個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第十七回


■はじめに
今回は今年最後の記事になります。

他力本願になりますが、去る12月20日に開催されたJEPA(一般社団法人日本電子出版協会)の会合を参考にさせていただきます。この日のセミナーはJEPA電子出版アワードの授賞式と「今年の電子出版トレンド」というテーマで有識者のパネルディスカッションが行われました。

JEPA電子出版アワードについては本ブログの第15回記事で少しご紹介しましたが、その結果が出たことになります。

■受賞作品について少し
JEPA電子出版アワード大賞は「でんでんコンバーター」が受賞しました。でんでんコンバーターは本ブログ(第4回、第5回記事)でもご紹介したWebサービスで、誰でも簡単にEPUBの電子書籍を作成することができる優れたツールです。

制作者は株式会社イーストの高瀬拓史氏。

イーストは電子書籍関連のリーディングカンパニーと言える会社ですが、高瀬氏は会社とは別に個人でこのサービスを立ち上げられました。後でも触れますが「個人」の活躍というのは、今年の電子書籍界隈でも注目のポイントだったと思います。

でんでんコンバーターには作成したEPUBファイルをプレビューするためのビューワーが搭載されていますが、このビューワー部分は「BiB/i」(ビビ)というJavaScriptベースのプログラムを利用しています。

このBiB/iもJEPA電子出版アワードででんでんコンバーターと同じエキサイティング・ツール賞にノミネートされていたツールで、株式会社シナップの松島 智氏が個人で制作されたものです。

エキサイティング・ツール賞も大賞を取ったでんでんコンバーターが受賞されましたが、そのでんでんコンバーターの構成要素としてBiB/iも含まれているということでもあります。その点を鑑みて、個人的にBiB/iに対しても大きな賛辞と祝福を送りたいと思います。

もう1つ触れておきたいのはデジタル・インフラ賞に輝いた「Amazon KDP」です。Amazon KDPは個人出版のプラットフォームで、現在もっとも活発に利用されている個人出版プラットフォームと言えるでしょう。

Amazonで書籍(やその他様々な商品)を日常的に購入している方は少なくないでしょう。
そのAmazonに自分の電子書籍が著名な著者の方々と同じように売られているのを見るのは感慨深く、個人出版の大きなモチベーションにもなることでしょう。

先に挙げたでんでんコンバーターを利用して作成したEPUBファイルは、Amazon KDPへの入稿データとして利用できます。これらのサービスは本ブログの主要テーマである個人出版に欠かせない要素として今後とも注目していきたいと思っています。

ちなみに本ブログでは情報の豊富なAmazon KDPより情報の少ないApple iBookstoreを意識して取り上げてきました。今後はAmazpn KDPを始めとした他のプラットフォームの記事も扱っていこうと思います。

さて、JEPA電子出版アワードの他の受賞作品についてはJEPAのページをご確認ください。

■パネルディスカッションについて少し
パネルディスカッションではhon.jpの落合 早苗氏、ダ・ヴィンチ電子ナビの後藤 久志氏が今年のトレンドとして「セルフパブリッシング(個人出版)」を挙げておられました。

前述のAmazon KDPに加えてApple iBookstoreも日本でオープンし、メジャーな個人出版のプラットフォームが登場してきたこと、電子書籍リーダーとして利用できるスマートフォンやタブレットPCが普及してきていること、でんでんコンバーターのような制作の敷居を下げるサービスが登場したことなども個人出版が進んだ要因として考えられると思います。

先に挙げたでんでんコンバーターやBiB/iも個人で開発されたサービスで、コンテンツの方も個人出版が増えていることで、電子書籍における個人の影響力というものの大きさが感じられる年だったと思います。来年はさらに多様な個人出版コンテンツが登場することでしょう。

■最後に
来年(以降)はEPUB仕様の更新や電子書籍のレイアウトに有用な新たなCSS仕様の進展などで、技術的な部分でも色々注目すべき事項がありそうです。

また、電子書籍の教科書としての利用についても議論が進んだり、事例が登場したりすることが期待できます。

折に触れその辺もご紹介していきたいと思っています。教科書に関しては、私も少しだけお手伝いさせていただいた東京書籍のデジタル教科書がリリースされました。

これらはEPUBではなくAdobeのDPS(Digital Publishing Suite)を利用したものとなっています。さて、2013年は電子書籍がようやく本格的に立ち上がった年と言えると思います。
2014年はどのような年になるのか、個人出版事情はどうなるのか、一緒に見守っていきましょう。

※新年は1回お休みをいただいて1/23(木)からスタートの予定です。

■著者プロフィール
林 拓也(はやし たくや)
テクニカルライター/トレーニングインストラクター/オーサリングエンジニア
Twitter:@HapHands
Facebook:https://www.facebook.com/takuya.hayashi

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iBooks Authorレッスンノート
林 拓也
ラトルズ
2013-07-19


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