アプリ市場をデータで解析!「モバイルアプリトレンド2025」日本版レポート オンライン記者発表

  • 2025-8-11
  • アプリ市場をデータで解析!「モバイルアプリトレンド2025」日本版レポート オンライン記者発表 はコメントを受け付けていません
image001

Adjustは2025年7月23日、アプリ市場をデータで解析するトレンドレポート「モバイルアプリトレンド2025」を発表した。発表に先立ち、同年7月22⽇にモバイルアプリ/ゲームを中心とした、デジタル経済に関するデータを提供するリーディング企業のSensor Towerと合同でオンライン記者発表会を開催した。当日は、Adjust 日本ゼネラルマネージャーの佐々直紀氏とSensor Towerカントリーマネージャー松尾蔵人氏が登壇し、「モバイルアプリトレンド2025」日本版レポートの結果と、そこから明らかになった最新のトレンドについて解説した。

■MMPの日本国内マーケットシェアの80%を占めるAdjust
イベントは、Adjust 日本ゼネラルマネージャーの佐々直紀氏の挨拶から始まった。
同社はモバイルアプリの計測・分析ツールを提供する企業であり、本社所在地がドイツのベルリンにあるAppLovin(Nasdaq:APP)のグループ会社だ。2014年に日本へ進出し、10年以上にわたり国内で事業を展開している。世界では約450名の従業員がおり、日本拠点の東京オフィスには25名が在籍中で、現在も増員を進めている。16の海外拠点を含め、世界各地をカバーしており、日本ではアプリ計測ツール市場のシェア80%を占める。主要なアプリの多くがAdjustを利用しており、マーケター向けの幅広いツールを提供している。

image001
Adjust 日本ゼネラルマネージャーの佐々直紀氏


アプリの効果測定ツールは、海外では「モバイル・メジャーメント・パートナー(MMP)」と呼ばれる。MMPは、ユーザーがどこからアプリをインストールしたのか(流入経路)を計測する仕組みで、アプリマーケティングに欠かせない存在だ。

Adjustは、計測基盤をもとに6つのソリューションを提供している。その中でも特に注目されているのが「ローデータ転送機能」である。これは、アプリ内でユーザーがどの画面を見て、どの機能を使ったかといった詳細データを、個人情報を除外した状態で企業のサーバーや外部ベンダーに送信できる機能だ。このため、ユーザー行動の把握や分析を目的にAdjustを導入する企業が多い。また、8年前からは不正インストールや広告詐欺を防ぐ機能も提供しており、これも重要な役割を担っている。

image007
MEASUREを基盤として6つのソリューションを提供している


さらに最近では、Googleが「Firebase Dynamic Links」の提供を2025年8月25日に終了すると発表し、その代替サービスの需要が急増している。Adjustの「TrueLink」を使えば、Firebase Dynamic Linksと同等の機能を利用できるため、多くの企業が乗り換えを検討している状況だ。

image011
TrueLinkによってFirebase Dynamic Linksと同じことができる


■「データの総合デパート」を目指すSensor Tower
続いて、Sensor Tower カントリーマネージャーの松尾蔵人氏が登壇した。

image013
Sensor Tower カントリーマネージャーの松尾蔵人氏


同社は2013年に米サンフランシスコで設立された企業で、日本では2021年春から本格展開を開始し、現在4年目を迎えている。ミッションは「データの総合デパート」となることであり、消費者の行動(カスタマージャーニー)を多角的に分析し、推計データやインサイトを提供するワンストップソリューションの実現を目指している。特にモバイルアプリ分野のデータにおいては、業界のリーディングカンパニーであるという自負を持つ。

提供データは多岐にわたり、デジタル広告の配信状況やリテールメディアの流通・ロス分析、オーディエンス(顧客属性や行動)の把握などをカバー。さらに、ウェブ検索やアプリ利用の重複分析にも対応し、「トゥルーユーザー(真のユニークユーザー)」を計測できる独自のプロダクトを保有している。

image017
Sensor Towerのミッションとサービス


■ゲームアプリは「ポケポケ」が圧勝
Sensor Tower 松尾氏は、「モバイルアプリトレンド2025」の中から注目すべきものをピックアップして解説した。

今年のゲームアプリ・ダウンロード数トップ10では、昨年1位だった「ぽちゃガチョ!」、2位の「スイカマージ(スイカゲーム)」、3位の「キノコ伝説」がすべて圏外となった。これは、ゲーム業界において“ダウンロード初動”の重要性を示している。

一方、今年は「Pokemon TCG Pocket(ポケポケ)」が急伸し、ダウンロード数で1位を獲得。課金額でも圧倒的首位となっている。2位の「モンスターストライク」も長期間安定して高い人気を維持している。支出額ランキングでは、「パズドラ」が圏外となる一方、7位に「ホワイトアウト・サバイバル」、3位に「ラストウォー:サバイバル」と、海外勢も健闘している。

続いて、Adjust 佐々氏がゲームアプリ市場の動向について、さらに詳しく説明した。
アプリのインストール数とセッション数は、ゲーム分野ではほぼ横ばいで推移しており、成長はわずかだが高い水準を維持している。サブカテゴリー別では、「ポケポケ」に代表されるカードゲームがインストール数・セッション数ともに増加し、特にセッション数の伸びが顕著だ。また、カジノゲームもインストール数が大きく増えている。ジャンル別の割合では、インストール数の20%がハイパーカジュアルゲーム、16%がシミュレーションゲームとなっている。

日本におけるゲームアプリの継続率は前年とほぼ同水準だが、有料広告で獲得したユーザーの比率(ペイド/オーガニック)は2023年の2.03から2024年には2.97へ上昇しており、ペイドユーザーが増加していることが分かる。

image021


■ファイナンスアプリは「楽天ペイ」が1位、「PayPay」が2位
再び、Sensor Tower 松尾氏にバトンが渡され、ファイナンスアプリの状況が説明された。

ファイナンスアプリでは、昨年と同様に「楽天ペイ」と「PayPay」が1位・2位を維持し、その強さを示した。一方、昨年3位の「iAEON」や、トップ10に入っていた「majica」(ドン・キホーテ運営)や「SBI証券」などは、今年は圏外となっている。支出額ランキングではトップ3に変動はなく、一度使い始めたユーザーが長く使い続けるアプリが強い傾向が見られる。

ファイナンスアプリのセッション数は順調に増加しており、インストール数は一時停滞したものの、2024年秋頃から急伸し、2025年もその勢いを維持している。特に地方銀行による計測ツール導入が加速しており、まだ認知されていないアプリにも普及の余地が大きいという。前年比成長率でも、日本はグローバル平均を上回っており、導入の進展が際立っている。

サブカテゴリー別では、2024年上半期と2025年上半期を比較すると、多くの分野で成長が見られる一方、株式投資関連のインストール数は減少。セッション数では、スマホ決済が圧倒的に多く、次いでバンキング、仮想通貨、株式投資の順となった。日常利用が多いモバイル決済の浸透が進む中、バンキングも着実に伸びている。

アプリ内の平均滞在時間は全体で5.07分とやや伸びており、株式投資や仮想通貨アプリでは特に長い。これは情報収集や判断に時間を要するためである。一方、スマホ決済は利用が短時間で完結するため滞在時間が短い傾向にある。ユーザーあたりのセッション数はほぼ横ばいで、継続率は前年よりわずかに低下している。

ARPMAU(ユーザーあたり月間平均収益)の地域別比較では、日本は減少傾向にある。グローバルや米国では横ばいだが、日本では決済系アプリのキャンペーン終了や、決済以外のアプリ利用増加が要因と考えられる。

image029


■マンガアプリは「LINE マンガ」と「ピッコマ」が2強
さらにSensor Tower 松尾氏は、マンガアプリの状況を説明した。

マンガアプリ市場では、「LINEマンガ」と「ピッコマ」が依然として1位・2位を維持し、その強さが際立っている。海外勢ではAmazonの「Kindle」が唯一トップ10入りを果たし、昨年トップ10に入っていた「めちゃコミック」や「少年ジャン+」は圏外となった。こうした入れ替わりは、市場がすでにレッドオーシャン化していることを示しており、今後の四半期ごとの動向に注目が集まる。

佐々氏によると、マンガアプリのセッション数はほぼ横ばいで推移している一方、インストール数は緩やかに減少している。利用は定着しているものの、新規インストールは飽和状態にあるとみられる。

前年比成長率を見ると、日本・グローバルともにインストール数・セッション数は減少傾向で、特に米国は落ち込みが大きい。一方、アプリ内の平均滞在時間は日本・グローバルともに伸びており、利用頻度は減ったが1回あたりの閲覧時間が長くなっていることがうかがえる。

また、日本におけるインストール当日のユーザー1人あたりセッション数は減少傾向にあり、初回利用後の定着施策(オンボーディング)の重要性が高まっている。継続率は2023年から2024年にかけて明確に低下。有料広告によるユーザー獲得比率はグローバル・日本ともに上昇しており、今後はより効率的なマーケティング施策が求められる。

image041


■動画配信アプリでは「TVer」が不動の1位、ゲームアプリの収益は大きい
最後に、Sensor Towerの松尾氏が、エンターテイメント分野を含む日本のアプリダウンロード動向について説明した。

総合ダウンロード数トップ10では、「TikTok」や「ChatGPT」が上位に入り、社会の関心を反映する結果となった。ゲームアプリでは、首位の「Pokemon TCG Pocket(ポケポケ)」をはじめ、「ちいかわぽけっと」などの話題作や「Threads」(9位)がランクイン。支出額ランキングでは、「ピッコマ」「ポケポケ」「LINEマンガ」「モンスターストライク」「ラストウォー」などエンタメ系アプリが上位を占め、日本市場では収益面でもエンタメアプリの強さが際立っている。

OTT(動画配信)アプリのダウンロード数では、「TVer」が不動の1位を維持。2位は「Netflix」、3位は「Amazonプライムビデオ」で、前年から順位が入れ替わった。9位までは前年と同じ顔ぶれで、新たにトップ10入りしたのは「FOD」(10位)のみ。支出額では「U-NEXT」と「ABEMA」が1位・2位をキープしており、地上波連動の見逃し配信告知などが収益向上に寄与したとみられる。

佐々氏によれば、エンタメアプリのインストール数は横ばいながら、セッション数は緩やかに増加している。2024年7月にはパリオリンピックの全競技が地上波で放送された影響で、ストリーミング利用が急増した。前年比では、日本はインストール数14%増、セッション数5%増と、米国やグローバル平均よりやや低いものの、プラス成長を維持している。サブカテゴリー別では、音楽&オーディオがインストール数9%増・セッション数2%増と好調な一方、ビデオストリーミングはインストール数5%減・セッション数4%減と減少傾向にある。

継続率は2024年にやや低下。有料広告経由のユーザー比率は上昇しており、競争が激化する中、効率的なユーザー獲得と継続利用促進が課題だ。ARPMAU(ユーザーあたり月間平均収益)は米国が最も高く、日本もグローバル平均を上回る水準を維持しているが、直近では税制変更などの影響で米国・日本ともに低下傾向にある。今後は、安定的なマネタイズとユーザー定着策の強化が求められる。

image049


image051


■AI機能を搭載した「Adjust Growth Copilot」を開発中
最後に、佐々氏がAdjustの新製品「Adjust Growth Copilot」を紹介した。

同氏によると、現在はあらゆる分野で「AIをどう活用するか」が注目されており、多くのビジネスパーソンが日常業務でAIを利用している。Adjustでも、自社プラットフォームへのAI統合を進めており、その代表的な機能が「Adjust Growth Copilot」だ。

この機能は、日々マーケターや広告代理店が利用するAdjustの管理画面にGPTを組み込み、ユーザーが質問を入力すると、膨大なマーケティングデータやキャンペーン実績データから最適な答えを生成する。現在も本社でAIトレーナーによる改良を重ねており、日本語版の公開も間もなく予定されている。

例えば、「D7 ROAS(7日間の費用対効果)が高いアプリとキャンペーンを表示してほしい」と入力すれば、回答とともに該当データのグラフも提示される。大量のデータから必要な情報を探し出す手間を減らし、解釈や改善のヒントを得られるツールとして活用が期待されている。

image061
Adjustが開発中のAI機能「Adjust Growch Copilot」


image063
会話形式でAIに分析などを依頼できる


■PlaylinerとVGIの買収により新プロダクトをリリース
松尾氏は、Sensor Towerの新情報として、買収した2社について説明した。

1つ目は、2025年6月に買収したPlayliner。同社は、ゲーム内のライブオペレーションやライブイベントを追跡・分析する技術を持ち、他に類を見ない規模のゲームイベント情報を提供できるサービスを有している。今後はローカライズを行い、日本市場向けに提供する予定だという。

2つ目は、同年3月に買収したVGI。PCゲームではSteamのデータで最大97%のシェアをカバーし、PlayStationやXboxなどのコンソールゲームデータも網羅するプロダクトを提供している。最大の特徴は、14万以上という膨大なゲームタイトル数を扱える点と、ユーザーの「ウィッシュリスト」(購入予定タイトル)を把握できる点で、これはほぼ唯一無二の機能だという。さらに、中国市場のデータもカバーしており、グローバル展開や中国進出を目指す企業にとって大きなメリットがあると強調した。

image065
Playlinerの買収によりゲーム内の「ライブ・イベント」の追跡・分析が可能に


image067
VGIの買収により、PC/コンソール市場を包括的にカバーしたデータ・インサイトが日本に上陸


今回の発表では、AdjustとSensor Towerがそれぞれの最新データと市場分析を通じて、日本のモバイルアプリ市場の現状と今後の方向性を示した。カテゴリ別の詳細なトレンドから、新製品や買収によるサービス拡充まで、両社の取り組みは、急速に変化するデジタル経済においてマーケターや事業者が競争力を維持するための重要な示唆となる。生成AIの活用やグローバルデータの強化といった新たな動きは、日本市場におけるアプリの成長戦略に大きな影響を与えるだろう。
テクニカルライター 石井 英男


adjust株式会社

ITライフハック
ITライフハック X(旧Twitter)
ITライフハック Facebook
ITライフハック YouTube

ITビジネスに関連した記事を読む
「Process Intelligence Day Tokyo 2025」を開催 / Adjust Ignite Tokyo 2025で聞いたアプリ「新世界」の戦略【まとめ記事】
再生医療でがん治療に革新を!Rebirthel、iPS細胞由来の「他家キラーT細胞」を紹介【IVS2025】
aora、藤沢市「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」で歩いて環境貢献できるアプリ「Pucre」活用。ゼロカーボンシティの実現目指す
プロセスインテリジェンスとAIの融合がもたらす企業変革の最前線を紹介!Celonis、「Process Intelligence Day Tokyo 2025」を開催
プロダクト重視が成功の鍵! Adjust Ignite Tokyo 2025で聞いたアプリ「新世界」の戦略






関連記事

コメントは利用できません。

カテゴリー

アーカイブ

ページ上部へ戻る