- 2026-6-23
- ITビジネス
- 延長保証は“売って終わり”を変えるか。テックマークジャパンが挑む「ノンメカニカル保証」 はコメントを受け付けていません
物価高や修理費の高騰を背景に、「壊れたら買い替える」から「長く使い続ける」へと消費者の意識が変化している。こうした中、延長保証サービスを手がけるテックマークジャパン株式会社は、2026年6月17日(水)、島村楽器株式会社、株式会社ビジョンメガネを招き、「延長保証でノンメカニカル領域に挑む」をテーマとしたラウンドテーブルを開催した。
延長保証といえば、これまで家電や住宅設備、自動車などを中心に広がってきた。今回の対談では、楽器やメガネといった従来の延長保証の対象外だった分野を舞台に、延長保証の新たな役割が語られた。
■「スタートボタンのない商品」への挑戦
テックマークジャパンは、AIGグループの一員として30年以上にわたり延長保証制度の設計・運営を手がける企業だ。
同社社長の長谷川俊哉氏は、「家電や住宅設備、スマートフォンといった、いわゆる“スタートボタン”のある商品については幅広く延長保証を提供してきた。しかし今回は、それとは異なる、電気・機械製品ではない商品を対象とした“ノンメカニカル分野”に挑戦している」と述べた。
その発想の原点として、長谷川氏は海外の延長保証会社とのやり取りを紹介した。「対象製品は何か」と尋ねたところ、「スタートボタンがあるものすべてがターゲット」という答えが返ってきたという。この言葉をきっかけに、同社ではスタートボタンのない商品の可能性にも目を向けるようになった。
その上で、テックマークジャパンはさらに一歩進み、楽器やメガネなど、従来の延長保証の枠組みでは捉えにくかった領域「ノンメカニカル領域」への取り組みを広げていることを語った。
同社の強みは、30年以上にわたって蓄積してきた膨大な保証・修理データだ。保証加入製品数は1億5000万件超、修理実績は1000万件超に及ぶ。こうしたデータを活用しながら、企業ごとにオーダーメイドの保証制度を構築している。
■島村楽器「“音楽を続ける”を支える」保証
島村楽器は、全国180店舗以上を展開する楽器専門店売上高で国内No.1、世界第6位を誇る企業だ。同社では電子ピアノから延長保証を導入し、その後ギターやシンセサイザーへと対象を広げてきた。
同社社長の廣瀬利明氏は、「店頭では以前から延長保証を求める声が多かった」と振り返る。「お客様からの『電子ピアノに延長保証はないのか?』という声を、現場でよく聞いていた。実際に『保証があれば買うのに』という声も多数あった。その声を形にしたいという思いが、楽器向け延長保証導入のきっかけになった」
興味深いのは、延長保証が“販売促進の施策”としてではなく、“顧客サービス”として現場に受け入れられたことだ。
「現場に、私から加入率を上げろと言ったことは一度もない。ところが、延長保証のサービスを求めるお客様が確実に増えている。『お客様のためになるサービスだ』と現場が理解し、自発的に提案し、そのニーズが合致したことが現在の伸びにつながっている」(廣瀬氏)
電子ピアノの鍵盤の隙間に異物が落ちるトラブルや、ギターの転倒によるネック破損など、高額な修理が必要になるケースがある。これまでは修理がメーカー側で完結することも多く、販売店側が故障や破損の実態を十分に把握できていなかったという。
「お客様との接点となる販売店側が、さまざまな破損原因を知ることで、販売する際の顧客満足度の向上につながった。延長保証を利用した顧客から感謝の声が多数寄せられることで、現場スタッフもサービスの価値を実感するようになった」という。
廣瀬氏は、「楽器を売って終わりではない。買った楽器を長く楽しみ続けられる環境づくりが大切だ」と語る。
島村楽器では、楽器教室や音楽スタジオを運営しているほか、2026年6月には音や楽器の世界を題材にした体験型屋内テーマパーク『OTOVIVA(オトビバ)』もオープンした。こうした「音楽を続けるための環境づくり」の一環として、延長保証も位置づけられている。
■ビジョンメガネが目指すのは「地域のかかりつけメガネ店」
創業50年、全国101店舗を展開する老舗メガネチェーンのビジョンメガネは、国内で初めてメガネ向け延長保証を導入した企業だ。同社社長の安東晃一氏は、メガネ特有の課題として「見え方」を挙げる。
「メガネは単に壊れるだけではない。度数の変化による見え方の不具合が生じることがある。特に成長期の子どもは度数変化が大きく、破損も多い。買い替えや度数変更といった保護者の方の負担を軽減したかった」(安東氏)
同社の保証では、破損だけでなく見え方に関するサポートも提供している。延長保証を導入した当初は、現場から「本当に必要なのか?」といった慎重な声もあったという。
しかし、実際に保証を利用した顧客から、「入っていてよかった」という声が多数届くようになり、延長保証に対する社内の評価も変化した。
同社が提供する子ども向け有料保証「ビジョンパーフェクト保証[美脇3.1]」は、3年間何度でもレンズ交換やフレーム修理・交換に対応するものだ。購入者の加入率は0~9歳で78.1%、10~14歳で52.9%に達しており、成長に伴う度数変化や破損への備えとして高い支持を集めている。
安東氏は、「保証があることで、お客様が気軽に相談に来店できるようになった。メガネ店は用事がないとなかなか入りにくい場所。しかし、保証があることで来店のきっかけになり、顧客満足度も大きく向上することにつながった」と、保証が顧客との関係づくりにも役立っていると語る。
さらに保証期間満了後にはクーポンを提供し、万が一保証を必要としなかった場合も、それが“掛け捨て”にならない工夫も行っている。
「保証制度は、リピーターづくりのツールとして、ビジョンメガネとの継続的な関係づくりにもつながっている。困ったときに相談できる『地域のかかりつけのメガネ店』を目指したい」
■延長保証は顧客との関係を育てる仕組みへ
今回の対談で共通していたのは、延長保証を単なる故障対応として捉えていない点だ。テックマークジャパンの小坂淳営業部長は、延長保証を「LTV(Lifetime Value/顧客生涯価値)を高めるマーケティングツール」と位置づける。
つまり延長保証は、「保証で利益を取る」のではなく「保証をきっかけに長くお付き合いする」というもの。購入者に安心を提供するだけでなく、企業側にとっても継続的な顧客接点を生み出す役割を担う。
3社の話から見えてきた延長保証の価値は、大きく7つある。
<延長保証がもたらす7つのメリット>
1. 顧客接点を増やす
故障や不具合が発生した際に、顧客が店舗や企業に相談するきっかけになる。
2. 長期的な関係づくり
商品購入後も継続的なサポートを通じて、顧客との信頼関係を築ける。
3. 継続利用を促進する
「安心して長く使える」という価値を提供することで、商品の利用継続につながる。
4. リピート来店につながる
修理や相談をきっかけに再来店が生まれ、新たな提案や買い替え機会にもつながる。
5. 顧客満足度を高める
万が一のトラブル時にも手厚い対応が受けられることで、企業やブランドへの信頼が向上する。
6. 顧客データの蓄積・活用
故障や修理履歴を分析することで、商品開発やサービス改善に役立てられる。
7. 購入時の不安を軽減する
「壊れたらどうしよう」という心理的ハードルを下げ、購入を後押しする。
■保証の価値は「修理」から「関係づくり」へ
今回、島村楽器は「音楽を続けるための支援」として、そしてビジョンメガネは地域に根差した「かかりつけ店」になるための仕組みとして延長保証を活用している。
両社に共通していたのは、延長保証を単なる故障対応ではなく、顧客との接点を生み出し、信頼関係を深めるための仕組みとして捉えている点だ。
延長保証は、もはや壊れた製品を修理するだけのサービスではない。購入後も顧客とのつながりを維持し、長期的な関係を築くための仕組みへと進化しつつある。
テックマークジャパンが挑むノンメカニカル領域への展開は、延長保証の新たな市場を切り拓くだけでなく、「売って終わり」から「つながり続ける」へ。テックマークジャパンが挑むノンメカニカル保証は、延長保証そのものの役割を問い直す取り組みとして注目されそうだ。
テクニカルライター 脇谷 美佳子
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代表取締役・ITライフハック代表
ITライフハック編集長・ライター
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