- 2024-1-26
- ITビジネス
- 変形型月面ロボットによる小型月着陸実証機(SLIM)、撮影およびデータ送信に成功 はコメントを受け付けていません
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構と株式会社タカラトミー、ソニーグループ株式会社、同志社大学の4者で共同開発※1した変形型月面ロボット(Lunar Excursion Vehicle 2(LEV-2)、愛称「SORA-Q」、以下「LEV-2」)は、小型月着陸実証機(SLIM、以下「SLIM」)※2の撮影に成功した。
これにより、LEV-2は超小型月面探査ローバ(Lunar Excursion Vehicle 1(LEV-1)、以下「LEV-1」)※3と共に、日本初※4の月面探査ロボットになり、世界初※4の完全自律ロボットによる月面探査、世界初※4の複数ロボットによる同時月面探査を達成した。さらに、LEV-2は世界最小・最軽量※4の月面探査ロボットとなった。
■地上に転送した画像を公開
LEV-2は、LEV-1と共にSLIMに搭載され、2024年1月20日に、LEV-1と共にSLIM着陸直前に月面へ放出された。その後、LEV-2がSLIMおよび周辺環境を撮影し、LEV-1の通信機で地上に転送した画像を公開した。
LEV-2「SORA-Q」が撮影・送信した月面画像(JAXA/タカラトミー/ソニーグループ(株)/同志社大学)
この画像はLEV-1、LEV-2無線局の試験電波データ転送により取得した試験画像。
この画像はLEV-1、LEV-2無線局の試験電波データ転送により取得した試験画像。
この画像は、LEV-1を経由して地上へ転送したものであり、これによりLEV-1・LEV-2間の通信機能が正常に動作したことが確認できた。また、LEV-2が収納状態の球体から変形したことから、SLIMから放出された後に、正常に月面で展開・駆動したことも併せて確認できた。
さらに、LEV-2が自律制御で、オンボードの光学カメラを使って撮影した複数枚の画像の中から、SLIMが画角内に写っている良質な画像を画像処理アルゴリズムにより選定し、送信したことも分かっている。
走行ログを含めたその他のデータについては現在も解析を行っており、今後その結果を公表予定。
■JAXA 宇宙探査イノベーションハブ ハブ長 船木 一幸氏
玩具の技術と最新のセンサー・ロボティックス技術、そしてJAXAの宇宙技術との融合により開発され、優れた自律運用と運動特性とを兼ねそなえたLEV-2「SORA-Q」が、この度、世界最小・日本初の月面ロボットとしてSLIMの撮影に成功するという大きな成果を収めることができました。研究開発に参画いただいた企業・機関の皆様、そしてご支援・応援いただいた多くの皆様に深く感謝いたします。
宇宙探査イノベーションハブが日本中の企業の皆様と連携し、共に月を目指した研究開発を始めてから今年で10年目になります。日本ならではの新しい月面探査技術が数多く育ちつつあり、LEV-2に続く日本の活躍が期待される、月の時代の新たな幕開けです。
■株式会社タカラトミー 代表取締役会長 富山 幹太郎氏
小型月着陸実証機SLIMのピンポイント着陸というミッションにおいて、LEV-2「SORA-Q」が大きな貢献を果たせた事を大変嬉しく思います。これによりSORA-Qは月面に着陸、撮影した日本最初のロボットになりました。今回の成功は共に夢を追い求めた全ての関係者と応援して下さった皆様のおかげです。心より感謝申し上げます。
このSORA-Qプロジェクトの成功が、世界中の子どもたちが自然科学に対する興味や関心を持つきっかけになることを願うと同時に、難しい事や新しい事に挑戦していく事の大切さと、夢と希望を与え自分自身の未来を創り出す力を信じるきっかけとなることを期待しています。
創業100周年を迎えるこの記念の年に、生業である"おもちゃ"の技術が今回の偉業の一翼を担えたことを誇りとし、私たちはこれからも「アソビ発」の新たな挑戦を続けてまいります。
■ソニーグループ株式会社 テクノロジープラットフォーム Exploratory Deployment Group 統括部長 夏目 哲氏
この度、変形型月面ロボットの共同開発に参画し、無事に月面での探査ミッションを達成できたことを、光栄に思います。
本共同研究において、当社は、ソニーセミコンダクタソリューションズのIoT向けスマートセンシングプロセッサー搭載ボード「SPRESENSE™」を活用し、月面ロボットの制御システムおよび画像処理技術の開発を主導しました。共同研究を通じて、宇宙の過酷な環境における民生デバイスの活用の可能性を示せたことは、大きな成果だととらえています。ソニーグループは、今後も新たな技術の創出と、宇宙を含むその応用可能性の探索に積極的に取り組み、私たちの文明の進化や地球の持続可能性に貢献する研究開発に貢献してまいります。
■同志社大学 生命医科学部 教授 渡辺 公貴氏
この度は小型月着陸実証機SLIMプロジェクトに参画して、4者の共同研究の成果物であるSORA-Qが月面での画像の取得を達成したことを大変嬉しく思うと同時に感謝します。SORA-Qは80mmと非常に小さいですが、この小さな一粒が今後の宇宙開発に大きく貢献することを信じます。同志社は来年で創立150年を迎えます。引き続き新しいことへの挑戦をしてまいります。
※1 JAXAが国立研究開発法人科学技術振興機構から受託した「イノベーションハブ構築支援事業」(太陽系フロンティア開拓による人類の生存圏・活動領域拡大に向けたオープンイノベーションハブ)において、「小型ロボット技術 制御技術」を共同で行う契約を タカラトミーと2016年に締結。
※2 将来の月惑星探査に必要な高精度着陸技術を実証する小型探査機。この技術を実証することで、我々人類が進める重力天体探査は、従来の「降りやすいところに降りる」探査ではなく、「降りたいところに降りる」探査を目指した。
※3 SLIMに搭載された小型プローブで、月面に放出されたあとに月面を跳躍しながら自律的に探査する。
※4 JAXA調べ。2024年1月25日時点。
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