Headline Asiaから1億円を調達!リモアが仕掛ける「推し活×睡眠」【IVS2026】

  • 2026-9-1
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好きなキャラクターから「そろそろ寝よう」と声をかけられたら、生活習慣は変わるのか。IVS2026に出展した株式会社リモアは、キャラクターIPとAI、行動データを組み合わせた行動変容プラットフォーム「キャラミクス」を開発している。Headline Asiaから1億円を調達した同社が、「推し活×睡眠」を起点に描くキャラクターインフラの構想を橋本竜代表取締役CEOに聞いた。

■「推し活×睡眠」を掲げるリモアがIVS2026に出展

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同社は、キャラクターとAI、行動データを組み合わせ、人々の習慣や意思決定を支援する行動変容プラットフォーム「キャラミクス」を開発している。

2026年6月には、ベンチャーキャピタルのHeadline Asiaから1億円を調達した。睡眠を起点に、健康、美容、学習、金融など、日常生活のさまざまな場面でキャラクターが寄り添う「キャラクターインフラ」の実現を目指している。

■キャラクターの力で人の行動を変える
リモアの代表取締役CEOを務める橋本竜氏は、長年にわたりキャラクターIPやコンテンツのプロデュースに携わってきた人物だ。

橋本氏は取材で、KADOKAWAの雑誌『ダ・ヴィンチ』の編集部や映像部門を経験した後、サイバーエージェントグループへ移り、『ウマ娘 プリティーダービー』の立ち上げに関わったと説明した。

その後、全国各地の温泉地をキャラクター化した地域活性化プロジェクト「温泉むすめ」を立ち上げ、初代総合プロデューサーを務めた。同プロジェクトを運営する株式会社エンバウンドは、2024年に株式会社ALiNKインターネットのグループに加わっている。

『ウマ娘』をきっかけにファンが競馬場や地方競馬へ足を運び、「温泉むすめ」をきっかけに全国の温泉地を訪れる。橋本氏は、こうした経験を通じ、キャラクターIPには人の感情を動かし、実際の行動へつなげる力があると感じてきたという。

「IPには行動変容を起こす力があると信じています。今度は“オタクを眠らせよう”と考えました」

橋本氏が新たなテーマとして選んだのが、睡眠だった。

■「オタクを眠らせる」――睡眠の課題にIPで向き合う
厚生労働省の「e-ヘルスネット」によると、一般成人の30~40%が何らかの不眠症状を抱えており、慢性不眠症は成人の約10%に見られるという。

また、RAND Europeが2016年に発表した研究では、日本における睡眠不足による経済損失は年間最大1,380億ドル、GDP比2.92%に達すると推計されている。睡眠不足は健康だけでなく、仕事の生産性や社会全体にも影響を及ぼす課題だ。

一方、多くの人は、アニメや漫画、ゲーム、アイドル、VTuberなどの「推し」に対して強い思いを抱き、時間やお金を使いながら継続的に応援している。

健康のために早く寝た方がよいと分かっていても、なかなか行動を変えられない。しかし、好きなキャラクターから「そろそろ寝よう」「今日はよく頑張ったね」と声をかけられれば、自然と行動を変えられるかもしれない。

この「推し活」と睡眠を掛け合わせた発想が、キャラミクスの出発点となっている。

■睡眠管理から始まる「キャラミクス」
キャラミクスは、「推しが毎日の生活に寄り添う未来」をコンセプトにしたキャラクタープロジェクトだ。

まずは睡眠を入り口に、夜は眠りを見守り、朝は起床を応援し、日中は健康や美容、学習などの習慣化を支援する。

橋本氏は取材で、『Pokémon Sleep』のように手軽に始められる睡眠管理アプリを出発点とし、睡眠計測だけで終わらないサービスへ育てていく構想を語った。

「睡眠管理アプリをスタートにしながら、最終的にはパーソナルアシスタントサービス、AIエージェントの手前のような存在にしていきたいと考えています」

キャラクターとのコミュニケーションを通じ、ユーザーが無理なく行動を継続できる状態をつくることが、キャラミクスの大きな目的だ。

プロジェクトには、『To LOVEる -とらぶる-』シリーズや『BLACK CAT』などで知られる漫画家・矢吹健太朗氏が、キャラクタープロデューサーとして参加している。

メインキャラクターとして公開されているのは、最初に生み出された「AIキャラット」のミュナと、猫と忍者の特徴を持つ与兵衛だ。

キャラクターシナリオは、『ペルソナ』シリーズなどに携わる牧野圭祐氏が担当する。キャラクター、物語、音声コンテンツとAIを組み合わせ、日常生活の中で継続的に利用される体験を設計していく。

■ユーザーを理解する1対1のパーソナルアシスタントへ
キャラミクスが目指すのは、単に睡眠時間を記録するだけのアプリではない。

同社は、キャラクターとのやり取りやID連携、生活データ、興味・関心などを組み合わせ、ユーザー一人ひとりの状況に合った提案を行う仕組みを構想している。

橋本氏は、好きなキャラクターがユーザーの過去の発言や行動、好み、スケジュールを理解したうえで、商品やサービスを提案する未来を語った。

例えば、『新世紀エヴァンゲリオン』のアスカが好きなユーザーに対し、アスカから「今日はラテを飲みなさい」と勧められたり、「あなたはこれが好きだったよね」と商品を紹介されたりするような体験だ。

「勝手に言っているのではなく、“あなたはこれが好きだよね”“あのとき好きだと言っていたよね”と、自分のことを分かった状態で教えてくれる。そうした行動体験を作りたいんです」

一般的な広告やレコメンドではなく、自分を理解してくれていると感じられるキャラクターから提案を受ける。そうすることで、習慣の継続や商品選択を後押しできるのではないかという。

リモアは、キャラミクスを単体アプリとして提供するだけでなく、SDKやAPIとして外部サービスへ組み込む計画も進めている。

美容、小売、通信、金融、EC、ウェルネスなどのサービスと連携し、さまざまな生活場面で同じキャラクターがユーザーに寄り添う環境をつくっていく。

■キャラクターがAIとの距離を縮める
橋本氏は、キャラクターが人間とAIの間に入ることで、AIに対する心理的な抵抗感を和らげられる可能性にも注目している。

無機質なAIアシスタントが誤った回答をすると、ユーザーはストレスを感じやすい。一方、愛着のあるキャラクターであれば、「間違っても、かわいいから少し許せる」と感じる可能性があるという。

「AIは正しいことを言わなければならない、という期待があります。でも、キャラクターをかぶせることで、間違いに対する受け止め方を少しマイルドにできると思っています」

キャラクターを使うことで、AIのハルシネーションそのものがなくなるわけではない。しかし、AIとの関係性や、誤回答に対するユーザーの受け止め方を設計するという点では、キャラクターならではの役割が考えられる。

キャラミクスでは、制限のない自由な会話を行うフルLLMではなく、IPやキャラクターの世界観を守るための制御設計を前提としている。AIの利便性を生かしながら、キャラクターらしさやブランドの安全性も維持する方針だ。

■好きなキャラクターを選べるプラットフォーム構想
将来的には、リモアのオリジナルキャラクターだけでなく、さまざまな既存IPやVTuberなどから、ユーザーが自分の好きなキャラクターを選べるプラットフォームも構想している。

橋本氏は取材で、サンリオのキャラクターや『アイドルマスター』、VTuberなどを例に挙げた。

好きなキャラクターを自分のそばに置き、そのキャラクターが「おせっかいなお姉さん」のように日常生活の中で声をかけてくれる。

一般的なアドバイスを繰り返すのではなく、ユーザーの好みや過去の行動を理解したうえで提案してくれる点が、キャラミクスの目指す体験だ。

「自分のことを分かった状態で教えてくれる。1対1でキャラクターとやり取りできる体験は、これまであまりなかったと思います」

■Headline Asiaから1億円を調達、海外展開も視野に
リモアは2026年6月、Headline Asiaから1億円を調達した。

調達した資金は、プロダクト開発、AI開発、コンテンツ開発、人材採用などに活用する。2026年後半の正式リリースに向け、一般ユーザー向けプロダクトと企業向けSDK・APIの両面から事業構築を進めている。

現在は、美容・小売領域を中心とした企業とのPoCや、自治体と連携した健康・行動変容施策、外部サービスとのID・生活データ連携なども進行している。

橋本氏は、日本国内だけでなく、台湾、インドネシア、インドなどを含むアジアや世界市場への展開も視野に入れていると話す。

「プロジェクトが始まる前の段階から、インドネシアやインドでもサービスを提供しようという話をしています。それぐらい世界規模でやっていきたいと思っています」

■AI時代にこそ、IPの力が必要になる
橋本氏は、韓国の映画やK-POPなどのコンテンツ産業に対する政策的支援を例に挙げ、日本もIP産業への支援をさらに強化すべきだと語った。

これまで日本では、出版社やアニメ会社、ゲーム会社などが、それぞれの企業単位でIPを育ててきた。今後は国全体でIP産業を支え、日本発のコンテンツを世界へ展開できる環境をつくる必要があるという。

AIやロボットが普及する時代になっても、人が親しみを感じ、長く関係を築けるインターフェースとして、キャラクターは重要な役割を果たす。

睡眠という日常的な行動から始まり、健康、美容、学習、金融、買い物へと広がっていくキャラミクス。

「オタクを眠らせる」という印象的な言葉の先には、日本が得意としてきたキャラクターIPとAIを融合し、人々の生活を支える新たなインフラを世界へ届けるという大きな構想が描かれている。

株式会社リモア

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新井 一
東洋経済新報社
2025-02-19

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