葬儀業界再編に新たな動き!燦ホールディングス×こころネット、経営統合で全国展開を強化

  • 2025-10-30
  • 葬儀業界再編に新たな動き!燦ホールディングス×こころネット、経営統合で全国展開を強化 はコメントを受け付けていません
IMG_0578

燦ホールディングス株式会社は2025年10月29日(月)、中期経営戦略について説明する記者会見を開催した。会見では、こころネット株式会社との経営統合を発表し、その背景や目的について説明が行われた。

■燦ホールディングス株式会社の播島聡社長は、自社グループの概要と強みについて紹介
会見では、燦ホールディングス株式会社の播島聡社長が、自社グループの概要と強みについて紹介した。

IMG_0564


同社は1932年に葬儀会社・公益社として創業し、2025年で創業93年を迎える。2004年に持株会社「燦ホールディングス」として再編され、現在は葬儀事業会社6社、介護施設運営会社1社、ライフエンディング関連サービス会社1社など、計10社を傘下に持つ。全国16都府県で事業を展開し、年間約3万3,000件の葬儀を取り扱うほか、239会館を運営している。2025年3月期のグループ売上高は319億円に上る。

IMG_0546


同社の強みは、葬儀にとどまらず、人生の最終段階に関わる課題を総合的に支援する「ライフエンディング事業」を展開している点にある。厚生労働省認定の葬祭ディレクター資格保有者507名が在籍し、高い専門性とホスピタリティを備えたサービスを提供している。また、生前の姿に近づける技術「エンバーミング」や、企業・団体の社葬実績、遺族を支える「グリーフケア活動」にも注力している。創業以来培ってきた信頼と実績を基盤に、葬儀業界における新たな価値創出を目指している。

■こころネット - 130年超の伝統と信頼――地域に根差す総合葬祭グループ
続いて、こころネット株式会社の菅野孝太郎社長が、自社の概要と特徴について紹介した。

IMG_0553


同社は1966年に設立され、主力の葬祭事業「たまのや」は1892年(明治25年)に創業した、130年以上の歴史を持つ老舗である。グループ理念は「人々の心に満足と安らぎをもたらすサービスを提供する」。葬祭、石材、生花、互助会など幅広い事業を展開し、計8社の子会社を擁している。

2025年3月期のグループ連結売上高は101億円で、そのうち68億円を葬祭事業が占める。営業エリアは福島・茨城・栃木・山梨の4県に及び、47の会館を運営。年間約6,100件の葬儀を手がけている。

san02


葬祭ディレクター139名、お墓ディレクター55名が在籍し、専門知識に基づく高品質なサービスを提供している点も強みである。1892年から続く葬祭事業と、1929年創業の石材事業で培った信頼と実績を背景に、地域密着型のネットワークを構築。家族葬から大規模な社葬まで、多様なニーズに対応できる体制を整えている。また、子ども支援や伝統文化の継承、地元スポーツ支援などの社会貢献活動にも積極的に取り組み、地域とともに歩む企業姿勢を示している。

■2031年度までに全国550会館体制を構築、経営統合によりライフエンディング事業を拡大
燦ホールディングス株式会社の播島聡社長は、こころネット株式会社との経営統合について詳細を説明した。統合は株式交換方式で行われ、燦ホールディングスが完全親会社、こころネットが完全子会社となる。効力発生日は2026年2月1日を予定しており、こころネット株式1株に対して燦ホールディングス普通株式0.9株が割り当てられる。

san03


播島社長はまず、統合の背景として「事業環境の変化」と「信頼される企業であることの重要性」を挙げた。葬儀業界は近年、マッチングサイトの台頭や小規模葬の増加、異業種からの参入により競争が激化している。消費者は価格情報に偏りがちで、適正なサービスを選択することが難しい現状があるという。同社が実施した意識調査では、約46%が「葬儀の適正価格がわからなかった」と回答。播島氏は「情報格差が大きく、信頼できる企業の存在が求められている」と強調した。

IMG_0566


統合の目的は、2031年度を見据えた「10年ビジョン」の実現にある。燦ホールディングスは創業100年を節目に、全国で550会館体制の構築を目指す方針だ。M&Aや自社出店を通じて葬儀事業の拡大を図り、ライフエンディング事業全体を支える事業基盤の強化を進める。ライフエンディングサポート事業では、葬儀前後の支援に加え、介護・高齢者施設での食事提供、訪問医療、終活ポータル運営などを展開し、売上高100億円の達成を目指す。さらに、資本効率の向上を図り、ROE8%以上の達成も掲げている。

san04


また、こころネットとの「価値観の共有」にも言及した。両社はいずれも“人々の心に満足と安らぎをもたらす”という理念を掲げており、「理念やビジョンが一致していることが、統合の大きな決め手となった」と播島社長は語った。両社の統合により、20都道府県・328会館を展開する体制が実現する。

san05


さらに、統合による3つのシナジー効果として「地域の相互補完」「攻めのM&Aによる事業拡大」「葬儀業界再編の中心的役割」を挙げた。新たな事業エリアの拡大と人材交流によってサービス品質を高めるとともに、IT・インフラの共通化や共同購買を通じて経営資源の最適化を図る方針だ。播島氏は「今回の統合を機に、安心と信頼の葬儀サービスを全国に届け、業界の健全な発展に貢献していきたい」と締めくくった。

■統合後の年間葬儀件数5万4千件、国内シェア2.7%へ
続いて、燦ホールディングスとこころネット、両社のトップが統合の狙いと今後の展望について語った。

こころネットの菅野社長はまず、葬儀業界の現状を踏まえ、「高齢化に伴い需要は増加しているが、葬儀の小規模化や低価格化が進み、競争が激化している。単独での成長には限界がある」と指摘。そのうえで、「経営理念の親和性」と「第5次中期経営計画の実現への貢献」という二つの理由から、燦ホールディングスとの統合を決断したと述べた。

さらに菅野社長は、「燦ホールディングス様は“人々の心に満足と安らぎをもたらすサービス”という理念を掲げており、私たちの価値観と深く響き合う」と強調。「今回の統合を通じて、グループ改革と経営効率化を加速させ、品質とサービス力を一層強化したい」と意欲を示した。

一方、燦ホールディングスの播島社長は、「2025年6月にこころネット様からご相談をいただき、当社の10年ビジョンと高い親和性があると判断した」と、経営統合に至る経緯を説明。株式交換を採用した理由については、「こころネットの株主にも統合後の成長を継続的に支えていただくため」と述べ、保有する自己株式を有効活用する狙いも明かした。

san06


統合後のグループは、年間約5万4,000件の葬儀を取り扱う規模となり、国内シェアは約2.7%に拡大する見込みだ。播島社長は「こころネットは互助会制度や地域密着の顧客基盤を持ち、安定した成長が見込める」と述べ、全国規模での事業展開強化に意欲を示した。

株主や利用者へのメリットについて、菅野社長は「株式の流動性リスクが解消され、安定的な配当が期待できる。また、燦ホールディングスが持つエンバーミングやグリーフケアなどのノウハウを共有することで、より高品質なサービスの提供が可能になる」と強調。両社の知見を融合させ、新たなライフエンディングサービスの創出にも意欲を示した。

今後の戦略として菅野社長は、「葬祭事業の差別化と組織体制の強化、人材育成に取り組み、持続的な成長を実現していく」と語った。一方、播島社長は「まずは統合によるシナジー効果を早期に発揮させ、日本の超高齢社会が抱える課題に、両社の総合力で応えていく」と述べた。

両社は今回の統合を契機に、全国規模で“安心と信頼”のサービス提供を推進し、日本のエンディング業界における実質的なナンバーワングループを目指す考えを示した。

今回の経営統合は、両社が長年にわたり築いてきた信頼と地域密着の強みを融合し、葬儀業界の新たな成長モデルを提示するものとなった。超高齢社会の進行や多様化するライフエンディングニーズに対応するため、両社は「安心と信頼」を軸に、全国規模で持続的なサービス提供体制を整える方針だ。創業100年を視野に入れた燦ホールディングスと、130年以上の歴史を持つこころネットの協業により、業界の再編と価値創出が加速することが期待される。

テクニカルライター 後藤 響平


燦ホールディングス株式会社
こころネットグループ

ITライフハック
ITライフハック X(旧Twitter)
ITライフハック Facebook
ITライフハック YouTube

ITビジネスに関連した記事を読む
「軽貨物の日」に考える物流DX!Azoopの調査で見えた運送現場の課題
「会社を継ぐ」という選択肢。トランビが提案する“継キャリ”という新しい働き方
暗号資産の実用に向けた次世代金融インフラ!イオレ「Neo Crypto Bank」構想を発表
創業者兼CEOスティーブン・チャン氏が初来日!デジタルノートアプリ「Goodnotes」、日本市場戦略と新機能を発表
日本のECサイト市場に変革をもたらす!Dotdigitalが日本法人を設立し、本格的な事業展開をスタート





葬儀から壊れていく家族
橘さつき
さくら舎
2025-09-23

関連記事

コメントは利用できません。

カテゴリー

アーカイブ

ページ上部へ戻る