人材不足時代の「任せるDX」とは?kubell、メディア向けラウンドテーブルを開催

  • 2025-12-25
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中小企業の生産性向上を阻む要因と、その解決策として注目されるBPaaS(Business Process as a Service)の最新動向について、国内最大級のビジネスチャット「Chatwork」を展開する株式会社kubellは2025年12月17日、メディア向けラウンドテーブルを開催した。当日は、同社が実施した中小企業約1,000社へのアンケート調査結果*1が公開されるとともに、執行役員 兼 BPaaSディビジョン長の岡田亮一氏が登壇し、DXが進まない背景とBPaaSの可能性について解説した。

■DXはなぜ失敗するのか?——数字が示す「失敗の構造」

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調査結果からは、中小企業のDXが個社の努力不足ではなく、構造的に失敗しやすい状況に置かれていることが、具体的な数字として浮かび上がった。

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生産性向上に向けた取り組みとして「デジタルツールやクラウドサービスの導入」を挙げた企業は20.5%、「AIの活用」は15.3%にとどまった。生産性向上の必要性は認識されているものの、DXは依然として有効な打ち手として十分に想起されていないのが実情だ。

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さらに注目すべきは、DXやデジタル化に取り組んだ企業のうち、57.5%が「失敗した経験がある」と回答している点である。失敗理由としては、「一部の人しか使わず全社展開できなかった」(34.2%)、「期待した効果が得られなかった」(27.5%)、「既存システムと連携できず、かえって手間が増えた」(26.2%)などが上位に並んだ。ツール導入そのものが目的化し、業務改善に結び付かなかったケースが少なくない。

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背景には、DXを支える体制不足がある。「システム担当者がいない」と回答した企業は全体で27.5%、従業員数10〜29人規模の企業では48.2%に達した。

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また、日常業務において「口頭・電話・FAX・紙が中心」と答えた企業は46.0%と、アナログ業務が依然として主流である実態も明らかになっている。

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これらの数字が示すのは、DX失敗の本質がツール選定の巧拙ではなく、人材不足・時間不足・業務未整理が重なった構造的課題にあるという点だ。SaaSや生成AIといった用語自体の認知も十分とは言えず、「よく分からない」と回答した割合はDXで30.7%、SaaSでは55.2%にのぼった。

こうした認知ギャップを分かりやすく整理したのが、以下の表である。

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■「使いこなすDX」から「任せるDX」へ

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こうした状況を踏まえ、岡田氏が提示した解決策がBPaaSである。BPaaSは、単にツールを提供するSaaSとは異なり、業務そのものをプロセスごと外部に委ねるモデルだ。
岡田氏は「中小企業にとってDXが進まない最大の理由は、ITを使いこなす人材が社内にいないことです。BPaaSは、業務をアウトソースするだけでDXの恩恵を受けられる点に価値があります」と説明する。

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kubellが展開するBPaaSサービス「タクシタ」では、ビジネスチャット『Chatwork』を窓口に、経理・労務・総務といったバックオフィス業務を依頼できる。利用企業はチャットで指示を出すだけで、専門スタッフとAIを組み合わせたオペレーションによって業務が処理される仕組みだ。
特徴的なのは、業務をそのまま引き取るだけでなく、業務整理や改善提案まで含めて提供する点である。岡田氏は「従来のBPOは既存業務を切り出すだけでしたが、BPaaSではプロセス自体を最適化します」と強調した。

■AIエージェントが支える次世代BPaaS

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ラウンドテーブルでは、BPaaSの進化形として「AIエージェント」の活用についても言及された。生成AIの進化により、データ入力やチェック、システム連携といった定型業務はAIが担い、人は判断や例外対応に集中する形へと移行しつつある。
BPO市場は規模が巨大でAI活用により労働集約の構造が変革されるため、AI活用の最有望領域の1つ*2といわれる。今後、BPaaSはチャット経由での「オペレーターによるSaaS運用代行」から「オペレーターによるAIエージェント活用」に シフトすることにより、オペレーターのSaaS習熟コストの削減、1人あたり生産性の大幅向上が見込まれる。

岡田氏は「AIと人が役割分担しながら業務を進めることで、生産性は飛躍的に高まります。kubellでのBPaaS戦略ではChatworkのユーザー数を活かし、まず顧客数の最大化を志向して面を確保し、その後、AIエー ジェントによる技術革新を前提に、AIドリブンなオペレーションを追求することで利益率の劇的な改善を目指します」と語った。

■ AI+BPO含め、今後、市場の拡大が加速

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BPaasは2018年ごろから海外を中心に広がり始め、国内でも2023年の年明け頃から浸透し始め参入する企業が増加した。さらにA Iエージェントの登場により、AI+BPO含め、今後、市場の拡大が加速していくことが予想される。
しかし、現実的に導入する上でボトルネックになっているのは料金面である。実際、「料金がリーズナブル」を重視するポイントとしてあげる人が半数(50.0%)にものぼる。企業規模別で見ると、企業規模が小さい企業(10〜29人:52.3%、30〜49人:52.0%)ほど、「料金がリーズナブル」を重視していることがわかる。

■ 月10時間から必要なタイミングで必要な分だけ作業依頼が可能なるBPaasとは?

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Kubellが展開するBPaas「タクシタ」は、月に10時間から必要なタイミングで必要な分だけ作業を依頼可能で、勤怠管理/労務管理/人事評価に特化した「MINAGINE」であれば勤怠管理システムや給与計算など労務に関する業務を一括で対応する。

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kubellのBPaaS「タクシタ」を導入した事例として紹介されたのが、運輸・倉庫業を手がける三喜運輸株式会社である。同社では、管理部がバックオフィス業務全般に加え、運輸・倉庫の管理まで担っており、最小限の人数で業務を回していた。
そのため、請求業務をはじめとした日常業務が属人化しやすく、業務改善やITツール導入に取り組むための時間を確保できない状況にあったという。管理部の増員も検討していたものの、ドライバーなどの現場部門の採用が優先され、人手不足は解消されないままだった。

そこで同社が「タクシタ」に依頼したのが、請求業務の整理と運用改善である。具体的には、請求業務の一連の流れをChatworkとスプレッドシートを用いて可視化し、関係者全員が同じ手順で業務を進められる状態を構築した。業務フローの整理から、実際に現場で使いこなせるようになるまでのプロセスを、BPaaSとして一貫して支援した点が特徴だ。

その結果、請求業務にかかる工数は大幅に削減され、担当者1人分に相当する業務負荷の軽減を実現したという。三喜運輸がタクシタを選んだ理由としては、「バックオフィス業務全般を柔軟に依頼できる点」に加え、「単なる作業代行ではなく、業務整理と運用改善まで支援してもらえる点」が挙げられた。人材不足という制約の中でも業務改善を前に進められる手段として、BPaaSの有効性を示す事例と言える。

■質疑応答:人材確保と専任体制への疑問
質疑応答では、BPaaS事業を支える人材体制について質問が出た。特に「業務改善まで担うには、高度なスキルを持つ人材の確保が課題になるのではないか」という指摘に対し、岡田氏は次のように答えた。
「当社では月に1,500〜2,000名規模のエントリーがあり、厳選採用した専門人材をフルリモートで活用しています。加えて、AI活用を前提とした教育を行うことで、個々の生産性を高めています」
また、「チャットでのやり取りを進める上で、これまでのケースだと毎回、同じことを一から説明する煩わしさがあるが、それは改善されるのか?」という懸念に対しては、「基本的に企業ごとに専任担当を配置し、業務理解を深めた上で伴走します」と説明した。
調査結果と議論を通じて浮かび上がったのは、中小企業DXの現実解が「自社で頑張るDX」ではなく、「任せるDX」にあるという点だ。人材や時間に制約のある中小企業にとって、BPaaSはDXのハードルを大きく下げる選択肢になり得る。

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今回の調査とラウンドテーブルを通じて浮かび上がったのは、中小企業のDXが進まない理由が「意欲の問題」ではなく、「人材・時間・コストという構造的な制約」にあるという現実である。
DXやAI活用の重要性が叫ばれる一方で、ツールを選び、使いこなし、業務に定着させるまでを自社だけで担うのは容易ではない。実際、デジタル化に失敗した経験を持つ企業が半数を超えていることが、その難しさを物語っている。
そうした中でBPaaSは、「自社で頑張るDX」ではなく、「任せることで前に進むDX」という選択肢を提示する。三喜運輸の事例が示すように、業務を丸ごと見直し、改善まで含めて支援することで、限られた人員でも確実に成果を出す道がある。
DXは必ずしも大がかりなシステム導入から始める必要はない。目の前の業務をどう回すか、その一部を外部に委ねることもまた、立派なDXの第一歩だ。人手不足が常態化する今、中小企業に求められているのは「最先端」よりも「現実的に続けられるDX」なのかもしれない。

テクニカルライター 脇谷 美佳子


*1 調査名:『中小企業のデジタル化に関するアンケート調査』/目的:中小企業のデジタル化の状況やDX推進の課題などを明らかにする/調査期間:2025年11月17日~2025年11月19日/調査手法:インターネット調査(協力:株式会社インテージ)
*2 McKinsey & Company「Beyond the hype: Capturing the potential of AI and gen AI in tech, media, and telecom」

株式会社kubell

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