- 2024-5-31
- カルチャー
- 生成アルゴリズムによる江戸小紋新作 !「スイーツ尽くし小紋」誕生までの過程と今後の研究展望 はコメントを受け付けていません
文京学院大学は、経営学部経営史研究ゼミナールと武蔵野大学データサイエンス学部との共同で、技術の継承及び図案の新作誕生が難しい「江戸小紋」に着目し、生成AI関連技術による伝統工芸産業発展の共同研究を2021年より取り組んでいる。同学は「江戸小紋」の特質のマーケティング調査を行い、そこで明らかになった図案の制作理論をもとに、武蔵野大学で開発したオリジナルの生成アルゴリズムを活用した新しい図案をもとに、江戸小紋新作「スイーツ尽くし小紋」ができた。本研究によって制作した新作江戸小紋図案の発表並びに、新図案で染めた新商品の発表会を2024年5月29日に実施した。
■「江戸小紋」新作図案研究とは
川越ゼミでは、デザイン・歴史・グローバルを軸に、歴史を生かした商品開発や老舗企業のブランディングを行っています。2016年からは、埼玉県川越市の伝統的綿織物である「川越唐桟(かわごえとうざん)」の研究・振興に取り組んできた。また2021年からは、着物市場とともに低迷の危機にある「江戸小紋」に関する研究も行っている。
「江戸小紋」は、型染による染物であり、「東京染小紋」として経産省指定の伝統的工芸品にも指定されている。しかしながら、その代表的な技法である錐彫りの紋様は、マニュアル化が難しく教本もないため、図案家が減少している中で、制作理論の伝承が困難になっている。その為現在では、以前の紋様を繰り返し使った復刻、もしくは図案家ではない型紙彫り師や染め屋による少量の新柄しかない。特に、錐彫り技法の「けれんもの」は、小さなモチーフをランダムに配置するため、図案構成が難しく新作がほとんど生まれていない状況だ。
日本の代表的な染色技法の一つである「江戸小紋」において、先人たちが積み重ねてきた技術をアップデートしながら次世代に継承していくことを目的として研究を重ねる中で、AIをはじめデータサイエンステクノロジを専門とする武蔵野大学データサイエンス学部と連携することで、日本初生成アルゴリズムによる江戸小紋新図案が誕生した。
■「江戸小紋」新作図案研究の詳細と新作柄について
今回発表に至った新作モチーフは「スイーツ」で、発表する新作の商品名は「スイーツ尽くし小紋」です。モチーフを同学生が考案しており、「これまでにない」図案であるだけでなく、「スイーツらしく見える」ことを重視し、試作・配置・検証を重ね商品化に至った。
新作の図案化においては、江戸小紋の錐彫りの特徴である点での描き分けが可能なモチーフの選定を100種ほど行う中で、「らしくみえる」モチーフを選定していった。
同学でのモチーフ選定後に、武蔵野大学で「けれんもの」に見えるようにモチーフ自動配置システムの開発を行った。武蔵野大学では、これまで難しかったランダムにモチーフを配置する図案構造を、生成アルゴリズムを活用して生成し、最終的に手作業で配置の修正をすることで、バラエティに富む散らばり方による美しい図案が誕生した。
いくつかのモチーフ図案を東京染小紋の伝統工芸士である五月女利光氏に提案し、「スイーツらしく見える」「シルエットがバラエティに富んでいて散らばり方、ランダム具合が一番美しい」「人気のでそうな図案」という観点から、江戸小紋の新作として「スイーツ」図案が「スイーツ尽くし小紋」として商品化に至った。
■コメント 今後の研究展望
〇文京学院大学 経営学部 川越ゼミ(西 智哉氏・山田 江里氏・湯田 実穂氏・高崎 寛也氏)
今回、このような取り組みを五月女染工場の五月女様、そして武蔵野大学の皆さまとご一緒することができとてもうれしく思っています。また先輩の代から続いてきた本プロジェクトを無事発表することができ、ホッとしました。このプロジェクトは、今後も是非続けていきたいと思っていますし、今後は、今まで誰も思いつかなかったモチーフも作っていきたいと思っています。今回まずは着物製造の現場を支援していますが、このシステムはじつは染物だけでなく、プリントにも応用できます。海外からのお客様の多いホテルや施設などのカーテン、壁紙、椅子の張地などに応用して、「遠目では無地のよう、近寄ると繊細な模様」という江戸的なセンスを活かしたインテリアにもいかしてほしいです。また経営学を学んでいる私たちだからこそ持つ、デザイナーさんとはまた違った視点、たとえば市場起点の開発なども行えたらと思っています。
〇(有)五月女染工場 伝統工芸士(東京染小紋) 五月女 利光氏
まず、着物に学生さんや大学機関が興味を持ってくれることがありがたいです。
そしてこれまでは職人の手作業でしかできなかったことを、最新の技術を活用し再現する、という新たな取り組みをご一緒でき、染め屋としてとてもワクワクしました。一方で、コンピューターだけでは表現できない、着物そのものの良さを引き出す色合いやデザインの最終的な調整は我々にしかできないと思っています。あくまでも、人が完成させる、という根底にあるものは変えずに今後もどんどん挑戦していきたいです。また、今回は江戸小紋での取り組みでしたが、今回から得られた「気づき」もたくさんあります。この「気づき」を皆さんと共有して、長い目線で共に取り組みを進め、業界全体が盛り上がるとよいと思っています。
そして大人として、プロとして、学生さんの挑戦を後押しする存在であり続けたいです。
〇文京学院大学経営学部マーケティング・デザイン学科 学科長 川越 仁恵 准教授
AIの社会への浸透は止まりません。ヒトが面倒だと思い、敬遠した作業を生成アルゴリズムはしてくれます。手のかかる作業をこのプログラムに任せられたら、やり直しを恐れて敬遠していたトライに、軽やかなエラー&リトライを可能にします。たとえ人間の真骨頂である創造的なクリエイティブ産業においても、AIを恐れず使いこなせば、仕事を奪われるどころか、クリエイターの立ち位置そのものが変わります。伝統工芸産業における分業の再編もまた、止められません。分業の鎖が切れ製造そのものが成り立たなくなる前に、最善手はどれか。最新AI関連技術で伝統の鎖をつなぎ止め、未来へ渡します。
〇武蔵野大学データサイエンス学部データサイエンス学科 学科長 中西 崇文 准教授
日本の伝統工芸品の一つ「江戸小紋」の柄の自動生成手法は、決して人間の仕事を奪うのではなく、職人の方々の手助けになったり、後継者不足の状態での技術伝承になったりすることが非常に多いかと思います。その中で、我々は、このような生成アルゴリズムを提示、実装できたことは、非常に大きな一歩であり、日本の文化をより世界へ発信できる可能性も示唆できたと自負しております。今後とも職人の方々、人間を中心として実現する「古典的文化財における人間とアルゴリズム」の研究に邁進したく思います。
〇武蔵野大学データサイエンス学部データサイエンス学科 岡田 龍太郎 助教
本プロジェクトで学生と一緒に考案した江戸小紋柄の自動生成手法は、それ単体で完結するものではなく、最終的な調整には人間の美的感覚に基づく調整を必要としています。それは未完成ということではなくて、人間と機械が協働して創作活動を行う上で、それぞれの強みを活かすのがあるべき形と思っております。皆様の協力があって作られた図案から実際の製品が作られることを嬉しく思っています。
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