- 2024-3-14
- ITビジネス
- 未踏修了生たちによる50以上のITアイディアを展示!「未踏会議2024 MEET DAY」を開催 はコメントを受け付けていません
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)および一般社団法人未踏は、未踏修了生や未踏事業のプロジェクトマネージャーなどのコミュニティ活性化や未踏人材による新たな社会価値創出を促進するための未踏事業関連イベント「未踏会議2024 MEET DAY」を「未踏の日」の2024年3月10日(日)にベルサール秋葉原会場とオンラインにて開催した。
■世界を変えるようなITを活用した50以上の展示を実施
未踏会議2024 MEET DAYは、テーマ「MITOU WONDER」を掲げ、未踏修了生による世界を変えるようなITを活用した50以上の展示を実施し、来場者はその場で体験することができた。
また、ステージ企画として、特別企画(1) 修了生×プロジェクトマネージャーによるトークセッション「未踏へのチャレンジ」~光る君になるために~、特別企画(2)生成AI/LLMトークセッション「生成AI/LLM未踏的ビジネス活用最前線」が実施され、それぞれの専門家が登壇した。
※LLM 大規模言語モデル
基調講演では、東京大学 名誉教授 / 未踏事業 統括プロジェクトマネージャー 竹内 郁雄氏が「未踏事業の魅力」と題した講演を実施した。
■生成AI/LLMトークセッション「生成AI/LLM未踏的ビジネス活用最前線」
本トークセッションでは、さくらインターネット株式会社 代表取締役社長/「未踏IT人材発掘・育成事業」プロジェクトマネージャー 田中 邦裕氏、株式会社NextInt 代表取締役 中山 心太氏、ダイキン工業株式会社 テクノロジー・イノベーションセンター技師長 比戸 将平氏、株式会社LayerX 事業部執行役員 AI/LLM事業部長 中村 龍矢氏が登壇し、昨今注目を集めている生成AIのビジネスへの活用方法などについて語った。
左から順番に、さくらインターネット株式会社 代表取締役社長/「未踏IT人材発掘・育成事業」プロジェクトマネージャー 田中 邦裕氏、株式会社NextInt 代表取締役 中山 心太氏、ダイキン工業株式会社 テクノロジー・イノベーションセンター技師長 比戸 将平氏、株式会社LayerX 事業部執行役員 AI/LLM事業部長 中村 龍矢氏
NextIntの中山氏は、生成AI/LLMに関連するホワイトカラーの仕事について語った。ホワイトカラーの仕事では正解が一つに限らず、ミスがある程度許容される場合があると指摘しました。また、機械学習はこのような「間違いが許される仕事」を置き換えつつあると述べた。生成AIは、最後にホワイトカラーが持っていた不定形の入出力を要する仕事をも奪い始めている。LLMは自然言語を入力として受け取り、処理可能であるため、要件定義がそのまま実行されることと同義だと言える。「ドメイン知識を持つホワイトカラーがプロンプトエンジニアリングによって問題を解決できる時代が到来している。」と、中山氏は結論づけました。
ダイキン工業の比戸氏は、深層学習および生成AIを生産応用に活用しており、生成AI/LLMを用いたビジネスケースを紹介した。ダイキンでは、現場で作業者が何をしているか、そして次に何をしなければならないかを判断するために、AIを用いた画像解析を活用していることを明らかにした。
LayerXの中村氏は、LLMの読み取り能力が優れていることを指摘した。現在、長文の解析を行うプログラムの開発に取り組んでいる。中村氏によると、LLMは多様なシナリオにおいて迅速かつ高精度な結果を提供できるため、プロフェッショナルの専門業務を変革する可能性がある。具体例として、損害保険の募集文書のレビューを挙げた。文書をアップロードするだけで、修正提案が得られる。さらに、アセットマネジメントの分野では、不動産ファンドの設立に関連する様々な契約書や登記簿の処理の自動化について話した。ただし、「金融事業は、ミスが許されないため、最終的には人の手で出力を確認する必要がある。」と付け加えました。
LayerXの中山氏は生成AI/LLMの課題につい、ChatGPTを例にあげた。「ChatGPTは『敬具』を結びの言葉と誤解し、『拝啓』と『敬具』の対応関係を理解していない」と指摘した。AIのアシストによって作業が容易になるものの、その利益を享受するためにはある程度の学習が必要だと述べた。
ダイキン工業の比戸氏は、目的達成に必要な作業を予測する上で、データ収集の重要性を強調した。エアコン修理を例に、「インターネットで修理方法を見つけることはできるかもしれないが、それが正しい修理方法かどうかは確認できない」と説明した。
トークセッションの最後は、生成AI/LLMの今後の展望について、それぞれが語った。
NextInt 中山氏は「10年前の出来事を思い出して、当時と現在を比較。未来を予測してみるとよい。」と語った。
ダイキン工業 比戸氏は「自由な発想で将来大きく跳ねるかもしれないビジネスを考えるのが、未踏。」とまとめた。
LayerX 中村氏は「今年は非常に面白い1年になる。お金を使うのではなく、時間を使って自分の仕事に役立てることを考えて欲しい。」と語った。
生成AI/LLMは日々進化しているだけに、各業界の企業は今後も注目していくことだろう。
■分野・年齢が違う人でも集まれる場所
トークセッションの終了後、さくらインターネット株式会社 代表取締役社長 /「未踏IT人材発掘・育成事業」プロジェクトマネージャー 田中邦裕氏にお話しをうかがうことができた。
編集部:簡単に自己紹介をお願いいたします。
田中氏:さくらインターネットの田中です。現在、未踏プロジェクトのマネージャーを務めており、今回、モデレーターを務めさせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いします。
編集部:まずは、今回のイベントの率直な感想を教えてください。
田中氏:そうですね。例年に比べて非常に活気があり、コロナ前を上回るほどの印象を受けます。
編集部:未踏はふだん、どのような活動をされているのでしょうか?
田中氏:いわゆるセッションを通じて、未踏プロジェクトに関わる方々が発表を行ったり、未踏プロジェクトに関連する製品を紹介したりしています。例年、コロナ禍の影響でイベントはかなり縮小されました。とくに、都市部ではオンラインでの中継に限定されることもありましたが、今年はセッションや展示を組み合わせた形で開催しています。
編集部:生成AI/LLMトークセッションに登壇されていましたが、生成AI/LLMの現状をあらためて教えていただけますか?
田中氏:ディープラーニングは十数年前に始まり、いわゆるGPUと呼ばれる高性能なコンピューティングリソースによって、画像認識技術が飛躍的に向上するムーブメントがありました。この流れの中で、敵対的生成ネットワーク(GAN)が登場し、単に認識するだけでなく、実際に新たなコンテンツを生成する方向へと発展してきました。
例えば、文章から簡単に絵を描くような技術が5~6年前に出現しましたが、この3~4年でその精度は急速に向上し、Stable Diffusionのように非常に正確な絵を描けるようになりました。さらに、過去2年間で、LLM(大規模言語モデル)を代表とする対話型の言語モデルが普及し始めました。つまり、認識タスクから生成タスクへと、大きな変化を遂げてきたのが最近の状況です。これから、その利活用が加速することが期待されています。
編集部:私もいろいろネットを調べておりますが、生成AI/LLMは毎日のように進化していて、とくに画像関連の進化が凄いなと感じております。
田中氏:そうですね。最近は漫画家やイラストレーターも生成AIを積極的に利用し始めていると聞きます。稲見先生が研究されている身体拡張と同様に、クリエイティブな作業の拡張が現在進行形で起こっていると感じられます。
編集部:生成AI/LLMは、まだまだどのように進化するのかがわかりませんが、身近なところでは、どのようなところで利点がございますか?
田中氏:現在の生成AIは非常にユーザーフレンドリーで、アプリケーションへの組み込みが容易です。これにより、私たちが日常使用するアプリケーションがシームレスかつ便利に進化しているのが、まさに今起こっていることです。例えば、Office製品内のCopilot機能では、メールの作成を手助けしたり、パワーポイント資料を簡単に生成したりすることが可能になっています。このような既存製品への組み込みによる利便性の向上が、現在目の前で展開されている現象だと思います。
編集部:一般的なビジネスパーソンへの有用性というのは、どこら辺で出てくるでしょうか?
田中氏:メールを素早く作成したり、PDF文書の要約を行ったり、現代のビジネスパーソンが日々抱える情報の吸収と発信のタスクを大幅に軽減してくれます。多くの情報を扱う必要があるビジネスパーソンにとって、非常に役立つと思います。
編集部:トークセッションでも出てきましたけど、生成AI/LLMの課題はどんなところですか?
田中氏:
そうですね。生成される内容が常に正確なものばかりではないということです。たとえば、チャットGPTに私の自己紹介をさせると、芸人だったり科学者だったりと、あまりにもいい加減な内容を提供することがあります。とくに、ジェネリックな情報を超えた個別の詳細については、しばしば正確さを欠きます。これを「ハルシネーション」と呼びますが、正確性が求められる場面ではAIの情報を100%信用することのリスクがあります。また、AIに過度に依存することで、人間の能力開発がおろそかになるというのも、本末転倒であり、別の課題と言えるでしょう。
編集部:トークセッションで出てきましたが、AIの力を使ってアプリ開発ですとか、海外ではフロンプトエンジニアといってコードを書かないで、実際はエンジニアの仕事をされている方がいらっしゃいます。そういう仕事の状況は今後、どのようになってくるとお考えでしょうか。
田中氏:生成技術、とくにGitHub Copilot(ギットハブ・コパイロット)のようなツールは、コードレビューやコードの修正を助けてくれるため、プログラマーの生産性を劇的に向上させ、能力を格段に高めてくれます。私自身、Pythonを得意とはしませんが、メール処理のような具体的なコードを書く際に必要なライブラリを使用してほしいときに、サンプルコードを提供してくれるため非常に便利です。これは単なるコピペ以上の学びがあり、存在する関数やライブラリの知識を深めることができます。通常、ペアプログラミングや得意な人から学ぶような経験を、ChatGPTとの対話を通じて得られるわけです。
そのため、「プログラムを知らなくてもプログラミングができる」というより、「知らなくてもChatGPTに指導を受けながら学び、プログラミングスキルを身につけることができる」と捉えています。ただ「知らなくても書ける」という表現は少し適切ではないかもしれません。生成AIを活用して学び、その後は自身でコードを書けるようになる、つまりAIから人間への技術移転が行われるプロセスと理解しています。
編集部:ご登壇の方がおっしゃっていましたけど、やっぱり最終的な確認というのは人間が必要だし、それが本当に要件を満たしているかどうかは、やはり人間が確認しないといけないと。
田中氏:生産工場がブラックボックス状態で、単に手順に従って生産するだけか、技術移転を経て最終的にはその工場が独立して製造できるようになるかの違いです。これまでに、日本がモデルとなり中国でも製造が可能になった例があります。ただ日本の指示に従うだけでなく、中国の人々がその技術を理解し、最終的には自ら活用できるようになったわけです。これは日本の産業界では批判されがちですが、技術を移転し、移転元がさらに進化するのであれば、それは良いことです。結局のところ、私たちは自身で学び、成長していくべきだと思います。
編集部:生成AI/LLMとか、未踏会議では、どのようにサポートしていくご予定でしょうか?
田中氏:未踏という社団法人があり、そこでは様々な支援が行われています。例えば、GPUの支援があります。さくらインターネットが提供するGPUを、未踏を経由することで無償で利用できたり、未踏クリエイターが通常は高価なGPUを非常に低価格で利用できるような仕組みがあります。このような支援体制を通じて、クリエイターがプロジェクトを進めやすくなるよう、社団法人未踏がお手伝いをしているというわけです。
編集部:未踏は今後、どのような展開をお考えなのでしょうか
田中氏:未踏についてもっと深く理解していただくことが大切です。これは政府関係者、観光庁の方々、さらには支援者たちにとっても同様です。また、最近では「地域未踏」の取り組みにより、未踏の活動がさらに広がっています。そうした活動を通じて、未踏の本質について理解を深めていくことが一つの目標です。
もう一つ重要なのは交流です。今回も過去のプロジェクトに関わったクリエイターから多くの関心を寄せられ、現在の活動について話し合う機会がありました。「人が繋がる」というのはコミュニティの核心であり、このような会議がコミュニティを強化する契機となり、その輪が広がっていくことでしょう。異なる年代、分野、年齢の人々が、「未踏」という共通のキーワードで一箇所に集まり、新たなつながりを築くことが、このプログラムの最大の価値だと考えております。
編集部:本日は、ありがとうございました。
さくらインターネット株式会社 代表取締役社長/「未踏IT人材発掘・育成事業」プロジェクトマネージャー 田中邦裕氏が語る!未踏が求める若者とイベント
YouTube:https://youtu.be/cC7rR1ga5ts
今回のイベントは、誰でも無料で入場することができるイベントであったため、多くの来場者があった。来場者はAI/LLMについてあらためて理解を深めるよい機会になったことだろう。
■独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
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