ロゼッタと国立がん研究センター中央病院、生成AIによる治験関連文書作成の自動化に関する共同研究の初年度の開発状況を発表

  • 2025-4-17
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株式会社メタリアルグループで、国内市場No.1※1のAI翻訳サービスを開発・提供する株式会社ロゼッタは、本年3月24日(月)、厚生労働省会見室にて国⽴研究開発法⼈国⽴がん研究センター中央病院と共同で、『生成AIによる治験関連文書作成の自動化に関する生成AIの研究について初年度の開発状況の発表』を行った。ここでは、アーキテクチャの開発がシステム自体は完成し、プロンプト設計が7割ほど完了し、一定の精度で自動作成ができるようになったことを発表した。本レポートでは当日の様子をお届けする。
※1 出典:ITR「対話型AI・機械学習プラットフォーム市場2023」国内翻訳市場

■実施背景
株式会社ロゼッタは2024年4月より、国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院と共同で、生成AIを活用し、CSR(治験総括報告書)をはじめとする治験関連文書の自動作成に関する研究に取り組んでいる。本研究は、ロゼッタのAI技術と国立がん研究センター中央病院の知見を融合させることで、治験の質向上と負担軽減に貢献し、本研究成果が臨床試験のAI化推進の⼀助となることを目的としている。今回、共同研究によって開発中の「医師主導治験におけるCSR(治験総括報告書)自動作成ツール」における現段階での研究成果について発表することとなった。

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■生成AI活用で治療プロセスの迅速化、質向上、コスト削減、そして患者体験の向上を目指す
国立がん研究センター中央病院の中村 健一氏は、「生成AIを用いた治験関連文書自動作成ツールの構築」をテーマに、治験関連文書作成の自動化に関する生成AIの研究内容について発表した。

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●国立がん研究センター 中央病院 国際開発部門 部門長 中村 健一氏 発表内容
〇臨床試験における文書作成
臨床試験には大量の文書作成が必要だ。例えば、A4で2~3ページにまとめる研究概要の作成にはじまり、100ページ以上におよぶ治験実施計画書、さらには患者説明文書、症例報告書、各種手順書などが作成される。そして実際の治療を経てデータ収集後に統計解析報告書が作成され、最終的に総括報告書(CSR)にまとめられる。さらに学会発表スライドや論文の作成など、上流から下流に大量の文書が流れ、さらにそれが相互に関連し合っている。

〇最初にCSR自動生成に取り組む背景
まず一つは、技術的ハードルが比較的低く、既存の治験実施計画書や統計解析報告書の内容を転記・編集することで対応できる部分が多い。また総括報告書の作成には、入札を経て外注するため作成に半年以上の期間と、通常1件あたり500万円以上のコストを要する。CSR自動生成には、時間やコストの大幅な削減が期待できる。

〇研究方法
ロゼッタ社のAIエンジニアと、国立がん研究センター中央病院のスタディマネージャー、モニター、データマネージャー、生物統計家でプロジェクトチームを結成した。通常のLLM(大規模言語モデル)では、一般的な知識をもとに文章を生成するが、本研究では「RAG(Retrieval-Augmented Generation)」という技術を用い、過去の医師主導治験の治験実施計画書や統計解析報告書、CSRのセットを参照しながら、新たな医師主導治験において自動的にCSRを生成した。これにより、より精度の高いアウトプットが可能になりました。また、非常に重要な書類であるため、生成AIの誤りを特定できるよう、根拠となる文書の参照箇所を明示する機能も実装し、信頼性を確保した。

さらに、各章ごとに適切なAIモデルやプロンプトを選定しました。例えば、単なるコピー&ペーストで済む部分、要約が必要な部分、時制などの変更が必要な部分、執筆する必要がある部分など、それぞれの特性に応じて言語モデルを変更し、最適なプロンプトを開発した。

〇システムの概要
このツールでは、治験実施計画書と統計解析報告書をアップロードすると、中央のエディタ画面に自動生成されたCSRが表示される。ユーザーは、好みの文章の選択、修正、加筆が可能で、さらにAIチャットボットを利用すれば文章の修正や要約を指示できる。また、生成された文章の根拠となる文書の該当箇所を表示でき、信頼性の確保につながる。

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〇精度の評価結果について
ほぼそのまま可能と微修正で利用可能が約80%に
自動生成されたCSRの精度を、A(ほぼそのまま利用可能)~D(利用は困難)の4段階で評価したところ、A(ほぼそのまま利用可能)とB(微修正で利用可能)が約80%にのぼり、D(利用は困難)は0%だった。これは、従来外注していた作業の大部分が内製化できる可能性を示している。

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〇CSR自動生成の課題
一方で、約18%の部分は大幅な修正が必要だった。コピー&ペーストで良い箇所に対し、誤った情報が生成されるなど、表の列順が入れ替わってしまうといった課題が確認された。これらの課題を解決するため、プロンプトエンジニアリングの精度向上を図っていきたいとの考えだ。また、強化学習を通じて、治験実施計画書や統計解析報告書、総括報告書などのデータセットを増やすことや、LLM(大規模言語モデル)の進化により、精度が改善されることが期待できる。今後は、症例一覧や有害事象の報告書など、多様な文書を取り入れて、より完全性を高めていくことを目指している。

〇今後の展望
今後は、研究者がこれまで3~4ヶ月かけて作成していた研究計画書や治験実施計画書の自動作成や、患者向けの説明文書をより分かりやすくAIが作成することも期待できる。また、研究者の時間と手間を要している論文作成や、増加している国際共同試験での多言語対応にも生成AIが役立つと考えられる。

さらに、治験のプロセス全体にも生成AIが活用され、候補の選定や問い合わせの自動応答、リアルタイムでのデータモニタリングや解析、意思決定支援など、さまざまな用途が考えられる。このように、治験プロセスの迅速化、品質向上、コスト削減に資するだけでなく、患者体験価値の向上も目指して生成AIを活用していきたいと考えている。

【国立がん研究センター 中央病院 国際開発部門 部門長 中村 健一氏 プロフィール】
国立がん研究センター中央病院において早期段階の医師主導治験から大規模な多施設共同臨床試験まで様々な種類の臨床試験の実務経験を持ち、臨床試験の運営と薬事規制の専門家として多数の国際プロジェクトに携わられている。

■医療・製薬業界での生成AI活用で、単純労働から解放される未来を
株式会社ロゼッタの古谷 祐一氏は、国立がん研究センターとの研究のきっかけとなった、製薬企業向け生成AI SaaSソリューション「ラクヤクAI」の紹介をまじえながら、これまでの取り組みや今後の展望ついて発表した。

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●株式会社ロゼッタ 取締役 ラクヤクAI事業責任者 古谷 祐一氏 発表内容
〇ロゼッタについて
ロゼッタはAI技術を活用した自動翻訳の分野でスタートし、長年にわたり専門領域向けの高精度翻訳サービスを展開してきた。近年では大規模言語モデルの登場により、翻訳にとどまらず、要約や文書作成など多様なテキスト生成へと領域を広げ、生成AI事業として発展している。

〇製薬業界との関わり
医療・製薬業界では、厳格なガイドラインに基づく翻訳が求められる中、同社の翻訳エンジン「T-4OO」は100社以上の製薬・ヘルスケア企業に導入されている。また、国立がん研究センターとの共同研究をはじめ、生成AIを活用した医療・製薬業界向けの受託開発も進めてきた。これまでの実績とLLMの進化により、現在では専門文書に特化したAIソリューションを提供している。
その代表的なプロダクトが、今年2月にリリースしたSaaS型の生成AIソリューション「ラクヤクAI」だ。

〇先端技術と今後の注力領域
現在、製薬業界ではメタバースやデジタルツイン技術の活用も進みつつあり、仮想空間上での医薬品検証の実証も始まっている。ロゼッタもそうした将来の可能性を見据え、メタリアルグループとして包括的な戦略を描いている。

〇製薬業界の生成AI利用実態
今年1月に実施した業界調査では、生成AIを導入済みの製薬企業は約半数。その用途は「文章作成(70%)」「資料チェック(40%)」など、主にドキュメント業務が中心です。ただし、毎日使用している企業は5.4%とまだ少なく、多くが“使い始め”の段階にある。AIの導入効果として特に大きかったのが、文書作成、資料チェック、データ検索の効率化でした。なかでも、最も自動化を望まれていた業務が「CSRを含むCTDの作成」であり、今回の共同研究によってこの課題に着手できたことは非常に意義深いと考えている。

〇今後の展望
新薬開発では基礎研究への投資が注目されがちですが、私たちは「治験関連文書をどれだけ早く正確に作れるか」に注目している。
たとえば、年間100億円の売上が見込まれる新薬が3か月早く上市されれば、特許期間の延長によって約25億円の追加収益が見込まれる。CSRやCTDの作成を効率化することで、こうしたタイムロスを削減し、企業の競争力強化に直結する。
先日リリースした「ラクヤクAI MWエディタ」を含め、今後もAIを活用して製薬業界の単純労働を減らし、ドキュメント管理に費やす時間を削減することで、医薬品開発や医療の現場に集中できる環境づくりを支援していく。

【株式会社ロゼッタ 取締役/「ラクヤクAI」事業責任者 古谷 祐一氏 プロフィール】
GMOインターネットグループの連結子会社であるGlobal Web株式会社(GMOスピード翻訳株式会社)の代表取締役社長を経て、総合的な翻訳ソリューションを提案するロゼッタの連結会社、Xtra株式会社の代表取締役社長に就任。2021年、ロゼッタの取締役に就任。AI翻訳の限りない可能性を世の中に広めるべく精力的に活動している。2012年より一般社団法人日本翻訳連盟理事(退任)、2014年よりアジア太平洋機械翻訳協会監事(現任)を務める。

ラクヤクAI プロダクトサイト

メタリアル・グループ
株式会社ロゼッタ

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