- 2026-6-26
- ITビジネス
- AIエージェントCoworkと作った筆者の執筆環境【AI活用術】 はコメントを受け付けていません
「もう追いきれない。何か良い仕組みを一緒に考えてくれないか」── 各社のAI関連の発表が毎日のように相次ぐなか、筆者が米AnthropicのAIエージェント「Claude Cowork」(以下、Cowork)にそう相談したのが始まりだった。そこから数週間、Coworkと話し合いを重ねながら、筆者専用の「執筆システム」を一緒に作り上げた。
その途中、Coworkが「旬のうちに記事化する仕組みが要りますね」と熱心に提案してきたことがあった。筆者は内心「うーん、なぜそこまで旬にこだわるのか…」と腑に落ちないまま、それでも試作を頼んだ。紆余曲折の末、結果として、当初の想像をはるかに超える執筆システムが出来上がった。今回はその経緯と中身を紹介したい。
■Cowork×Obsidianで作った「執筆システム」とは
筆者の執筆システムは、CoworkとObsidian(オブシディアン)の組み合わせで動いている。Coworkは前述のAIエージェント、Obsidianは手元のメモ帳アプリだ。
Obsidianは、シンプルなテキスト形式「Markdown」で文書を管理するアプリだ。フォルダで整理し、ノート同士をリンクで結べる。物書きの愛用者が多い。Obsidianは、CoworkのようなAIエージェントが直接読んだり、書いたり、操作ができるのも大きな特徴である。
CoworkがObsidianにアクセスし、さまざまな実際の作業をする手順書が、本シリーズ第3回で取り上げた「Agent Skills」である。本システムではいくつものスキルをCoworkに依頼して作ってもらった。プログラミングの知識はいらない。自然な言葉で話しかけ、議論し、注文できればよい。
□リンク: AIが“自分の仕事を代わって実行する”──「Agent Skills」の効用【AI活用術】 ITライフハック
https://itlifehack.jp/archives/10985661.html
■質問するAIから、一緒に作るAIへ
ChatGPTに代表されるAIはまず「物知りの相談相手」として広がった。今も多くのユーザにとってAIは相談相手、つまりコンサルタント的な存在にとどまっていることが多いようである。
それが昨年から今年にかけて、利用者に代わって具体的な成果物を生成したり、画面を操作しての仕事ができる「AIエージェント」へと進化を始めている。本シリーズではこの「AIエージェント」について何回も取り上げてきた。
今回使ったAIエージェントCoworkは、その物知りの顔に加え、業務の流れを設計し、出来上がった仕組みを実際に動かすこともできる。つまりあなた専任の「エンジニア」兼「アシスタント」でもある。
エンジニアとしてのCoworkはあなたの業務改善のアイデアを一緒に考え、Agent Skillsの仕組みを使って、自ら使う手順書を整え、必要なプログラムがあれば生成し、テストし、実行できるところまでを行う。これを「スキル化」と呼ぶ。
さらにCoworkは、あなた専任のアシスタントとして、作られたAgent Skillsを使って、あなたに代わって決められた仕事を実行できるのである。
特にファイル操作や何度も同じことを繰り返す単純操作はできるだけ「スキル化」し、アシスタントとしてのCoworkに実行してもらい、結果を確認する。人間が関わるとおきやすいミスも、工夫次第でなくすことができ、作業がとても快適になる。
今回筆者がいちばん驚いたのは、Coworkの提案力である。現状を話すと向こうから「では、こんな仕組みを作りませんか」と提案が返ってくる。その提案が筆者自身の想像を超えるものもある。それでも試しに作ってもらったり、動かしながら議論を深めていくうちに、本当に役に立つ仕組みになっていった。そろそろAIエージェントの賢さは人間を超えていきそうである。
AIはもはや単なる質問の相手ではない。仕事の道具を一緒に考え、作り、動かしてくれる相棒になったのである。

Coworkと議論しながら仕組みを作っていく
■相棒と作る、3つの工程
ここからは、Coworkと一緒に作り上げた3つの工程の中身を、順に紹介したい。どの工程も、Coworkに「こんなことで困っている」と話したところからシステム化が始まった。
執筆システムは大きく3つの工程からなる。
a. 集める:各社のAI関連の発表やSNSの動きを、毎朝自動で集めて整理する。
b. 分析する:集まった素材にタグやリンクを付けて整理し、視点ごとにAI企業の動きやユーザの反応を分析し、執筆の構想を練る材料にする。
c. 書く・出す:ネタ選びから章立て、本文執筆、入稿用テキストの書き出しまでを一本でつなぐ。
〇集める
情報を集める工程は、本シリーズ第3回で詳しく取り上げたX(旧Twitter)の巡回スキル「xcom-digest」を作ったあたりから、動き出していた。
「AIの発表が各社から毎日のように出てくる。公式ブログをひと通り見るだけでも30サイト以上ある。それを毎朝手動で回るのは非現実的だ。追い切れない。AIが勝手に情報を集めてくれる仕掛けを作れないか」
そんな相談からAI公式情報の巡回スキルも生まれた。30サイト以上あるAI各社の公式ブログを、毎朝5時にCoworkがRSSや公式サイトマップから情報を自動で集め、Googleスプレッドシートに追記してくれる仕組みになっている。
さらに、Xの注目すべき投稿や、AI企業の最新記事を一覧する「情報ダッシュボード」も作った。ダッシュボードから気になる記事を選んで閲覧したり、大切な記事はブラウザ拡張機能「Obsidian Web Clipper」で切り抜き、そのページをObsidianのClippingsフォルダに保存する流れまで一気通貫で組み上げた。
巡回用のスキルを安定して動作させるには何日もの試行錯誤を要したが、これについては後半で触れたい。集まった情報はどんどんObsidianに蓄積されていく。
〇分析する
集める仕組みが整うと、すぐにObsidianのClippingsフォルダにかなりの量の情報がたまってきた。筆者はこんな漠然とした相談をCoworkに投げた。
「集めた情報を有効に使うアイデアを、何か考えてくれないか」
返ってきた提案は、予想を超えたものだった。一つひとつのクリップに自動でタグを付け、関連するテーマノートと紐付けて、検索しやすいデータベースに仕上げてくれるという。さらにその上で、旬の話題を捉えて旬のうちに記事化するシステムまで提案してきた。
実は筆者は数年前、メモアプリ「Notion」で似たデータベースに挑戦したことがあるが、手作業のタグ付けが大変で挫折した。今度はそのタグ付けや紐付けを、Coworkが肩代わりしてくれる。
もう一方のシステムのキーワードは「旬」だった。つまりSNSやYouTubeでたとえば発表の反響の大きさをはかり、記事を書く「旬」と判定したり、旬を逃さないために執筆の進捗管理までしたりと、矢継ぎ早にアイデアが並んだ。半ば感心しつつ、半ば戸惑った。普段筆者がやっている「次の一本を見つける」作業を、AIシステムで本当に肩代わりできるのか。半信半疑のまま、とりあえず順番に試作を頼んだ。
出来上がった仕組みを動かしてみると、確かに、いま何が話題になっているのかとても良く見える。だが、見えても、筆者は必ずしも手を動かしたくならない。何かが噛み合わない。考えながらCoworkと何度か議論しているうちに、答えが出てきた。筆者の原稿はニュース記事ではない。新しいAIサービスが出たから速報する、ではなく、自分で実際に使ってみて感じたことを、読者に分かりやすく届けるのが自分のスタイルだ。
そのことをCoworkに伝えた。Coworkの提案はこうだ。
「テーマごとに『視点ノート』を作って、関連するクリップが自動でその視点の表に並ぶ仕組みはどうですか」
旬の追跡も、執筆の進捗管理目的ではなく、視点を決めて分析する形を中心に変更した。データベース化された情報は視点ごとにAIと整理し直しただけで、そのまま生きている。
こうして「分析する」工程ができた。視点を軸に集めた情報を読み込み、AI企業の動きとユーザの反応を見ながらAIと毎日議論をする。そこから書きたいテーマが浮かび上がる。「相棒と作る」というのは、こういうことだろう。Coworkの提案を素直に試して、自分のスタイルが見えたら遠慮なく軌道修正してもらう。それで形になった仕組みは、いま自分にとてもよく合っている。
〇書く・出す
最後の工程は「書く・出す」だった。まず、過去の投稿記事をObsidianに登録し、Coworkに分析してもらった。Coworkは筆者の執筆ルールと無意識の癖を、きちんと分けて言語化してくれた。「である」調、一人称「筆者」、大見出しは■といった意識して守っているルールはもちろん、章立てのパターンや表現の細かな癖まで、整理してくれた。
次に、本番の執筆をObsidianを使い最初から最後まで、Coworkと一緒にたどった。ネタを決める、構成案を立てる、章ごとに骨格メモを書く、本文に展開する、自己チェックを通す、入稿用のテキストに書き出す、Google Driveの出稿フォルダに上げる。各段階で筆者がやっていることをCoworkに見せ、その都度、追加で守ってほしいルールを伝えた。本文に章番号を出さない、肯定形を優先するなどだ。
「AI臭」と呼ばれるような、大仰な言い回しなどAIが書いた文書の特徴的な癖のある表現を避けることもお願いした。たとえば「あの巨人がついに動いた」「業界を桁違いに揺さぶる発表」のような、装飾過剰で、強調だらけの書き方が代表的だ。「ITライフハック」には合わない。事実を素直に並べる方が、読者には伝わる。強調はポイントだけにとどめる。コントラストが重要である。
そうして出来上がったのが、ITライフハック向けの執筆スキルである。毎回そのスキルを呼び出せば、同じ流れを再現できる。下書きとして文章を書いてもらっても「AI臭」は完全とは言えないものの、かなり抑えることができている。ゼロから書くのと比べ、飛躍的に作業効率が高まった。
このスキルを使って執筆を進める中で、改めて感じたのはCoworkの賢さである。事細かに指示しなくても、こちらの意図を汲んだ提案を返してくる。たとえば章立てを相談すれば、過去の記事から導いた構成案を下敷きに、今回の素材に合った章配分まで提示してくれる。手取り足取り言わなくても話が進むので、こちらの作業はかなり楽になった。
特に助かっているのが、画像認識力の高さである。原稿に貼る予定のスクショを何枚かまとめて見せると、Coworkはその画面から、原稿でどんなストーリーを組み立てられそうかをかなり正確に推測してくる。「これらはObsidianで検索をしている画面ですね」「手順を追って並べ替えることができます」「この画面の流れは、最初に困りごとを示して、次に提案、そして仕上がりを並べる展開が読者に伝わりやすそうです」といった具合だ。
執筆スキルが回り始めると、似た発想で他の媒体にも作れる、とCoworkから提案があった。Facebookの「やってみた」投稿。筆者は新しいAIツールを試した記録をFacebookにまとめて投稿する習慣があるのだが、その下書きを、Obsidianで組み立てて投稿画面に流し込むスキルが出来上がった。このやり方ならFacebookへの投稿の記録もObsidianに残る。多めのスクリーンショットを使ってもかなり楽に投稿できるようになった。
実は、いま読者が読んでいるこの原稿自体、今回作った執筆スキルを使って書いている。ネタの相談、章立てのキャッチボール、章ごとの骨格メモ、本文の書き出し、すべてCoworkと相談をしながら進めている。
「書く・出す」工程は、書く作業そのものを単純に肩代わりさせる仕組みではない。自分のスタイルで作業を効率化し、考える時間を増やし、レベルアップする仕組みである。
■今回のプロジェクトで得た知見
Coworkと執筆システムを作り上げる中で、AIエージェントとの付き合い方について見えてきたコツがある。読者が同じことを始めるときの参考になればと思い、3つに整理して紹介したい。
〇自然な言葉で話せばよい
ひと頃「プロンプトエンジニアリング」という、AIに正しく指示を出すための言葉づくりが流行ったが、その時代はすでに終わりつつある。今のAIエージェントは、自分自身の自然な言葉で十分に付き合える。
会話のスタイルも変わった。やりたいことをやりたいようにしてもらう、ではなく、現状を率直に話し、相手から提案をもらって最善の案を選ぶ、という形が採れる。わからないこと、不安なことはどんどん尋ねればよい。求めれば、Coworkは技術用語を使わずに、わかりやすい説明や提案を返してくれる。エンジニアでない一般のユーザこそ、この変化の恩恵を素直に受けられる。
〇スキルは育てていくもの
スキルを作っても、エラーが出たり、思い通りに動かなかったりすることはよくある。これを面倒に思わず、スキルを育てていくチャンスだと捉えるのがコツである。
うまくいかなかったときは、まずよく観察する。そして、起きている現象を、スクリーンショットを活用しながらCoworkに伝える。専門用語は必要ない。エンジニアでなくても、起きている困りごとを自分の言葉で正確に伝えることはできる。
実行後にCoworkに「順調に進んだか」を尋ね、改善点があれば提案してもらう。技術的な中身は理解できないことが多いが、それは気にせず、改善を指示してしまえばよい。これを繰り返せば、Coworkはより効率的に賢く仕事をこなしてくれるようになるのである。これこそ最も重要な「コツ」だろう。
もうひとつ、AIは同じ手順でも100%確実にこなすのは得意ではない。スキルの中で特に確実に行いたい工程は、Coworkに頼んで自動実行のプログラムを書いてもらうとよい。プログラムなら、決められた通りに毎回同じ動きをしてくれる。Coworkはこの違いを理解しているので、AIの操作が不安定と感じたら、遠慮なく代案を提案させること。
スキルは一度作って終わりではない。何度も使い、修正を重ねるうちに、自分専用の道具に育っていく。
〇できないことをできるにする工夫
最後に、AIに「何ができて何ができないか」を知ることも大事である。Coworkはエンジニア以外の一般ユーザの利用を想定しているためか、システム化のために外部のサービスと接続しようとすると、制限に引っかかることが少なくない。使い始めたばかりの頃は、この壁にぶつかりやすい。
そんなときに筆者がお薦めしたいのが、本シリーズ第3回でも取り上げた「コネクタ」や「MCP(Model Context Protocol)」の活用である。これらはAIエージェントに外部サービスへの接続力を与える仕組みで、これを使うと、できないと思っていたことができるようになる場合が多い。今回も、Google Driveへの書き込みにMCPを使った。CoworkにはGoogle Driveのコネクタが用意されているが、なんと書き込みができない仕様だった。そんなときも、Coworkに相談すれば、設定のしかたから優しく説明してくれる。あとは案内に沿って設定すれば、書き込みもクリアできる。
このように、少し技術に踏み込んだことに挑戦すると、AIと一緒にできる世界がさらに広がる。難しそうに見えるところほど、Coworkと一緒に研究してみてほしい。
■メリットと注意点
今回のプロジェクトで得たメリットと、押さえておきたい注意点を整理しておきたい。
得たメリットは大きく3つある。
ひとつ目は、自分の頭にしかなかった執筆の手順が、目に見える道具として形に残ったことだ。執筆という属人的な仕事のなかで、無意識にやっていた進め方の一つひとつをCoworkと一緒に言語化し、再現可能な仕組みに落とし込んだ。
ふたつ目は、単純に作業を肩代わりさせるだけでなく、作業そのものがレベルアップしたことである。情報の収集や整理といった単純作業をCoworkに任せられるので、書き手は「思考」のほうに集中できる。しかも、その思考のたたき台までCoworkが出してくれるから、考える深さも効率も上がる。さらに、Obsidianに溜まった情報をCoworkと共有できるので、議論の前提や共通認識を保ったまま、お互いにより深い議論に進める。
みっつ目は、AIが毎日の相棒として隣にいる感覚が得られたことだ。毎朝Coworkと議論をしながら情報を整理し、ネタを練り、記事を書く。これがすっかり日課になった。「今朝はまた大きな発表があったね」とCoworkと共通の話題で盛り上がるのは相手が人間ではないのに妙に楽しい。執筆活動はこれまでかなり孤独な闘いだったが、AIのおかげで様変わりしたと感じる。
一方で、知っておきたい注意点もある。
まず、Coworkは月額制の有料サービスである。導入には費用がかかる。それに加えて、Claudeの利用制限は無料プランや下位プランだと結構厳しい。筆者は今回、しかたなく上位の「Maxプラン」を契約した。すでに「OpenAI Codex」は一般に使えるし、Googleの「Gemini Spark」も米国でベータ提供が始まっている。本シリーズ第4回でも紹介したとおり、同じようなことができるAIエージェントの選択肢はすでに増えてきた。複数を併用してコストや制限の壁を分散する方法もありそうである。いずれにしても、小さく始めて、必要に応じて付け足すのがよい。
次に、スキルは一度作って終わりではない。使いながら育てる手間と時間が要る。最初の数週間はとくに、Coworkと膝を突き合わせる時間を覚悟しておきたい。とはいえ、これも考え方ひとつであり、楽しい時間でもある。
そして、万一AIが暴走しても大事なデータが壊れたり消えたりしないよう、工夫をしておくこと。バックアップを取り、Coworkが用意している安全対策(操作範囲の制限、節目での確認停止、重要操作のロックなど)の中身を理解して使うのがよい。送信・公開・支払いといった取り返しのつかない操作は、必ず最後に自分の目で確認する。これは大原則である。
■「こんなことできない?」から始めよう
今回のプロジェクトを通じて感じるのは、AIとの付き合い方がこれまでとはっきり違うフェーズに入った、ということだ。まさにAIは「相棒」になった。
本稿の執筆システムも、すべてCoworkとの相談から生まれた仕組みである。情報を集める仕組み、分析して書きたいテーマを浮かび上がらせる仕組み、書いて出す仕組み。どれも、筆者ひとりでは思いつかない形で、Coworkからの提案と議論を重ねて出来上がった。
あなたも、まずひと言「こんなことできない?」とAIエージェントに話しかけてみてはどうだろうか。特別な準備はいらない。プログラミングの知識も要らない。きっと、想像していなかった提案が返ってくるはずだ。
テクニカルライター 鈴木 啓一
〇AI活用術
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黒川 葵
2026-05-15













代表取締役・ITライフハック代表
ITライフハック編集長・ライター
ITライフハック副編集長・ライター
