2013年のIT業界と今年の展望 注目銘柄を斬る【ビジネス塾】


2013年も、IT(情報技術)業界は大きく揺れ動いた。昨年の変化の特徴について触れ、2014年以降のトレンドについても見通してみたい。

第一の特徴は、IT機器の中心がスマートフォン(スマホ)とタブレット端末に急速にシフトし、パソコンの衰退が鮮明になったことである。すでに、国内で発売される携帯電話の過半がスマホとなった上、唯一、米アップルの「iPhone」を取り扱っていなかったNTTドコモ<9437>も販売を開始したことが大きい。法人による、タブレット端末の大量導入も進んでいる。

他方、国内パソコン大手の出荷台数はピーク時より2割以上も減少した。米マクロソフトの「Windows 8」が追い風になると思われていたが、予想を下回っている。各社は、今年4月にサポートが切れる「Windows XP」を置き換る法人需要に頼っている現状だ。

好調なスマホにおいても、NECカシオモバイルコミュニケーションズ(NEC<6701>)、パナソニック<6752>が撤退するなど、国内勢は海外勢に押され続きである。ソニー<6758>は健闘しているが、もっと斬新な製品開発が求められよう。

■早くもポスト・スマホの動きが……
次は早くも「ポスト・スマホ」の動きが始まっていることだ。ソニーや韓国・サムスン電子が時計型端末を発売、米グーグルもメガネ型端末を公開テスト中だ。

だが、腕時計型の2機種は単独では動作せず、別途スマホと連携する仕様であることが普及のネックである。来年には米アップルも同種製品を発売するという予想もあり、この市場が立ち上がるのは2014年以降のこととなろう。

三番目が、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)とビッグデータである。SNSをめぐっては、米「Facebook」の普及だけでなく、国産の「LINE」が全世界で3億人を超えるユーザーを獲得するなど、勢力図の変化はめまぐるしい。対して、ミクシィ<2121>は明確な戦略が見えず、厳しい。

ユーザーのSNS上での立ち振る舞いの増加は、ビッグデータに対する注目が集まっていることに大きく影響を与えている。現在、ビッグデータ活用は、ようやく成熟の前段階にあるというべき時期である。国内では、NTTデータ<9613>、日立製作所<6501>、富士通<6702>などが、リアルタイムのデータ分析と経営への活用を競い合っている。

■LINEの成功事例に学びたい
第四に、クラウドコンピューティングの進展である。現在は、企業の情報システムをクラウドを前提に構築することで、コストダウンとデータバックアップの両方を実現するという点が注目されている。企業の場合、以前のIT資産との整合性を取ることが欠かせないため、実績のあるシステムベンダーが既存システムの「クラウド化」を図ることが主流である。NTTデータ、NEC、富士通などがこのビジネスを重視している。

最後に、国産半導体業界の不振にもふれておきたい。2013年は、エルピーダメモリが米マイクロンの子会社となり、産業革新機構などがルネサスエレクトロニクス<6723>の増資を引き受けるなど、国産半導体業界には大きな動きがあった。パナソニックも3工場を切り離し、イスラエル・タワーセミコンダクターとの合弁会社に移管すると発表。富士通も三重工場を連結対象から切り離す方針だ。

政府は「日本再興戦略」で産業再編を打ち出しており、国内半導体業界がこのまま「終えん」となるかどうかは予断を許さない。

長年の課題だが、「日本発」で世界をめざす製品やサービスの登場が待たれる。この点で、LINEは韓国NHNの子会社だが、ソフトは国産。2014年夏の上場が期待される。これに続く企業の登場が待たれる。

株価的にはNTTデータに注目。今期が短期的な業績の底となる可能性が高く、来期以降の躍進に期待。時価近辺の株価は割安で、時価から5割高水準程度までは十分期待できそうだ。

(小沼正則)

※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。

■電子書籍好評発売中(AmazonよりKindle版
あのファーストリテイリング(ユニクロ)を真っ先に推奨したこ
とで知られる“銘柄発掘のカリスマ”小沼正則の投資・ビジネ
ス塾が電子書籍になりました。第一弾は、最新情報と投資へ
のノウハウを読みやすくまとめ、初心者にもわかりやすくな
っています。スマホやタブレットでいつでも手軽に読めます。
まもなく第二弾、第三弾が登場しますのでご期待ください。

ITライフハック
ITライフハック Twitter
ITライフハック Facebook

ビジネス塾に関連した記事を読む
安倍政権は視界良好!靖国問題は新たな逆風?
中期成長力大のジェネリック関連に妙味! 注目銘柄を斬る
米国の「出口」で新興国経済はまたも不安定に?



関連記事

コメントは利用できません。

カテゴリー

アーカイブ

ページ上部へ戻る