- 2026-11-7
- カルチャー
- 伝統の奈良一刀彫を現代の暮らしに!「NARADOLL HIGASHIDA」の挑戦【天理 倉の耕流祭】 はコメントを受け付けていません
巧みな彫刻技術によって生み出された木の造形に、鮮やかな色彩と金箔が華やかさを添える。精緻な彫刻と繊細な彩色が美しく調和した工芸品が、奈良に約900年続く伝統工芸「奈良一刀彫(ならいっとうぼり)」だ。奈良県天理市を拠点とする「NARADOLL HIGASHIDA(ナラドール ヒガシダ)」では、三代目の一刀彫職人 東田茂一氏が、伝統的な技法を守りながら、現代の暮らしに調和する雛人形や兜などを製作している。2026年11月6日(金)から8日(日)まで開催されるオープンドア・イベント「天理 倉の耕流祭」では、JR・近鉄天理駅の南側にある天理駅前広場コフフン内の「南団体待合所」で作品展示を実施している。
■約900年の伝統を受け継ぐ「NARADOLL HIGASHIDA」
「NARADOLL HIGASHIDA」は、奈良県天理市遠田町を拠点に活動する、奈良一刀彫の工芸ブランドだ。代表を務める東田茂一氏は、奈良一刀彫の三代目。2000年から父である二代目・東田天光氏に師事し、2006年に独立。その後、2014年に自身のブランド「NARADOLL HIGASHIDA」を立ち上げた。
奈良一刀彫の歴史は、約900年前の平安時代末期にさかのぼるとされる。その起源は、奈良の春日大社の摂社で行われる「春日若宮おん祭」にあるという。当初は神事に用いられる人形だったが、時代とともに用途が広がり、雛人形や能人形なども製作されるようになった。幕末から明治時代には、名工・森川杜園(もりかわとえん)によって芸術性が高められ、奈良を代表する伝統工芸として受け継がれてきた。
奈良一刀彫の大きな特徴は、ノミの彫り跡を生かした巧みな造形と、華やかで繊細な彩色だ。
東田氏は、伝統的な技術を大切にしながら、細部までこだわった繊細な表現を追求し、現代の生活空間にも美しく調和する作品づくりに取り組んでいる。
■大胆な彫りと繊細な彩色!奈良一刀彫の製作工程
NARADOLL HIGASHIDAの作品は、職人による手仕事で製作されている。主に使用する木材は、社寺建築にも使われる米ヒバだ。丸太で仕入れた木材を板に加工し、約3年間かけて十分に乾燥させるという。乾燥した木材を作品の大きさに合わせて切り出した後、中心となる位置に線を引く「墨打ち」を行い、ノミを使った彫刻作業へと進む。
「一刀彫」という名前から、一本の刀で一度に彫り上げるような印象を受けるかもしれない。しかし、実際には用途に応じて複数のノミを使い分け、粗彫り、中彫り、仕上げという工程を重ねていく。
彫刻を終えると、彩色の工程に入る。天然由来の接着剤である膠(にかわ)を使って下地を整え、牡蠣の貝殻などを原料とする白い顔料「胡粉(ごふん)」を塗り重ねる。その後、日本画に用いられる水干絵具や岩絵具などで彩色し、金箔や墨を使って丁寧に仕上げていく。
こうした工程を経て、精緻な彫刻と繊細な彩色が美しく調和した、奈良一刀彫ならではの作品が生まれるのだ。
■伝統工芸を現代の暮らしに!雛人形や兜を製作
NARADOLL HIGASHIDAでは、奈良一刀彫の伝統技術を生かし、雛人形や五月人形などの節句人形を中心に製作している。代表的な作品が、雛人形の「ひいな」シリーズだ。シンプルな造形と鮮やかな彩色を特徴とし、吉野山色、赤橙色、緋赤色など、さまざまな色合いを展開している。
また、「かざりひいな」は、現代の住空間にも取り入れやすい、落ち着いたデザインが特徴だ。
端午の節句に向けては、「かぶと」シリーズを展開。群青色や白群色、若葉色など、従来の五月人形とは異なる色彩を取り入れている。
こうした作品には、伝統的な節句人形の意味を大切にしながら、現代の暮らしに自然に溶け込む工夫が施されている。
東田氏がブランドを立ち上げる際に掲げたのが「原点回帰と進化」という考え方だ。
約900年にわたって受け継がれてきた技術や美意識を守りながら、現代の感覚に合うデザインを取り入れる。単に昔からの形を残すだけでなく、伝統工芸が持つ本来の魅力を見つめ直し、新しい価値を生み出すことを目指している。
■「天理 倉の耕流祭」で奈良一刀彫の作品を特別展示
今回の「天理 倉の耕流祭」では、NARADOLL HIGASHIDAが作品展示を実施している。
会場はJR・近鉄天理駅の南側にある天理駅前広場コフフン内の「南団体待合所」だ。完成した作品を展示するだけでなく、作家の東田茂一氏と対話しながら、作品に込められた思いやブランドの考え方を知ることができる。
開催日時は11月6日(金)と7日(土)が11時から16時まで、8日(日)が11時から15時まで。予約不要で、参加費は無料となっている。
今回の展示で注目したいのは、完成した作品を間近で見られるだけでなく、作り手の考え方にも触れられる点だ。
一体の人形を製作するまでには、木材の乾燥から彫刻、彩色まで、数多くの工程が必要となる。その背景を知ることで、完成品を見るだけでは気づかなかった魅力が伝わってくる。
■伝統を守りながら進化する、奈良一刀彫の魅力
今回、NARADOLL HIGASHIDAの作品に触れて印象に残ったのは、約900年続く伝統技術が、現代のデザインと見事に調和していることだ。優美な造形と、日本画の技法を取り入れた繊細な彩色が美しく調和している点は大きな魅力であり、従来の節句人形とは異なる新鮮な印象を受けた。伝統工芸を未来へつなぐためには、技術を守るだけでなく、時代に合わせた新しい表現も必要となるのだろう。
「天理 倉の耕流祭」は、普段は触れる機会の少ない地域のものづくりや文化を知ることができるイベントだ。
NARADOLL HIGASHIDAの取り組みは、日本の伝統工芸が持つ可能性を、あらためて感じさせてくれるものだった。
■NARADOLL HIGASHIDA
■天理 倉の耕流祭 2026
■天理 倉の耕流祭 2026 特設サイト
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代表取締役・ITライフハック代表
ITライフハック編集長・ライター
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