- 2026-8-17
- デジタル家電
- 天然木にテクノロジーが宿る!mui Lab「温もりのあるスマートホーム」の未来【IVS2026】 はコメントを受け付けていません

2026年7月1日から3日までの3日間、京都で国内最大規模のスタートアップカンファレンス「IVS2026」が開催された。テーマは「Japan is Back」だ。国内外から多数のスタートアップや起業家、投資家、大企業が一堂に会するなか、天然木を使った独自のスマートホームインターフェースを展示していたのが、京都に本社を置くmui Lab株式会社(以下、mui Lab)だ。
mui Labは、「人と自然とテクノロジーの穏やかな調和によって 心ゆたかなくらしと社会を創造する」をミッションに掲げている。テクノロジーが過度に主張することなく生活空間へ静かに馴染む「Calm Technology(カーム・テクノロジー)」の考え方を取り入れたプロダクトやサービスを開発する企業だ。
本記事では、IVS2026の会場で同社が披露した天然木のスマートホームコントローラー「muiボード」の機能をはじめ、担当者への取材から見えてきたプロダクトへのこだわり、同社が目指すスマートホームの未来について紹介する。
■自然素材とデジタル技術の融合が生む「触れたくなる」インターフェース
mui Labを代表するプロダクト「muiボード」は、一見すると室内に馴染む細長い木製パネルだ。しかし、木の表面に触れるとLEDによる文字やアイコンが柔らかく浮かび上がり、タッチ操作が可能なインターフェースへと変化する。担当者によると、人が触れる部分の表面には本物の木材が使われており、その奥から光を透過させる構造になっている。

実際に指で文字を書いてみると、木の表面でありながら、指の動きに滑らかに追従する。取材中にも思わず「すごく滑らか」「手書き風で、とても温かい感じがする」と声が出たほどだ。一般的なガラス製ディスプレイとは異なる感触が印象的だった。

mui Labは、印刷や産業資材などを手掛けるNISSHA株式会社の社内ベンチャー制度から、2017年に誕生した企業だ。担当者によると、「自然素材を使ったタッチパネルを作りたい」という発想が開発の原点だったという。その後、2019年にMBOによってNISSHAから独立した。
同社は2017年、スマートホームデバイス向けに、本物の木材をインターフェースとして採用した「mui M1」を開発した。mui Labによると、スマートホームデバイス向けに本杢素材を用いたインターフェースとして、世界初の試みだったという。
■暮らしを優しく彩る「muiボード」の多彩な機能と独自のインタラクション
会場では、スマートホーム機器の操作だけでなく、家族とのコミュニケーションにも活用できるmuiボードのさまざまな機能を体験できた。

〇滑らかな手書きメッセージ&家族間コミュニケーション
muiボードには、指で直接、文字や絵を描くことができる。担当者によると、自宅のmuiボードに書いたメッセージを、外出している家族のスマートフォンへ届けることも可能だという。
デジタルデバイスでありながら、木の質感を残したインターフェースに手書きの文字が浮かび上がる様子は、紙の置き手紙にも似た温かみを感じさせる。家電を操作するためだけのコントローラーではなく、家族同士をつなぐコミュニケーションツールとして設計されている点も、muiボードの特徴だ。
〇子どもにも直感的に伝わる「手書きタイマー」機能
ユニークなのが、手書きの線を使って時間の経過を表現するタイマー機能だ。ボード上に線を描くことで時間を設定でき、時間の経過とともに表示された線が短くなっていく。
担当者によると、この機能には、まだ時計を読めない年齢の子どもでも、残り時間を視覚的に理解できるようにする狙いがあるという。「線が消えるまで」と伝えることで、数字や時計の針を理解できない子どもとも時間の感覚を共有しやすくなる。
数字だけで残り時間を示す一般的なタイマーとは異なり、時間そのものを視覚的な長さで表現する、mui Labらしいインタラクションだ。
〇回転操作による直感的な調光&スマートロック連携
照明操作のデモでは、muiボード上に表示されたUIを指で回転させるように動かすことで、明るさを調整できた。
また、mui Labは2026年1月に米国ラスベガスで開催された「CES 2026」に、三菱地所、美和ロックと共同出展している。
担当者によると、その際に展示したコンセプトモデルでは、muiボード上を右方向へスライドするというシンプルな動作で、スマートロックを操作するデモも披露したという。タッチパネルの特性を生かし、日常の所作に近い操作によって住宅設備をコントロールするという考え方だ。
〇バイタルに応じた空間制御と「Spatial AI(空間のAI化)」への挑戦
ブースでは、心拍数(BPM)などのバイタル情報をmuiボードに表示し、身体の状態に応じて空間を変化させる「バイタルに応じた空間制御」のデモ映像も紹介されていた。

これは、mui Labが取り組む「Spatial AI(空間のAI化)」という構想にもつながるものだ。同社は、人とテクノロジーとの接点を画面や音声コマンドだけに限定せず、人の自然な振る舞いや状態を空間側が捉え、それに合わせて環境が自然に変化する体験の実現を目指している。
2026年1月のCES 2026では、「Spatial AI」サービスの第1弾として、ウェルビーイングをテーマにした「mui Calm Sleep Platform」を公開した。スマートフォンやウェアラブル端末を常に操作するのではなく、テクノロジーを空間そのものに溶け込ませる方向性を打ち出している。
こうしたデザイン思想と技術は、国内外で高く評価されている。展示ブースには、同社にとって4度目の受賞となった「CES Innovation Awards 2025」のHonoreeトロフィーをはじめ、「GOOD DESIGN AWARD 2025」や「第19回キッズデザイン賞」などのトロフィーが並んでいた。
2025年度グッドデザイン賞では、HEMSコントローラー「muiボード」が受賞した。また、第19回キッズデザイン賞では、小田急不動産とmui Labが共同開発した「muiボード」とスマートフォン専用アプリ「mui Homeアプリ」を活用した「家族に寄り添うスマートホーム」が、「子どもを産み育てやすいデザイン部門」で受賞している。
■IVS2026で示した、暮らしに溶け込むテクノロジー
IVS2026では、京都市勧業館「みやこめっせ」とロームシアター京都を中心とするIVSエリアに、多様なスタートアップや企業が集結した。
数多くのディスプレイやAIサービス、デジタルデバイスが並ぶ会場において、必要なときだけ木の表面に情報が現れ、それ以外の時間はインテリアのように空間へ馴染むmuiボードは、同社が掲げる「カーム・テクノロジー」の考え方を分かりやすく体現していた。
現在のmuiボードは、スマートホームの世界共通規格「Matter」と、国内で普及している「ECHONET Lite」の双方に対応している。さらにmui Labは、Matter、ECHONET Lite、Web APIを横断し、住宅設備やスマートホーム機器を統合制御できるオープンプラットフォームの開発を進めている。2026年3月には、国内の住宅・エネルギー・設備メーカーなどを対象とする事業者向けサービス「くらしのOS」として展開することを発表した。
天然木という古くから人々の暮らしに寄り添ってきた素材と、IoT、スマートホーム、AIといった最新技術を組み合わせるmui Lab。その先にあるのは、テクノロジーをさらに目立たせる未来ではなく、その存在を意識しなくなるほど自然に暮らしへ溶け込ませる未来なのかもしれない。
京都から生まれた「カーム・テクノロジー」が、これからのスマートホームをどのように変えていくのか注目したい。
■mui Lab株式会社
■IVS2026 公式サイト
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代表取締役・ITライフハック代表
ITライフハック編集長・ライター
ITライフハック副編集長・ライター
