米国で12月17〜18日、連邦公開市場委員会(FOMC)が行われ、金融緩和の縮小(出口)をめぐる議論が行われた。
この結果については次回に譲りたいが、世界経済に大きな影響を与える会合だけに、これを見越した各国政府・中央銀行の動きは活発だ。
微妙な経営運営が続いている、インドとインドネシアを取り上げよう。
■金利を据え置いたインド
インド準備銀行(中央銀行)は18日、政策金利(7.75%)の据え置きを決めた。市場関係者の予想は「利上げ」だっただけに、予想外といえた。
インドはインフレが続いており、これを抑えるために9、10月と連続して利上げしてきた。今回もそれが続くと見られていたのだ。だが、ラジャン準備銀行総裁は、インフレ対策を重視する姿勢を見せつつも、国内経済が10年ぶりの低成長にあることから、利上げを見送ったと表明している。
インドの2013年度(13年4月〜14年3月)の成長率は5.5%未満が見込まれており、7%以上の成長が続く中国とは大きな差がある。インドの潜在成長率は7%以上とされているので、これも下回っている。
低成長の背景は、5月に米国の「出口」観測が浮上したことから、世界の資金がインドから流出し、米国に還流し始めていることが大きい。インドの場合、経常収支が赤字であること、国内産業を保護するための規制が多いことが、投資家や企業に嫌われているのだ。資金流出を止めるには金利を上げ、規制緩和もしなければならない。だが、景気後退時にこれらを行うとさらに景気を悪化させなけないので、行いにくい。来年5月頃に総選挙が予想され、国民に不人気の政策を行いたくないという事情もある。
早晩、再度の利上げは避けられないと見るが、経済政策は実に難しくなっている。
■通貨下落のインドネシア
インドネシアでは、通貨ルピアが4年9カ月ぶりの安値水準となっている。この6月以降5回も金利を引き上げている(現在7.5%)のに、通貨安が止まらないのである。
こちらもインドと同様、資金流出による「ルピア売り」が背景だ。インドネシア経済の不安定要因は、天然ガスなどの資源に依存した経済であるがゆえ、この国際価格で経済や国家財政が大きな影響を受けることだ。米格付け大手のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は5月、インドネシアの国債格付けの見通しを引き下げている。
インドネシア政府は、財政を健全化させるため、輸入に頼っているガソリンへの補助金を削減したりしているが、これは国民の反発を受けて思うに任せない状態だ。ここ数年の経済発展で、国民は民主主義に対する意識も高まっているし、労働運動も盛んになっている。最低賃金の引き上げなどを求める労働者のストライキが増えていることたことも、政治の不安定化、ひいては資金流出の背景の一つだ。
今後、インドやインドネシアの経済が急激に悪化するということが言いたいわけではない。インドもインドネシアも十分な外貨準備を有しており、通貨下落が危機的な水準に達することはないと思われる。
ただ、米国の経済政策が新興国に大きな影響を与えることは、ぜひ知っておきたい。
(編集部)
※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。