- 2025-12-18
- セキュリティ
- 守る技術から“攻めるセキュリティ”へ!サイバーセキュリティクラウド 代表取締役 CTO 渡辺 洋司氏が語る、AI時代の防衛戦略 はコメントを受け付けていません
株式会社サイバーセキュリティクラウド(CSC)は、Webアプリケーションを狙うサイバー攻撃から企業を守るクラウド型セキュリティサービスを提供している。WAF(Web Application Firewall)の開発を軸に、国内外の企業の安全なインターネット利用を支えるソリューションを展開している。
そのCSCで技術戦略をリードしているのが、代表取締役CTOの渡辺洋司氏だ。渡辺氏は2016年、社員10名規模のスタートアップだった同社にジョインして以来、「攻撃遮断くん」や「WafCharm」、AWS向け「Cyber Security Cloud Managed Rules for AWS WAF」、そして現在の主力製品である「CloudFastener」など、主要プロダクトの開発に幅広く携わってきた。
開発組織づくりやM&Aにおける技術評価など、会社が成長する過程で必要とされる幅広い技術領域も担い、CSCの技術基盤を支えてきた立役者でもある。
近年はサイバー攻撃の高度化が進み、セキュリティは単なる防御の枠を超えて“経営の重要テーマ”として位置づけられるようになった。こうした状況においてCTOには、個別の技術選定だけでなく、「どこに注力し、どんな技術を強みに育てるのか」「新たな脅威や技術の変化に対し、どう備えるのか」といった中長期視点での判断が求められる。
渡辺氏は、まさにこうした“攻めのセキュリティ”が求められる時代の最前線で、技術と事業の両面からCSCを牽引している。今回は同氏に、AI時代のセキュリティ戦略やプロダクト開発、組織づくり、そして未来への展望まで、全18問にわたりじっくりと話を伺った。
■CTO 渡辺氏が語る、セキュリティの未来とサイバーセキュリティクラウドの成長戦略
――― サイバーセキュリティクラウドが掲げる「世界中の人々が安心して使えるサイバー空間を創造する」という使命に、CTOとしてどう向き合っていますか?
渡辺氏:私自身もインターネットの利用者であり、安心して使える環境をつくることは個人的な願いでもあります。Webアプリケーションを安全に保つことは、利用者と企業の双方を守る基盤です。開発者としての視点と利用者の視点を重ねながら、より安全なプロダクトづくりに向き合っています。
――― 国内で数少ない“純国産のクラウドセキュリティ企業”として、どこにCSCならではの価値があると考えていますか?
渡辺氏:自社開発・自社提供だからこそ、仕様の意図説明や改修が迅速に行える点が最大の強みです。海外製品のような多段階コミュニケーションが不要で、顧客と直接向き合えます。また、日本発でありながらグローバルにも展開しやすい特徴を持ち、参入障壁の高い領域で存在感を発揮できます。
――― 設立から現在まで、技術視点で最も大きな転換点はいつだったと感じますか?
渡辺氏:事業的には、クラウド全体を守る「CloudFastener」のサービス開始が大きな転機でした。技術的には生成AIの進化が大きく、社内Q&Aから製品価値まで影響が広がりました。これらが、会社のスケールと技術戦略の方向性を変えたと感じています。
―――「攻撃遮断くん」は国内WAF市場で高いシェアを持ちますが、進化の方向性として何を重視していますか?
渡辺氏:WAFは成熟が進んでいて、今後はボット対策やAPI対応が重要と考えています。正常なクローラーとの識別や生成AI由来のアクセス増加など、新たな判定軸が必要になるためです。人と非人間アクセスを見極める技術が進化の中心になります。
――― AIや機械学習は、どのようにサイバー攻撃の検知・自動化に活かされていますか?
渡辺氏:攻撃と正常アクセスの差が比較的明確なため、機械学習による分類が行いやすい領域です。SQLインジェクションのような特徴的な通信を学習させることで高精度な検知が可能です。また、ボット判別など統計的差分が出やすい領域にもAIは有効に働いています。
――― CloudFastenerはWAFからさらにクラウド全体のセキュリティへ広がっていますが、今後“プラットフォーム化”は視野に入っていますか?
渡辺氏:本番環境の防御を軸に、クラウド設定やアプリケーション、生成AIまで含めて守る必要があります。クラウド上で動くシステム全体を一貫して保護する仕組みは必須であり、結果的にプラットフォーム化へ向かうと考えています。
――― ゼロデイ攻撃や未知の脅威への対応は、どのような体制や技術で実現しているのでしょうか?
渡辺氏:完全防御は困難ですが、異常検知で不審な動きを捉え、脆弱性への迅速対応を行う体制を整えています。加えて、脅威情報を収集・分析し製品へ反映するサイクルを強化し、未知の攻撃にできる限り早く対応できる体制づくりを進めています。
――― AWSへのマネージドルール提供やMSSP認定など、クラウドとの協業で得られた学びや難しさはありましたか?
渡辺氏:マネージドルールを通じ世界中で利用され、クラウドプラットフォームを介したビジネスの広がりを実感しました。AWS側からの支援も厚く、共創的に取り組むことでグローバルプロモーションにもつながりました。技術面・ビジネス面双方で大きな学びがありました。
――― 海外100カ国以上で利用される中で、日本発プロダクトとして直面した課題(言語・法規・競争)をどう突破してきましたか?
渡辺氏:マネージドルールは自然に各国で広がりましたが、他製品は営業活動が不可欠で、海外では内製志向の強い企業も多く販売難度が高いと感じました。国ごとの文化や開発スタイルの違いも課題ですが、相性の良い市場や顧客を丁寧に見つけていくことで前進してきました。
――― クラウドセキュリティ市場で、今後最も大きく伸びる領域はどこだと見ていますか?
渡辺氏:生成AIです。学習データの扱い、プロンプトインジェクション、AIを含む新しいシステム構造の防御など、これまでにない脅威が生まれています。クラウド上で生成AIが当たり前になる時代で、AIを含めた全体防御が最も重要になると見ています。
――― セキュリティとAIという高難度領域で、技術組織をどう設計していますか?
渡辺氏:生成AIを前提に、設計の明確化やテスト自動化など、人の手で負荷が大きかった部分をAIが補完する体制を整えています。これにより品質向上の取り組みが強化され、今後はAIを活かしきるプロセス設計をさらに進化させていく方針です。
――― 開発チームにはどのようなエンジニアが多く、採用で重視している資質は何ですか?
渡辺氏:セキュリティに強い関心を持ち、正しく作ることに価値を置ける人が多いです。技術だけでなくビジネス視点も持ち、課題を自ら見つけ提案し、実行まで進められる姿勢を重視しています。自走力と改善志向の高さが活躍の鍵になります。
―――「セキュリティ × AI」に挑戦したい若手エンジニアに伝えたいことは?
渡辺氏:まず手を動かして体験してみることが大切です。生成AIの時代は、試すだけで多くの学びが得られます。作ってみる、診断してみるといった実践の中で、自分が面白いと感じるポイントを見つけ、それを深掘りすることで成長につながります。
――― CTOとして“技術判断”と“経営戦略”のバランスで意識している点は?
渡辺氏:技術へのこだわりと、顧客が本当に求める価値・市場性のバランスを重視しています。技術トレンドを追いながら、ビジネスとして拡大できる領域へ強みを当てていくことが重要です。技術だけでは売れないため、顧客ニーズを捉える視点も不可欠です。
――― 生成AIの普及により攻撃側にもAIが使われる時代、守る側はどう変わるべきでしょうか?
渡辺氏:攻撃優位の構造は変わらないため、異常を早期に察知するためのデータ収集とモニタリング強化が必要です。攻撃者の動きを理解するため、脅威情報の収集や攻撃視点の研究も重要です。気づきを早めることが防御の鍵になります。
――― サイバー空間が複雑化する中で、サイバーセキュリティクラウドが次に目指す「理想のセキュリティ像」とは?
渡辺氏:本来はセキュリティを意識せずとも安全な状態が理想ですが、新技術が次々登場するため難易度が高まっています。生成AIのように事業価値と直結する技術は迅速に導入されるため、リスクも同時に増えます。新技術に素早く追随し、適切に保護する体制が理想へ近づく道だと考えています。
――― 5年後、10年後、サイバーセキュリティクラウドはどんな存在になっていますか?
渡辺氏:クラウド本番環境を守る領域で確固たる強みを持ち、攻撃の検知から修正・改善まで一貫して支援できる存在になりたいと考えています。必要な技術要素を揃え、10年後には世界で戦える日本発セキュリティ企業としての地位を確立したいと思います。
――― 日本企業のセキュリティレベル向上のために、社会へ発信したいメッセージは?
渡辺氏:セキュリティ対策の格差を広げないためにも、国の支援制度を積極的に活用してほしいと思います。被害を前提に備えることが重要で、特にバックアップとクラウド利用は事業復旧の大きな助けになります。レジリエンスを高める視点で取り組むことが、企業全体の底上げにつながります。
――― ご多忙中のところ、本日はありがとうございました。
サイバー攻撃の高度化が止まらない今、企業に求められるのは単なる防御ではなく、変化を先取りして備える“攻めのセキュリティ”である。渡辺氏の言葉からは、技術と事業の両面で未来を見据える同社の姿勢が明確に伝わってきた。生成AIの普及により脅威が複雑化する一方、適切な防御を整えればデジタル活用の可能性はさらに広がる。安全なサイバー空間を創り出す挑戦は続くが、その最前線に立ち続ける取り組みは、企業が安心して前進するための確かな道標となるだろう。
テクニカルライター 後藤 響平
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ITライフハック編集長・ライター
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