- 2026-4-10
- ITビジネス
- お金は“勝手に動く”時代へ──Evernorth 最高執行責任者が語る金融の次の当たり前 はコメントを受け付けていません
「お金は、なぜ“銀行の営業時間内”でしか動かないのか?」。この当たり前に見える制約が、いま“技術と資本”によって大きく書き換えられようとしている。2026年4月7日(火)、東京・白金台の八芳園で暗号資産XRPの普及とエコシステム拡大をテーマにした国内初の公式Web3カンファレンス「XRP TOKYO 2026」が開催された。そこで語られていたのは、金融の仕組みそのものの変化だった。
近年、注目を集めるWeb3とは、ブロックチェーン技術を基盤に、データや資産の所有権を個人や企業が直接持つ分散型のインターネットの概念だ。この仕組みは金融の分野で先行して実装が進んでいる。そうした中、SBIホールディングスが約300億円を投じる米エバーノース社(以下、Evernorth)は、暗号資産XRPを活用した“トレジャリー企業”(暗号資産を保有・運用し、市場に資金や流動性を供給する会社)として注目を集めている。
本稿では、このイベントに登壇した同社COO(最高執行責任者)、メグ・中村氏への個別インタビューを通じて、金融が“コードに変わる瞬間”のリアルを読み解く。
■金融はコードになる──Web3がもたらす変化
Web3とは、データや資産の所有権を個人や企業自身が直接もつことを目指す新しいインターネットの形だ。従来のWeb2では、価値はプラットフォームに集中してきたが、Web3ではそれが分散される。とりわけ金融分野では、送金や決済は銀行を介さずリアルタイム化し、資産はトークンとしてデジタル化されることで、より柔軟に扱えるようになる。
EvernorthのCOO、メグ・中村氏は、「将来的には、金融システムそのものがブロックチェーンによって動くようになる」と話す。
Evernorthは、Ripple Labs出身の中核人材によって立ち上げられた、“XRPを実際の金融として回すための会社”だ。機関投資家の資金を背景にXRPの保有・運用を行い、市場に流動性を供給することで、そのエコシステムを現実の金融市場に接続している。
また、同社は米ナスダック市場への上場を視野に入れており、機関投資家の資金を取り込みながらXRP市場の中核的なプレイヤーとなることを目指している。
■なぜいまSBIホールディングスが300億円を投資したか
今回の動きで注目すべきは、個人ではなく機関投資家の資金が本格的に流入し始めた点だ。SBIホールディングスがEvernorthに約300億円を投じたことは、その象徴といえる。背景には、これまで揃っていなかった条件が整いつつあることがある。「これまでもブロックチェーンの技術自体は優れていた。ただ、規制や資本が整っていなかったためにスケールしなかった」と述べ、
「テクノロジー(技術)、レギュレーション(規制)、そしてキャピタル(資本)。この3つが揃ったことで、いまようやくスケールできる環境が整った。いまは非常にエキサイティングなタイミングだと感じている」と話す。つまり、「実験」ではなく“実装フェーズ”に入った瞬間だ。
■XRPは“通貨”ではなく“金融のレール”になる
XRPはその中心にある。従来の国際送金は複数の銀行を経由するため、時間もコストもかかったが、XRPを使えば送金は数秒で完了し、コストも大幅に削減される。
<送金速度と手数料比較>

XRPは、米Ripple Labsが開発した、国際送金を高速・低コストで実現するためのデジタル資産だ。重要なのは、これを「通貨」ではなく、価値を運ぶインフラ=レールとして捉えることだ。
■お金が“自動で動く”時代へ
この変化を象徴するのが、「金融のプログラマビリティ」だ。「金融はこれまで、平日の9時から17時までしか動かないものだったが、グローバル化したいま、それはもう限界」と中村氏は指摘する。
「寝ている間でもあらかじめ設定したルールに従って資産が動くようになる。例えば、地震が起きたら株を売る、といったルールを設定すれば、寝ている間でも自動で実行できるようになる」
これは投資家だけの話ではない。将来的には、給与の振り分けや支払い、保険、投資まで、個人の資産管理そのものが“自動化”されていく可能性がある。つまり、お金は“人が動かすもの”から、“勝手に動くもの”へと変わり始めている。
■サンフランシスコではすでに日常
こうした変化は、すでに一部の地域では現実になっている。
「サンフランシスコでは、こうした仕組みが普通に使われている。AIが自動で決済する未来も、すでに日常の延長線にある」
サンフランシスコでは、すでに「ブロックチェーンを使っている」という意識すらない。レストランの支払いは即時に完了し、海外送金も数秒で届く。さらに、AIエージェントがユーザーの代わりに支払いを行ったり、資産を自動で運用──そんな使い方が、日常の延長線上にある。
例えば、「毎月の家賃は自動で支払う」「為替が一定水準になったらドルに換える」といった処理も、あらかじめ設定しておけば自動で実行される。お金は“操作するもの”ではなく、“条件に応じて動くもの”へと変わり始めている。
一方、日本ではキャッシュレス決済の普及は進んだものの、金融サービスの多くはいまだ銀行や証券会社の営業時間に依存している。利便性は向上しているが、「お金そのものが自律的に動く」という段階には至っていない。
しかし中村氏は、「日本は市場規模が大きく、信頼性も高い。日本で成立するモデルは、世界でも通用する」と指摘する。変化は緩やかだが、確実に進んでいる。
重要なのは、それが“未来予測”ではなく、すでに一部で実装されている現実だという点だ。一方、日本について、「日本は非常に大きく、信頼性の高い市場。日本で成功できれば、どこでも成功できると思う」と語る。
変化は緩やかだが、確実に進んでいる。
■Evernorthという“実装する側”の企業
Evernorthは、こうした変化の中で生まれた新しい金融プレイヤーだ。特徴は単なる技術活用にとどまらない点にある。インフラと資本運用、その両方を理解したチームで構成されている点にある。
同社のCEOは、Ripple Labsで長年中核を担ってきた人物であり、XRPエコシステムの成長を内側から支えてきた。一方、COOのメグ・中村氏も、金融コンサルティングからフィンテック、起業、投資まで幅広い経験を持ち、2010年代初頭からブロックチェーン領域に関わってきた。
「2008年からフィンテックに関わり、投資や起業も経験してきました。2012年ごろにビットコインやリップルに出会い、その可能性を強く感じた」
その上で、Evernorth参画の理由を「次に何が来るかを考えたとき、ブロックチェーンだと確信した」と語る。つまりEvernorthは、Ripple Labsが構築した世界を、“金融として回す側”のプレイヤーだ。
■Evernorthの競争優位性は「人」
ではEvernorthの強みは何か。「一番は人」と中村氏は即答する。「メンバーは精鋭の7人。全員が非常に高い専門性を持つ、いわば“オールスター”のようなチーム」
現在は分散したリモート体制で運営されているが、チームビルディングにも強いこだわりを持つ。「私はバスケからゴルフなどさまざまなスポーツをずっとやってきたので、チームを作るのは好き」と笑顔になる。金融とテクノロジー、その両方を理解する人材の集合体。それがEvernorthの本質だ。
■金融は“仕組み”から“コード”へ
今回の動きが示しているのは、暗号資産の価格や投資機会ではない。金融そのものの構造変化だ。送金はリアルタイム化し、資産はデジタル化され、取引は自動化される。その結果、金融は「仕組み」ではなく「コード」として再構築されていく。中村氏は「金融の未来は、ブロックチェーンによって支えられる」と語る。
メグ・中村氏のこの言葉は、すでに現実になり始めている。ゆっくりと、しかし確実に。お金の流れ方そのものが、いま書き換えられている。
テクニカルライター 脇谷 美佳子
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代表取締役・ITライフハック代表
ITライフハック編集長・ライター
ITライフハック副編集長・ライター
