国際展開加速で注目されるメガバンクの株価動向 注目銘柄を斬る【ビジネス塾】


長期のデフレ不況で沈滞していた日本国内の資金がようやく動き出した。3メガバンクによる国内向け貸出は昨年11月末で約438兆円と、27カ月連続で伸びており、これは過去最長となる。理由は、中堅・中小企業による設備投資の広がりで、とくに省エネ性能の高い最新設備への入れ替えが目立つ。

メガバンク側も、三井住友銀行が中小企業に設備資金を貸し出すための専用ファンドをつくるなど、態勢整備を進めている。

■国際展開を加速
3メガバンクの存在感は国際的にも増しており、その勢いは、国内向けの伸びを大きく凌駕する。邦銀の海外資産は約15年ぶりに100兆円を上回ったが、その大部分、90兆円以上が3メガバンクによるものである。

3メガバンクの「プロジェクトファイナンス」(資源開発やインフラ整備などへの大型融資)組成案件における2013年の世界シェアは13.4%と、前年から0.5ポイント上昇の過去最高。順位でも、三菱UFJ FG<8306>(2位)、三井住友FG<8316>(4位)、みずほFG<8411>(5位)と、すべて5位以内に食い込んだ。世界全体の組成額が15%減少する中で、存在感を発揮した格好だ。

主なものを見ると、三菱UFJが出光興産<5019>のベトナムでの製油所建設や、オマーンの淡水化事業、三井住友は、オーストラリアでの淡水化事業を主導した。

3メガバンクの海外融資は、全体で、9月末で約46兆円に達した。リーマン・ショックや「ソブリン(国家債務)危機」で欧州銀行が国際業務を縮小する動きを強める中、邦銀は財務上の優位性を生かし、グローバル化のテコとしているといえるだろう。

■M&Aでアジア進出
従来、3メガバンクの海外戦略は法人金融、中でも、海外進出した国内企業への資金調達が中心だったが、ここへきて総合的なサービスへのシフトしつつあるようだ。

その戦略実行の要が、海外でのM&A(合併・買収)である。アジアでの旺盛な資金需要を取り込み、収益力を向上させることが目的である。

三菱UFJはタイのアユタヤ銀行を約5600億円で買収し、約3兆円の資産を上積みした。これは、邦銀によるアジアでのM&Aとしては過去最大規模のものだ。三菱UFJは、ベトナムの国営大手銀行ヴィエティンバンクに対しても、株式約20%を取得している。M&Aを中心に、活発なアジア展開を進めている。三井住友は、インドネシアの年金貯蓄銀行の株式40%を取得。この措置は、人口で東南アジア最大規模の同国でのリテール業務に参入する狙いからだ。みずほも、2011年度に、ベトナムの大手銀行ベトコンバンクの株式約15%を取得済みだ。

■株価は動意含みの展開
すでに述べたように、日本経済は設備投資への貸出増加とも相まって、経済の好循環がつくり出されつつある。このデフレ脱却の先行きを確かなものとするためにも、「経済の血液」である金融を担う、3メガバンクの果たす役割はますます重要になっているといえよう。

みずほFGが不祥事対応の一貫として委員会設置会社化を決めたが、他行も、複雑化するグループ経営を一体的に運営するための組織改革、司令塔の強化が待ったなしである。アジアにおいては、現地買収先の経営陣に送り込む日本人スタッフの確保と、現地人材の育成がカギとなるだろう。

メガバンクの株価は日経平均に対し大きく出遅れていたが、ここにきて動意含みの展開となっている。ここは絶好の買い場と判断したい。

(小沼正則)

※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。

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