- 2014-7-10
- ITビジネス, 電子書籍
- 二十九回, 個人出版, 林 拓也, 連載, 電子出版, 電子書籍
- 個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第二十九回 はコメントを受け付けていません
■はじめに
先日(2014年7月2日(水)~4日(金))東京ビックサイトで国際電子出版EXPOが開催されました。
あまり時間が取れなかったのですが、少しだけ回ることができたので電子出版EXPO関連の話題を少しだけご紹介します。
前回楽天Koboの制作ガイドラインについて扱った関係から1つは楽天Kobo関係の話題を、また個人的に興味のある電子教材関連でたまたま興味深い話が聞けたのでもう1つはその話題を扱います。
■楽天Koboライティングライフ
前回、楽天Koboの個人出版ソリューション「Kobo Writing Life」について少し触れました。
現状システムは生きているものの、日本では正式にサービス提供に至っていない状況であることを紹介しました。
今回の電子出版EXPOの楽天Koboブースでは、「Kobo Writing Life」の日本でのサービス展開について告知がありました。
日本でのサービス名は一部カタカナ表記で「楽天Koboライティングライフ」となるようです。
詳しい情報は公開されておらず、「年内には日本でも正式にリリースする」というお知らせが公式に出た、という程度のものと考えられます。
ライティングライフの最新情報はWebサイト(http://r10.to/KWL)で公開されるので、時折チェックしてみるとよいでしょう。
制作ガイドラインがリリースされたのは、日本での正式リリースを見越したものなのかもしれません。それにしては、ガイドラインが英語なのがナゾではあるのですが…。
■ACCESS社の電子教材ビューワー
会場を歩いていて、たまたま電子教材関連のトークセッションに遭遇しました。それはACCESS社の電子教材ビューワー「PUBLUS Reader for Education」に関するもので、教科書出版社の東京書籍と共同でのセッションでした。
電子教材に関しては、私もEPUB 3、Adobe社のDPS、HTML5などの方式のものの制作案件に参加したことがあり、通常の電子書籍とは違った難しさがあることをある程度理解しています。
ACCESS社の電子教材ビューワーでは、教材はEPUB 3ベースであるとのことでそれも興味をくすぐられたポイントです。
さて、電子教材の難しい点として大きいのは、レイアウトの複雑さとアクセシビリティの重要性の両立が挙げられます。
教材というのはレイアウトが複雑です。
理科の教科書が代表的ですが、大小さまざまな画像が多数使われている上に、それらが重なりあったり、テキストが複数の画像にまたがったりと、かなり自由にレイアウトされています。
比較的おとなしい国語の教科書でも、文章のページは下部に脚注のスペースがあったり、文章が終わると2段組の設問ページがあったりと、案外複雑な要素を持っているのです。
このような複雑なレイアウトをEPUBで再現するには、現状では固定レイアウト方式を使う必要があります。
しかし、固定レイアウトではリフロー方式と異なり、文字サイズを変更することができません。
ACCESS社の電子教材ビューワーでは、教材は固定レイアウトでありながら、文章部分をタップ/クリックすると、その部分の文章をポップアップウィンドウで表示します。
そのウィンドウ内では文章はリフロー表示になり、文字サイズ、フォントの種類、行間、色を変更することができます。
色は、文字色と背景色のプリセットが用意されていて、色覚や輝度に対する障害のある方にも読みやすい組み合わせを選択できるようになっています。また、自分で見やすい組み合わせを自由に設定することも可能なようです。
また、かつて電子教材ではAdobe社のFlashで制作されることが少なからずありました。ACCESS社の電子教材ビューワーではFlashデータも表示可能で、過去の資産を利用できるという点も注目でした。
FlashデータはEPUB 3で標準的に使えるデータではありませんが、フォールバック(代替コンテンツ)が用意されていれば、EPUBでは標準外のデータを使うことも認められています。
他にも、教材上にフリーハンドのメモや図形スタンプを追加することもできるようになっています。
メモ機能については、テキストベースのメモも残せるとよいと思うのですが、それが可能かどうかは確認できませんでした。
全体的に、電子教材の持つ難問に適切に対応し、かつ直感的な使い勝手が実現できているように感じました。
セッションでのデモはWindows版でしたが、マルチプラットフォームでの展開も予定されているようで、今後が楽しみなビューワーです。
特に、iOS版でもFlashデータが利用できるようになるのか、Media Overlays(テキスト同期読み上げ)仕様への対応などはどうなのか、など注目したいところです。
■最後に
個人的に、電子出版EXPOはたしか2010年から見に行くようになったのですが、2012年ぐらいまでの熱気がすごかった記憶があります。恐らく当時は、大手(特に外資系)の電子書籍ストアがまだリリースされておらず、中小の企業がチャンスを求めて模索していた時期だったからかもしれません。
近年はどちらかというと、地に足の着いたビジネス向けの出展が増えてきたために、以前のような熱気を感じなくなったのでしょう。
電子書籍周りの環境が変わってきたということを改めて実感できたEXPOでした。
■著者プロフィール
林 拓也(はやし たくや)
テクニカルライター/トレーニングインストラクター/オーサリングエンジニア
Twitter:@HapHands
Facebook:https://www.facebook.com/takuya.hayashi
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