迷ったら死にますので絶対に列を離れないように――カミオカンデに行ってきました(後編)

  • 2017-1-2
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岐阜県飛騨市にある東大の研究施設「スーパーカミオカンデ」。この一般公開が2016年11月26日に行われた。抽選で定員300名の所、いったんは落選するも、なんとキャンセル待ちで復活。富山の先まで出かけてきたのでした。

前回は深夜バスに乗り、路線バスを経てスパーカミオカンデの入り口に立ったところまでをお伝えしたが、これからは本題、スーパーカミオカンデの中に入ることになる。ちなみにセキュリティの関係上、どこにカミオカンデがあるかは言ってはいけないことになっている。

スーパーカミオカンデは廃坑の中に作られているが、鉱山自体は神岡鉱業の持ち物。それを東大が借りて運営しているといった形だ。

さて。そもそもスーパーカミオカンデでは何をしているのでしょうか。その答えは、スーパーカミオカンデのWebサイトにもあるように「世界最大の地下ニュートリノ観測装置」だ。ニュートリノとは、中性の電気を持たない素粒子のこと。宇宙を構成するすべての物質は、クォークとレプトンという素粒子から形成されている。陽子はクォーク3つから構成され、レプトンの仲間である電子を1つ組み合わせることで作られている。レプトンは電子とニュートリオとのペアで構成されており、電子の電荷は-1なので、ニュートリノの電化は0となる(スーパーカミオカンデのWebサイトより抄録)。

もっと詳しい解説を知りたい方は、スーパーカミオカンデのWebサイトを参照してほしいが、要は宇宙の成り立ちを知るのに重要な物質なのに、ほかの物質と反応しないため、普通の状態では観測できないものなのだ。

そこでスーパーカミオカンデでは、直径39.3メートル、高さ41.4メートルの円筒製タンクにに5万トンの超純水を蓄え、タンク内にある約1万3千本の光電子増倍管でニュートリノの挙動を測定することができるようになっている。光電子増倍管取り付け作業が完了したのは1995年12月。そこから超純水を貯め、観測がスタートしている。途中、大量の光電子増倍管が破壊されるといったトラブルにまみれたが、研究者の力でなんとか復活させ、今に至っている。スーパーカミオカンデでの実験を通した結果で、梶田隆章氏がノーベル物理学賞を取ったのは記憶に新しい。

 さて、そんなスーパーカミオカンデの中に入っていくことにする。スーパーカミオカンデは地下1000メートルの所に設置されているので、そこまでは乗り合いの自動車で行くことになる。ちなみにスーパーカミオカンデの中で動いている自動車は全部ディーゼル車。ガソリン車よりも空気の消費が少ないから、だそうだ。

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マイクロバス2台に分乗して入り口へ到着。ここでトイレ休憩を入れたら坑内に入る

車に分乗してどんどんと中に入っていく。途中、入り口を示す「跡津方面」に矢印が着いた看板もある。なお、ガイドの方によると、神岡鉱山は総延長が東京から福岡までくらい、約1000キロにも及ぶそうなので「列から離れたら絶対に死にますから付いてきてください」と釘を刺された。こえぇ。

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マイクロバスは坑内へどんどんと入っていく

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時折標識が見えた

坑道内を15分ほど走ると、スーパーカミオカンデの実験区域に到着。扉の向こうはスーパーカミオカンデだ。立っている部分は天井に当たり、その下に光電子増倍管がずらっと並んでいて、観測しているというわけだ。

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これが実験区域の入り口

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入ってすぐ右側には、これまで訪れた研究者のサインが残されている

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ノーベル物理学賞を取った南部陽一郎氏のサインも

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実験施設へ行く途中にはスーパーカミオカンデで行われている実験などのパネルを展示

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水温などを管理している計器。何か工場みたい

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超純水を作り出すためのフィルター

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これが光電子増倍管の実物

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これがスーパーカミオカンデの天井部分

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スーパーカミオカンデにあった、スーパーカミオカンデの模型(ややこしい)

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何かの実験施設

スーパーカミオカンデの見学が終わったら、坑道を歩いて、もう一つの実験施設であるXMASS検出器がある施設へ向かう。ただしここは中には入れず、外で紹介パネルを見るだけ。ここで行われているのは、宇宙に存在するという「ダークマター」の検出。これまで分かったことは、ダークマターは宇宙全体の27%を占めていて、光を出さず、電荷がない。物質とはほとんど反応しないが、1立方メートルの箱に3000個位存在し、地球では1立方センチメートルに毎秒10万個もすり抜けているそうだ。

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今度は茂住方面へ移動

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この暗い感じはまさに坑道といったところ

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途中、横穴が見える。レールはトロッコのものだろうか

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ここがXMASS検出器が置いてある実験室。宇宙のダークマターについて研究している

これで約1時間にわたるスーパーカミオカンデの見学は終了。もう一度マイクロバスで坑道出口まで戻ることとなる。そして出発地である神岡町公民館に戻り、イベントは終了だ。

貴重な実験サイトを見させてもらったのだが、非常に楽しかった。光電子倍増管の実物を見ることができなかったのは残念だが(ちなみに研究者の人でも見たことがあるのは稀だとか)、実験をしている雰囲気に接することができたのはよかった気がする。

なお見学だが、今回のように東大が主催するもののほか、神岡鉱山の坑内を巡るツアーイベントを企画している「GEO SPACE ADVENTURE」という組織でも、定期的に見学を行っているようだ(主に夏休み)。こちらに申し込んで見学するのもよいだろう。

スーパーカミオカンデ

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カミオカンデとニュートリノ
中畑 雅行
丸善出版
2016-07-01






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