ロシアがクリミアを編入 世界は新たな混乱期に入るのか?【ビジネス塾】


ウクライナのクリミア自治共和国で住民投票が行われ、圧倒的多数がロシアへの合流を支持した。

ロシアのプーチン大統領はこれを承認、領土を「取られる」形になったウクライナはもちろん、米国や欧州諸国はこの結果を「不承認」とする態度を決め、ロシアにタイする追加制裁措置を決めた。安倍政権もこれに同調した。

今回の事態によって、第二次世界大戦後の世界は「新たな世界」へと突入したのかもしれない。

■「軍事オプション」を放棄したオバマ政権
ロシアはクリミアにあるウクライナ軍の基地を接収し、ウクライナはムダな衝突を避ける態度を取って、大きな混乱は起きていない。米国のオバマ大統領は、ロシアとの戦争を恐れて「軍事オプション」を取らないことを表明した。制裁にさえ気乗りではなかったドイツなどの欧州諸国は、それ以上に、事態を緊張させないことに腐心している。

これまでのところ、クリミアに対するロシアの実効支配は「既成事実化」が進んでいることになる。要するに、現段階では「ロシアの勝ち」である。

ただ今後、米国などが取る経済制裁の内容によっては、ロシア経済を混乱させることが予想される。世界経済はグローバル化し、依存関係は深まっているから、米国なども「無傷」ではすまない。かといって、米国が制裁措置を発動しないこともあり得ないだろう。いったん発動すれば、ロシアがクリミアを放棄しない限り、少なくても数年は制裁が続くことになる。

ロシアが産出する原油や天然ガス、小麦などの国際価格への影響があり得る。事態の緊張によっては、円高へと振れることも考えられる。世界経済、日本経済にとってもリスク要因である。

■世界の様相が変わるか
第二次世界大戦後、武力による国境線の変更はほとんど行われなかった。分断国家の統合(ベトナム、ドイツ)、宗教などの理由による分裂(旧ユーゴスラビア連邦やスーダン)などの例はあるが、その場合、周辺や利害関係国の同意があった(積極的に同意したか、イヤイヤ同意したかの違いはある)。もっとも、ロシアは旧ユーゴの分裂を認めたくなかったのだが、欧米が「ごり押し」したのが今回のウクライナへの態度(ロシアからすれば「報復」)につながっているというのだが……。

それでも、「認めた」ことに違いはない。対して、イラクがクウエートを武力で併合した際には、多国籍軍による攻撃でクウエートは解放された。このように、「守るべき秩序」というコンセンサスがあったのだが、今回、ロシアはそれをくつがえしたし、米国などもイラクに対してのように攻撃できないでいる。

こうなると、「ロシアに見習おう」と、係争中の領土に軍隊を派遣する国が出るかもしれない。「自分の国は自分で守る」と、核武装に走る国が増えるかもしれない。当然、それに対抗して軍備拡大に走る国も出る。

ロシアが空けたのは、世界の混乱という「パンドラの箱」なのかもしれない。

(編集部)

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