- 2018-3-27
- カルチャー
- 日本の伝統工芸に革新の風を吹き込んだ人たち!第2回 「三井ゴールデン匠賞」 贈賞式 はコメントを受け付けていません
第2回 「三井ゴールデン匠賞」 贈賞式 |
三井グループの三井広報委員会は3月20日、日本の伝統工芸の分野において革新的な取り組みをされている方たちを表彰する「第2回三井ゴールデン匠賞」の贈賞式を開催した。同賞は、日本の伝統工芸において古来の技法や様式を現代に継承しながらも、革新的なアイデアを取り入れ、伝統工芸のさらなる発展に貢献している“匠”たちを表彰するものだ。
■革新的な方法で伝統工芸の発展に寄与する匠たちを表彰
2017年、外国から日本に来た旅行者は2870万人で2016年と比較すると20%ほど増加した。2012年からの6年間で見ると毎年継続して増加の一途をたどってきているという。来年の2019年にはラグビーのワールドカップ開催、2020年には東京オリンピック&パラリンピックが控えていることもあり、世界各国から日本への関心が高まりつつある。
まずは三井広報委員会の委員長を務める三井住友銀行取締役兼専務執行役員の大島眞彦氏が壇上に立ち、「日本の伝統芸能を世界に正しく発信していきたいという思いから、伝統的な技法を継承しながら、革新的な方法で日本の伝統芸能を発展させている方々を表彰する賞としてこの “三井ゴールデン匠賞“を2016年に創設しました」と同賞の創設について語った。
「今回の受賞者は、いずれの方々も卓越した技能で独自の作品を作っており、さらには未来へ、将来の発展に繋がる活動にも力を入れている。まさに匠と呼ぶにふさわしい方々です。今後も持っている技術や技能に一層磨きを掛けていただき、また後進の育成にも積極的に取り組んでいただき、益々のご活躍を心よりお祈り申し上げます」と大島氏。
三井広報委員会委員長である三井住友銀行取締役兼専務執行役員の大島眞彦氏 |
■5組の匠たちの中からグランプリを選定
贈賞式では、第2回「三井ゴールデン匠賞」を受賞された5組(個人および団体)の匠を表彰するとともに、受賞者の中から審査員たちにより選定された「グランプリ」、そして一般投票により決定した「モストポピュラー賞」を各1組ずつ発表した。
■三井ゴールデン匠賞グランプリは「輪島塗」が受賞
栄えある「グランプリ」に輝いたのは、「輪島キリモト(輪島塗/石川県輪島市)」の桐本泰一氏だ。同氏は江戸後期から続く輪島塗漆器の七代目にあたる。分業が主流の輪島塗産地において、他者に先駆けて木地と漆塗りの一貫生産を実現し、消費者ニーズへの対応に努め、長年にわたって産地の改革と活性化に取り組んできた実績が評価された。
「木地屋から一貫生産を始めて、様々な苦労もありましたが、この賞をいただけて感動しています。この受賞はひとえに職人、スタッフ、家族のおかげです。この仕事が大好きで、ナンバーワンを目指すのではなく、世界のオンリーワンを目指す気持ちでやってきました。これからも輪島の素材を活かしたモノづくりを続け、このあと何百年も続き、発展していくように精進していきたいと思います」と桐本泰一氏。
グランプリを受賞した「輪島キリモト(輪島塗/石川県輪島市)」の桐本泰一氏 |
■モストポピュラー賞は「燕鎚起銅器」が受賞
モストポピュラー賞は「株式会社玉川堂(燕鎚起銅器/新潟県燕市)」が団体として受賞した。同社代表の玉川基行氏は「伝統工芸に興味を持っていただいている多くの方々にご支持頂くことができ、大変嬉しく思っております。私は伝統とは革新の連続であると考えています。玉川堂はかつて記念品の製造が中心でした。現在は直営店を持つことで、お客さまと職人が直接会話することができるようになった結果、どのような商品が求められているのかを直接学ぶことができるようになりました。今後は海外にも直営店を出したいと考えていいますが、最終的には、海外の人たちに燕三条へ来てもらえるようになることが私の目標です」と語った。
モストポピュラー賞を受賞した「株式会社玉川堂(燕鎚起銅器/新潟県燕市)」代表玉川基行氏 |
■その他の匠賞受賞者
「株式会社五十崎社中(大州和紙/愛媛県内子町)」の齋藤宏之氏は「このような貴重な賞をいただき、誠にありがとうございます。私は大洲和紙を現代の生活様式に取り入れ、和紙のある生活を国内外に広げるために精進しています。今後は、愛媛県のものづくりの現場を一丸となって盛り上げることで、愛媛の伝統工芸の発展に貢献していきたいと思います」と受賞の喜びを語った。
「株式会社五十崎社中(大州和紙/愛媛県内子町)」の齋藤宏之氏 |
「株式会社中川政七商店(経営者/奈良県奈良市)」の中川政七氏は「私は16年前に家業を継いだのですが、職人でもデザイナーでもない自分が経営者としてやれることは何かということを考えてきました。わが社をなんとか立て直し、そこで得たノウハウがほかでも役に立つのではないかと考え、伝統工芸分野の経営コンサルティングを行うようになりました。今後も“日本の工芸を元気にする”というビジョンを掲げ100年後に日本が工芸大国と呼ばれるよう頑張っていきます」と語った。
「株式会社中川政七商店(経営者/奈良県奈良市)」の中川政七氏 |
「株式会社妙泉陶房(九谷焼/石川県加賀市)」の山本篤氏は「この度は、大変な賞を頂きましてありがとうございます。これまで作品で受賞したことはありましたが、今回のように取り組みが評価されたのは初めてです。九谷焼は、がんばっている方々がたくさんおられます。そして、みんなが協力しあっていてそれが原動力となっています。これからもいろんな人とつながっていき、若い人とも一緒に勉強していきたいと思います」と語った。
「株式会社妙泉陶房(九谷焼/石川県加賀市)」の山本篤氏 |
いずれの受賞者も大きな笑みを浮かべながら受賞の喜びを語っていた。グランプリを受賞した輪島キリモトの桐本泰一氏に至っては、感極まったのか涙ぐみ言葉を詰まらせる一幕もあった。
日本が誇る伝統工芸は、海外でも高く評価されている。ただし、将来へとつないでいくための後継者不足が懸念されている。日本が世界に誇る伝統を途絶えさせないためにも、「三井ゴールデン匠賞」のような職人の方々のモチベーションを高めることができる賞は、大きな存在意義があると言えるだろう。今後第3回、第4回と続いて行くことにより、各地の伝統工芸に携わる人たちが目指す権威ある賞へと成長することを期待したい。
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山本 素子
IBCパブリッシング
2010-03-29