個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第四十六回


■はじめに
かねてから告知があったとおり、家電量販店のヨドバシカメラが電子書籍サービスを開始しました。

せっかくなので(?)今回はヨドバシカメラの電子書籍サービスを少し触ってみた感想をお知らせしようと思います。

詳細な検証や他ストアとの比較などは他所さまにお任せするとして、こちらでは軽い感じで扱うことにします。

■セットアップと書籍の購入
ヨドバシカメラの電子書籍サービスは、ヨドバシカメラのショッピングサイト「ヨドバシ・ドット・コム」内にオープンしています。

電子書籍サービスを利用するにはヨドバシ・ドット・コムのアカウントが必要になるので、あらかじめ用意しておきましょう。

電子書籍ストアには左上のメニューから「電子書籍」を選択することで遷移できます。

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電子書籍ストアには、専用電子書籍リーダーアプリ「Doly」のダウンロードページへのリンクがあります。

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Dolyは2015年4月1日時点でWindows版、iOS版、Android版がリリースされています。Mac版も追って5月中旬にリリース予定だそうです。

Dolyをインストールして起動すると、大方の電子書籍ストア向けリーダーアプリと同様にアカウント情報を入力してサインインします。

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サインインし、書籍を購入するために下部の[ストア]ボタンをクリックして、ストア画面に切り替えようと思いましたが、ストア画面が表示されません。

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どうやらこの画面では右上の虫眼鏡ボタンによる検索しかできないようです。

検索キーワードを入力すると、リアルタイムで候補が表示されていくのですが、ピックアップされる候補がどうも検索キーワードにそぐわないようです。

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キーワード入力欄でEnterキーを押下すると、本検索が行われて結果が表示されます。

この結果は入力時にリアルタイムで表示された候補とは異なるもので、キーワードを含むものもあれば含まれないものもあり、どうも腑に落ちません。

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別のキーワード(「司馬遼太郎」)を入れてみたところ、今度はリアルタイム候補でピックアップされた書籍のタイトルに、キーワードが含まれていました。

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そのかわり、Enterキーを押下して表示された検索結果はよく分からないものでした。
司馬遼太郎が著者である作品がヒットして欲しかったのですが、どうも期待通りにはいきません。なぜか2冊(「街道をゆく」の36巻と37巻)のみヒットしただけした。

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しかも、この検索結果でピックアップされた書籍はアプリ内で購入できず、Webブラウザが起動されヨドバシ・ドット・コムの購入ページにジャンプさせられることになります。

購入するにはWebブラウザで改めてヨドバシ・ドット・コムにサインインして購入することになります。

[購入ページへ進む]ボタンをクリックするとWebブラウザが起動して購入ページが開く

[購入ページへ進む]ボタンをクリックするとWebブラウザが起動して購入ページが開く

ちなみにこの仕様はWindows版とAndroid版のみで、iOS版では[お気に入りリストに追加]ボタンしかありません。「お気に入りリスト」はヨドバシ・ドット・コム上で気に入った製品を一覧としてピックアップしておく機能で、お気に入りリストに追加しておけば後でWebブラウザからヨドバシ・ドット・コムにアクセスしたときに改めてその書籍を検索して探す必要はありません。

ちなみに、Webブラウザでヨドバシ・ドット・コムの電子書籍ストアにアクセスして検索すると、アプリから検索したのと異なる結果が得られます。

例えば「司馬遼太郎」で検索すると、司馬遼太郎が著者の書籍もピックアップされます。

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結局のところ「ストア」画面からアプリ内で直接購入できるわけでもなく、アプリ内の検索も非常に使いづらいので、単にWebブラウザを起動して電子書籍ストアのトップページを表示するボタンをもう少し小さな扱いで別の場所に配置する方がよかったような気もします。

基本的にはWebブラウザで電子書籍を購入→アプリで閲覧というフローになるので、[ストア]ボタンを下部のメインナビゲーションに配置するのは大げさに思えます。

■ビューワーについて
ヨドバシ・ドット・コムの電子書籍ストアで個人的に良かったのは、お試し版の無料書籍が豊富にあった(あるいは、あるように感じられた)ことでした。

私自身は以前からヨドバシ・ドット・コムで様々な買い物をしていたので、電子書籍サービスのために新たにアカウントを作る必要はありませんでした。ですが、中にはこれを機に新規にアカウントを作られる方もいることでしょう。

「新たにアカウントを作る」というのは結構な負担なので、無料書籍が豊富にあるというのはシンプルかつ効果的な作戦だと思います。

さて、今回はコミック(画像ベースの電子書籍)とエッセイ(テキストベースの電子書籍)を各プラットフォームで見てみました。

コミックについては画像の解像度が低い印象を受けました。セリフの文字、特にルビのような小さい文字が分かりやすく明瞭さに欠けていました。他社の電子書籍サービスでもこんなものかな?と思い、いくつか見比べてみましたがやはりいくらか粗いように感じます。

エッセイ(テキストベースの電子書籍)は、プラットフォーム間の表示や機能に案外違いがあるのが意外でした。

例えば、Windows版では表示フォントをPCにインストールされているものから選べるようになっているのですが、私の環境では何故か何を指定しても変化がありませんでした。表示されるのは、明朝系のビットマップフォントで粗い表示でちょっと読む気にならないレベルでした。

また、マーカー機能はiOS版とAndroid版のみで可能、選択箇所のテキストを内蔵辞書で調べるのはiOS版のみで可能でした。

iOS版の内蔵辞書機能

iOS版の内蔵辞書機能

さらに、他言語用の辞書も追加できるようで、この点はちょっと驚きました。

iOS版の他言語辞書機能

iOS版の他言語辞書機能

iOS版やAndroid版では、スマホ向けOSらしく、文字サイズをピンチ操作で変更できるのですが、行間の変更はできないようです。

個人的にもう少し広めの方が好みになのでこの点は残念です。

また、設定項目が色々なカテゴリごとにズラッと並んでいるのですが、ある種の圧迫感というか威圧感というか触りにくい印象を受けました。

iOS版の設定画面

iOS版の設定画面

この辺りはまとめ方を工夫して、設定画面で設定できる項目やビューワー上で設定できる項目など分けたりしてもよかったのではないかと感じました。

■最後に
全体的には、後発の割にところどころ「アレ?」と思うところが見受けられる印象です。
今後重要なのは、ユーザーの意見を汲み上げ、分析し、サービス向上に繋げることだと思います。その部分で、無料のサンプル書籍が多いのはユーザーの意見の収集に役立つのではないでしょうか。

あと、少し気になったのはシステム開発者視点(出版者や読者の視点ではなく)みたいな部分をところどころに感じたことです。

例えば、ある種の威圧感を感じるほど設定項目がたくさんあるのに行間の設定ができないとか、ページ余白という設定項目の設定値が6~15の数値で指定する仕様になっているが、設定を完了してビューワーで見てみないと結果が分からない(設定時に直感的に分からない)とか、そういった点です。

個人的にヨドバシ・ドット・コムはよく利用するので、頑張って欲しいところではあります。

例によってハンズオントレーニングのお知らせです!
いずれも原宿のロクナナワークショップのハンズオン講座です。

「Amazon:Kindleストア用電子出版講座」
Kindle向けの電子書籍の制作とリリースの手順を扱った講座です。
次回は5月29日の予定です。

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iBooks Authorを利用した電子書籍の制作と、iBooksストアへのリリース手順を扱った講座です。
次回は6月9日の予定です。

いずれも、電子書籍の制作はハンズオン、リリースの手順はセミナー形式で行います。

是非ご参加ご検討ください!

■著者プロフィール
林 拓也(はやし たくや)
テクニカルライター/トレーニングインストラクター/オーサリングエンジニア
Twitter:@HapHands
Facebook:https://www.facebook.com/takuya.hayashi

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