- 2026-9-16
- ITビジネス
- 補助金に採択されても事業を始められない!? Staywayが「後払いの壁」を解消する新サービス はコメントを受け付けていません
補助金に採択されたにもかかわらず、設備投資や研究開発に着手できない。その背景にあるのが、事業に必要な費用を先に支払い、後から補助金を受け取る「後払い」の仕組みだ。手元資金が限られるスタートアップにとって、採択から入金までの期間をどう乗り切るかは、成長を左右する課題となっている。
補助金支援のDXサービス「補助金クラウド」を運営する株式会社Staywayは2026年9月10日、子会社「株式会社補助金クラウドファイナンス」の設立と事業内容を発表した。補助金の申請支援で把握した事業計画や財務情報を融資審査に活用し、交付決定後、最短3営業日での融資を目指す。
発表会では、同社代表取締役の佐藤淳氏が設立の背景を説明するとともに、NOBUNAGAキャピタルビレッジ株式会社代表取締役社長の峠清孝氏と、スタートアップの資金調達をめぐる課題について議論した。
■補助金活用を阻む「3つの壁」。自身の資金調達経験が新事業の原点に
佐藤氏が挙げたのは、補助金活用を阻む「情報収集の壁」「申請の壁」「後払いの壁」という3つの課題だ。
国や自治体などが提供する補助金は数多いものの、情報の公開先も書式も統一されていない。同社によると、9,000種類以上の補助金情報が分散しており、企業はその中から自社の事業や投資計画に合う制度を探す必要がある。利用できそうな制度が見つかっても、要件の確認や事業計画書の作成など、申請には専門知識と時間が求められる。
さらに、申請が採択されても資金面の課題は残る。補助金は原則として、企業が事業費を立て替え、事業実施後に受け取る仕組みだ。同社の説明では、入金まで通常半年から1年程度を要するため、その間の資金を自己資金や借り入れで確保しなければならない。
この課題は、佐藤氏自身が経営者として直面したものでもある。2017年に創業したStaywayは、当初オンライン旅行事業を展開していた。しかし、コロナ禍で事業環境が一変。資金調達が難しくなる中、事業を支えたのが補助金だった。
公認会計士でもある佐藤氏は、自ら申請に取り組み、採択に至った。一方で、入金までのつなぎ資金を金融機関から調達する際には苦労したという。この経験から、同じ悩みを抱える企業を支えるために、補助金DX事業へと踏み出した。
現在の「補助金クラウド」は、補助金情報を一元管理し、企業のニーズに応じた制度の検索や提案を支援する。生成AIによる申請書類の作成支援と専門家による確認を組み合わせ、申請にかかる負担の軽減にも取り組む。発表資料によると、システムは80の金融機関に導入されている。
後払いの課題に対しては、これまでも、ものづくり補助金を対象とする前払いサービス「前ほじょくん」を提供してきた。交付決定後の補助金債権を譲り受ける仕組みだが、対象となる補助金が限られていた。
そこで、より幅広い資金需要に対応するために設立したのが、補助金クラウドファイナンスだ。新会社は2025年11月18日に設立され、2026年7月16日に貸金業登録を完了した。融資という形で資金を提供することで、補助金の情報収集から申請、採択後の事業実行までを一体で支える体制を整える。
■採択されても銀行が融資できない理由とは? 金融機関と補完し合う支援を目指す
続くパネルディスカッションには、十六フィナンシャルグループの投資専門会社、NOBUNAGAキャピタルビレッジの峠清孝氏が登壇した。同社はスタートアップへの投資や事業共創を通じ、地域に新たな価値やサービスを生み出す活動に取り組んでいる。
峠氏によると、補助金を活用するスタートアップは増えているという。その一方で、採択されてから実際に入金されるまでの資金確保に苦労する企業もある。
なぜ、補助金の採択が決まっていても融資が難しいのか。峠氏が説明したのは、銀行が決算書などを基に企業を評価する仕組みだ。研究開発やサービス開発への投資が先行するスタートアップは、過去の業績だけでは評価しにくい。現場に支援したいという思いがあっても、融資判断につなげられない場合があるという。
また、サービスがすでに形になり、売り上げが立っているかどうかも、銀行が実績を評価する際のポイントとなる。構想や開発の段階にある企業では、補助金の採択という材料があっても、融資のハードルが残る。
佐藤氏も、コロナ禍に補助金が採択された際、入金予定を説明しても金融機関から融資を断られた経験を紹介した。補助金を受け取る見込みと、銀行が融資できるかどうかは、必ずしも一致しないのだ。
補助金クラウドファイナンスが主な支援対象として想定するのは、こうした資金調達の難しさを抱えるスタートアップだ。佐藤氏は、銀行から十分に融資を受けられる企業については銀行の役割を尊重しつつ、従来の評価では資金が届きにくい企業を支援する考えを示した。
審査で重視するのは、補助金申請を通じて把握した事業内容や今後の投資計画だ。申請支援の段階から企業への理解を深めることで、事業の将来性を踏まえた判断と、迅速な融資につなげる。
峠氏は、銀行が融資できない場合でも、代替となる資金調達手段を紹介できることには意味があると指摘した。資金の相談を断って終わるのではなく、別の支援先につなぐことで、その後の関係も維持しやすくなる。
佐藤氏は今後、スタートアップへの認知拡大に加え、ベンチャーキャピタルなどとの連携も進める考えだ。出資、銀行融資、補助金を活用したつなぎ融資を組み合わせ、企業の成長段階に応じた資金調達を支える構想が示された。
■融資リスクをどう見極める? 初年度は年間10件程度から着実な拡大へ
質疑応答では、補助金を活用したつなぎ融資のリスクや事業拡大の方針、ほかの資金調達手段との違いについて質問が寄せられた。
融資に伴うリスクについて、佐藤氏は大きく2つを挙げた。1つは、採択された補助事業を企業が遂行できなくなるリスクだ。事業方針の変更や取り組みの中止などにより、想定していた補助金の入金につながらない可能性がある。もう1つは、融資先の企業自体が倒産するリスクだ。同社は、こうしたリスクを踏まえて金利を設定するという。
峠氏も、補助金を受け取るまで企業が事業を継続できるかに加え、資金が別の目的に使われないかなど、使途を確認する重要性に言及した。補助金の採択だけで判断するのではなく、事業の実行力と資金管理の両面を見極める必要がある。
事業規模について、佐藤氏は立ち上げ年度の目標として年間10件程度を想定していると説明した。当面は手元資金を中心に融資を実行し、実績を積み重ねながら拡大を目指す。将来的には、外部からの資金調達も選択肢として検討する考えだ。
従来の「前ほじょくん」との違いも話題となった。佐藤氏によると、従来の仕組みでは外部の金融機関が資金を負担し、Staywayが窓口を担っていた。一方、今回の事業では自社側で資金を負担するため、まずは慎重に案件を見極めながら進める方針だ。
対象の広がりも重要なポイントとなる。「前ほじょくん」はものづくり補助金に限定されていたが、補助金クラウドファイナンスは、その枠にとらわれずに支援を検討できる仕組みだ。佐藤氏は、補助金の種類が限られていた従来サービスに比べ、より幅広い需要に応えられる可能性を示した。
将来的に、つなぎ融資以外の金融サービスへ展開する可能性を問われると、佐藤氏は、申請支援を通じて得られる投資計画や決算書などのデータを総合的に分析し、支援の幅を広げる構想に言及した。ただし、金融機関と競合しない形を前提とし、まずは強みを持つ補助金分野で、入金までの資金ギャップを埋めることに注力する。
スタートアップ向け融資であるベンチャーデットとの違いについては、補助金の申請内容と将来の入金に着目している点を挙げた。事業全体の成長性を評価する資金調達手段に対し、同社は補助事業の投資計画と入金までの期間を捉え、最大1,000万円のつなぎ資金を提供する。用途と規模を絞り込むことで、既存の資金調達手段を補完する立ち位置が明確になった。
補助金の価値は、採択の通知を受け取った時点ではなく、設備の導入や研究開発が進み、事業の成果につながって初めて具体化する。今回の発表で注目したいのは、申請を支える過程で得た企業への理解を、事業を動かすための融資に結び付けた点だ。
資金調達の選択肢が増えることは、成長の機会を逃さないための支えになる。今後は、融資の速さに加え、実際にどれだけの企業が資金不足による停滞を乗り越え、事業を前進させられるかが問われる。補助金を「採択で終わらせない」仕組みとして、同社の取り組みは注目されそうだ。
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代表取締役・ITライフハック代表
ITライフハック編集長・ライター
ITライフハック副編集長・ライター
