- 2025-12-2
- ITビジネス
- 脳・心血管疾患の発症ゼロへ!オムロン ヘルスケア、心電事業のグローバル戦略を発表 はコメントを受け付けていません
オムロン ヘルスケア株式会社は2025年11月12日(水)、都内 ステーションコンファレンス東京において、心電事業におけるグローバル戦略とパートナー企業との取り組みについて記者発表会を開催した。本発表会では、代表取締役社長の岡田 歩氏と心電事業責任者より、同社の長期ビジョン「SF2030」の次なるステージとして心電事業の新たな戦略についての説明があった。
■脳・心血管疾患の発症ゼロへ
発表会に登壇した同社 代表取締役社長 岡田亜由依氏は、循環器疾患を取り巻く現状を示しながら、「世界で最も多くの命を奪っているのは心疾患。自覚症状が少なく、気づかぬまま突然発症するケースが多い」と課題を指摘した。
心疾患は発症から数時間以内の処置が重要で、治療が遅れれば死亡リスクは急激に高まる。たとえ救命できても、麻痺などの後遺症で生活の質が低下する可能性がある。しかし岡田氏は、「心疾患は早期発見と適切な介入で重症化を防げる」と強調。オムロンはここに大きな社会的意義と事業機会があると捉える。
同社が掲げる新たなビジョン「Going for ZERO」は、脳梗塞・心不全などの脳神血管疾患を“ゼロ”にするという壮大な目標だ。
〇心電図解析サービス「Heartnote」
具体的な施策の一つが、ホルター心電図解析サービスへの参入だ。同社は JSR株式会社から長時間ホルター心電図解析サービス「Heartnote」を承継。これにより、「家庭でのモニタリング → 医療機関での検査 → 診断 → 経過観察」という一連のサイクルを一社でシームレスに支える体制を構築する。
これまで血圧計に強いイメージのあった同社が、心電領域で医療機関向けサービスに踏み込むのは今回が初めて。心電事業の本格展開に向け、大きな布石となる。
〇インドAI企業 TRICOG HEALTH INDIA PRIVATE LIMITEDへの追加出資
もう一つの重要施策が、インドのAIヘルステック企業であるTRICOG HEALTH INDIA PRIVATE LIMITED(トライコグ)」への追加出資だ。同社とは2023年からインドで遠隔心電モニタリングサービス「Kivo Health」を共同開発してきた。
今回の追加投資により、
・遠隔心電モニタリングサービスの拡大加速
・医療機関向けの心電検査普及支援
を強化。医師不足が深刻な新興国で、AIと遠隔診療を活用した診断体制の構築を本格化する。
岡田氏は「誰もがタイムリーに検査と診断を受けられる社会を実現する」と述べ、国境を越えたパートナーシップの重要性を強調した。
■家庭用心電ケアを広げるための“土台づくり”を推進
オムロン ヘルスケア株式会社 ゼロイベント事業部 部⾧ 野崎大輔氏は、心電事業のグローバル戦略について語った。野崎氏は冒頭、心房細動が不整脈の中で最も患者数が多く、特に高齢者では心不全や脳卒中を引き起こす重大リスクである点を強調した。
さらに同社によるスクリーニング調査では、高血圧を持つ高齢者は心房細動が見つかる確率が“3倍”にのぼるという。野崎氏は「高血圧管理と心房細動検査はセットで行うべき段階に来ている」と述べ、日常の血圧測定と同時に心電スクリーニングを行う重要性を訴えた。
オムロンは20年前から家庭用心電計を展開しており、症状が出た瞬間に自身で計測できる点が評価されてきた。2012年には小型デバイスとアプリ連携によるデータ管理を可能にし、さらに2019年以降は米国を皮切りに心電機能付き血圧計のグローバル展開を開始。現在は47カ国で販売されている。
2024年には、血圧を測るだけで心房細動リスクを検知する新モデルを欧州で発売。ユーザーからは「自宅計測が診断につながった」との声も寄せられ、同社は“予防医療への手応え”を感じているという。
同社が次に目指すのは、家庭用デバイスに加えて医療現場での心電図検査を一気通貫で支える体制の構築だ。
同社は日本国内で「Heartnote」の事業を承継。医療機関向けに長時間ホルター型の心電解析サービスを提供し、検査〜診断〜治療〜経過観察までを同社のポートフォリオとして統合していく。
またインド・アジア地域では、医療機関で心電図検査を受けられない住民が多いという社会課題がある。そこでトライオブ社とパートナーシップを結び、遠隔心電図解析サービスを普及。これにより、家庭用心電ケアを広げるための“土台づくり”を推進する。
■日本の医療現場の課題解決を目指す「Heartnote」
JSR株式会社 イノベーション推進部 部長 小林 伸敏氏は、日本の医療現場の課題解決を目指す「Heartnote」事業について説明した。
循環器疾患が世界的に主要な死因であることは広く知られているが、日本の超高齢社会においてもその影響は深刻だ。特に医療費における循環器疾患の構成割合は「がんを上回る」とされ、医療財政を圧迫する大きな要因となっている。その中で、脳梗塞の大きな引き金となる「心房細動」の早期発見と予防が急務となっている。
こうした背景のもと、循環器疾患による脳梗塞の発症を未然に防ぎ、医療費の削減にもつなげるべく開発されたのが「Heartnote」事業だ。
「Heartnote」の特徴は、薄型・軽量・フレキシブルで、防水性を備えたウェアラブル心電デバイスを用い、患者が自宅で最長7日間の連続モニタリングを行える点にある。24時間測定に比べ、7日間の検出率は約3倍に上昇。短時間測定では現れない発作を可視化できる。実際、ある症例では「3日目の深夜1時間のみ発生した心房細動」を捉えることに成功したという。このように、長期間かつ生活下で測定できる点は、心房細動の早期発見において大きなブレイクスルーとなるだろう。
「Heartnote」は単なる心電計測ツールにとどまらない。端末には加速度センサーが搭載されており、睡眠姿勢、活動量、推定ストレスなどのデータも取得可能だ。すでに国立循環器病研究センターをはじめ、筑波大学、慶應義塾大学、京都大学、大阪大学、九州大学などと共同研究を展開。応用領域も広がりつつある。
■心不全患者向け遠隔モニタリングサービス「KeeboHealth」
TRICOG HEALTH INDIA PRIVATE LIMITED(トライコグ)CEO Charit Bhograj氏は、インドにおける医療課題と、AIが拓く心疾患治療の可能性についてプレゼンテーションを行った。
インドでは、脳・心血管疾患が死亡要因の1位・2位を占める状況にある。生活水準向上や高齢化の進展に伴い患者数は増加傾向にある一方、循環器専門医は人口比で日本・米国の約25分の1しかおらず、医療人材不足は深刻だ。さらに医療設備の整備が追いつかず、心電図検査を含む精密検査が必要な患者が、十分な検査を受けられない事例も発生している。
こうした課題に対し、トライコグは社内に100名以上の専門医を擁し、10年以上蓄積した膨大な心電図データを基にAI解析技術を構築。医療現場のニーズに対応するサービスとデバイスの開発を進め、インドの循環器医療の底上げに貢献している。
同社は2023年よりオムロン ヘルスケアと連携し、同社のAI解析技術とオムロンの通信機能付き心電計を掛け合わせた、心不全患者向け遠隔モニタリングサービス「KeeboHealth」を提供している。本サービスでは、術後の患者が家庭で取得した心電図や血圧データを解析し医師へ共有。医療従事者の診断業務を効率化するとともに、心不全の再発防止を支援する仕組みだ。
■体験コーナー
体験コーナーでは、来場者が商品を実際に試すことができた。
心電計付き上腕式血圧計「HCR-7800T」は、血圧測定と同時に心電図も記録できるモデルで、自宅で定期的にデータを残したい人に最適だ。
携帯型心電計「HCG-8060T」は、2種類のモードで心電図を記録できる。小型・軽量のため、旅行先や出張先にも気軽に持ち運べる。
今回の発表は、同社が血圧計メーカーから「循環器の総合ソリューション企業」へと本格的に転換することを示すものだ。家庭でのセルフチェックと、医療機関での専門診断。その両方をシームレスに連携させることで、脳・心血管疾患を未然に防ぐという巨大な社会課題に挑む。「発症ゼロ」の世界に向け、心電事業がいよいよ動き出した。
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代表取締役・ITライフハック代表
ITライフハック編集長・ライター
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