- 2015-7-10
- カルチャー
- KADOKAWA・DWANGO, niconico, ニコニコ動画, 川上量生, 沖縄, 通信制高校
- KADOKAWA・DWANGOがぶち上げた!デジタルネイティブ時代の「ネットの高校」設立準備を発表 はコメントを受け付けていません
KADOKAWA・DWANGOは2015年7月9日に、同社のイベントスペース「ニコファーレ」にて発表会を開催し、ITを活用したデジタルネイティブ時代の子供たちに向けて、新たに「ネットの高校」の設立準備をしていることを発表した。
現在の日本では、人口が減少しているにもかかわらず、不登校の生徒数は高止まりしているのが現状である、と同社。こうした生徒たちを取り込みながら、これからの未来を担う子供たちが、より自由に、自身のやりたいことを見つけ、得意分野を伸ばせる環境を作ることにしたという。
ネットの高校は基本的に通信教育と同じ形態を取るが、ITを活用して時間や場所を問わない動画学習や、双方向性を備えた学習プラットフォームを提供するほか、様々な業界のプロによる課外授業や、地方自治体と連携した職業体験を実施する。こうした中で早期に社会で役立つスキルを身につけてほしいと考えているとのこと。
発表会に登壇した川上量生代表取締役社長は、設立の意図について「歴史的な大きな流れとして、教育がネットに移行していくのは明らか。そのような中、KADOKAWA・DWANGOが総力を挙げれば、理想の学校を作ることができるのではないかと思ったのが今回の趣旨」と話す。同社の取締役相談役の角川歴彦氏は「KADOKAWAとDWANGOが統合したのは去年の10月だが、お互いに教育について関心を持っていたことを、統合して初めて知った。KADOKAWAは海外コンテンツスクール事業を展開し、DWANGOはインターネットを活用した学校教育に関心があった」とも。
設立の経緯について川上氏は、同社の関連会社であるMAGES.の代表取締役会長の志倉千代丸氏が言い出したこととであると述べながら、「最初はよく分からなかったが、当社だから今の高校生が望むような高校が作れるという話を聞いて。不登校の問題が起きているが、考えてみれば不登校の子は確実にニコニコ動画を見ている。多分KADOKAWAのライトノベルもよく読んでいる。勉強ばかりしている人にも同じような傾向があって、アニメを見ている人も非常に多い。僕たちだから解決できることがあるのではないかと思った」(川上氏)。また角川氏も「志倉さんの設立趣意書を見て、いちいち突っ込もうと思ったがどれを聞いてもなるほどと思った」と語る。
角川氏は不登校の問題についてグラフを示しながら、「高校における不登校の生徒数は17万人にも及ぶと言われている。しかしこの数字は、高校に入ってから不登校になった人の数字。小中学校で不登校となった子は高校に行かないので、その数に入っていない。不登校は大きな社会問題。僕らが参加して解決できる道があるのではないかと思った。これが今回のテーマ」。
「学校教育制度が制度疲労を起こしているだけでなく、崩壊しているのが現実。大学にしても、高度経済成長期には社会人を育てるためにあったが、経済が多様化し、本来のアカデミックを求められたとき、実は大学生が画一的な人ばかりになっているのが問題。高校も、いい大学に行っていい社会人になるための予備校になってしまった。それではいけないのではないか」(角川氏)。
川上氏は続けて、今の不登校生は、ネットによって救われている部分があるのではないかと語りながら、「こうした人たちは逆に、これからのデジタル時代において、普通の社会人よりも適性があるかもしれない。そういう人たちが潜在的に不登校という形で、日本の隠れた財産として眠っているんだと思う。DWANGOも一番最初は、ネットをやり過ぎてドロップアウトをした人を中心に作った会社。彼らは社会生活をおくる能力は持っていなかったが、プログラミングなど、ネットを作る力は持っていた。そこからうちの会社はスタートしている。若い人たちであれば、こういう人たちも眠っていると思う。やり直せるチャンスもあるし、そういった部分を引き出していきたい」(川上氏)。
学校の形態について川上氏は、通信教育はネットに移行していくとしながら、「通常の学校だと1クラス50人くらい。予備校だと100人単位になっていくが、ネットならば同時に1万、2万の人たちが授業を受けられる。このため一つ一つの授業の中身を作り込むことができる。つまり、質の高い授業をするという点ではネットの方が有利。予備校でもビデオを使った授業をしているが、ネットであれば参加型の、双方向での授業が可能だ」と語る。
川上氏は、現段階では設立準備の段階で、授業などの詳細は語れないとしながらも、「たとえばプログラミングなどについて、授業だけでなく課外授業のような形で学べるようにしたらいいのではないか」とも。これ以外にも「ニコニコ超会議で屋台を出してもいいですね」と、同社のイベントと連動する可能性についても言及した。
また今回設立する高校については、これまで述べたIT教育以外にも、キャリア教育について重視していくとのこと。グループ会社であるバンタンと連携して、各界のプロを講師として招き、ネットでいつでもどこでも参加できる授業を行う予定だそうだ。
なお高校は、沖縄県に対して学校設置等に関わる計画書を提出し、審査中とのこと。沖縄県にリアルな校舎も作られ、スクーリングも沖縄で行われる。なぜ沖縄なのかということについて川上氏は「どうせ行かなければいけないんだったら、沖縄の方がいいんじゃないか」が趣旨とのこと。発表会の最後には質疑応答の時間も設けられたが、授業料やカリキュラムなど、学校の詳細に関しては申請中のため何も話せないという回答。今後認可が下りてから具体的な内容が明らかになっていくのであろう。
KADOKAWA・DWANGOが作るネットの高校。今後も注目していきたい。
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