたものが、ブロックチェーンの技術によって電子化されていくというのだ。
つまり、ラボグロウンダイヤモンドを軸とした新しい流通販売網を作っていくうえで、既存のシステムを利用するのではなく、ブロックチェーン技術で独自の経済圏をゼロから作って行こうというわけだ。同時にブロックチェーンの新しい使い方として、世界にも広めて行きたいとしている。
これまでダイヤモンド市場を牛耳ってきた古い世代から、新しい市場管理の方法へ移行できるかの挑戦になるわけで、旧体制からの反発ももちろんあるだろう。
ピュアダイヤモンドラボ株式会社最高技術責任者河崎純真氏 |
ピュアダイヤモンドラボ株式会社代表取締役プロデューサー安部秀之氏は「ピュアダイヤモンドブロックチェーン」のビジネスモデルについて説明した。
同氏によれば、このモデルは「ラボグロウンダイヤモンド×ブロックチェーン×デジタルトークン」の関係でしか実現できない、まったく新しいプロジェクトであるという。ラボグロウンダイヤモンドは現実に存在しているが、それ以外はバーチャル(デジタル)なものだ。新たにラボグロウンダイヤモンドが生まれると、その情報がブロックチェーンに書き込まれる。
さらにダイヤモンドが加工されると、その情報がブロックチェーンに書き込まれる。そのダイヤモンドに、どれくらいの価値があるのか、どこで取引されたのか、というところまで、正確に記録されていくという。つまりラボグロウンダイヤモンドであれば、10年後、20年後でも、これまでの経緯をずっと辿っていくことができるわけだ。
「今までのダイヤモンドにはない価値観というのが生まれてきます。それがラボグロウンダイヤモンドとブロックチェーンで、実現することができます。」(安部社長)
「天網恢恢(てんもうかいかい)疎にして漏らさず」という老子の言葉は「天の張る網は、広くて一見目があらいようであるが、悪人を網の目から漏らすことはない。悪事を行えば必ず捕らえられ、天罰を受ける」という意味だが、ラボグロウンダイヤモンドは、ブロックチェーンによって、ダイヤモンドの誕生以降すべての記録が残っており、誰も改ざんすることができない。
盗難に遭ったとしても、それまでの履歴が残っているため、たとえ市場に出回ったとしても、即座に発見されてしまうというわけだ。
デジタルトークンだが、ピュアダイヤモンドコイン(PDC)と言うデジタルトークンだ。PDCはピュアダイヤモンドのラボグロウンダイヤモンドと交換できる唯一の物なので、同ダイヤモンドが欲しい小売店はPDCを入手する必要がある。これによって、「ラボグロウンダイヤモンド×ブロックチェーン×デジタルトークン」の循環が生まれる。
「石田社長もボクも人生をかけてやっています。天然ダイヤモンドは日本では採掘できません。でも、工場を建てれば、ダイヤモンドは人工的に採掘できます。この経済圏というのは、物凄く大きなものとなります」(安部社長)
「ラボグロウンダイヤモンドという現実の物と、PDCというデジタルの物が、ブロックチェーンで結ばれる」という、ダイヤモンド市場を大きく揺るがしそうなニュースをお伝えした。
ピュアダイヤモンドラボ株式会社代表取締役プロデューサー安部秀之氏 |
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2014-07-11