- 2014-11-10
- ITビジネス
- NTTコミュニケーションズ, 六代尚, 古澤祐治, 堤香苗, 込戸雄太
- 本格導入事例を紹介! NTTコミュニケーションズ「テレワーク」実践事例勉強会を開催 はコメントを受け付けていません
非正規雇用の問題、また女性社員の結婚退職や産休後の復職問題、長期療養後の会社復帰といった“働き方”が引き起こす問題が深刻化している。特に優秀な女性が結婚を機に会社を退職する“寿退社”などは、本人が退職の意思がなくても、周囲によって、そうした流れを作られてしまい泣く泣く会社を辞め専業主婦をしているなどという元キャリアウーマンも多くいると思われる。
最近ではようやく国を挙げての「女性活用」の取り組みが本格化し、高齢化社会の到来によって老人介護人口の増大に伴い介護のための離職の防止が求められるようになってきた。そこで職場に通勤せずとも、自宅など職場外でもフレキシブルに働くことのできる「テレワーク」がますます脚光を浴びてきている。
またその実現手段として、スマートデバイスの普及やICT技術の発達が、テレワークの根幹を支えてきている。総務大臣もテレワークの推進を明言しており、“古くて新しい”今後の進展が期待される分野でもある。
そうした状況を踏まえ、ICT技術を得意とするNTTコミュニケーションズ株式会社が「テレワーク」の実践事例勉強会を開催した。本勉強会では、テレワークの現状を概観するとともに、既に本格的なテレワークの実践に成功している企業2社を招き、その実例をもとに解説が行われた。
■ワークスタイルの変革とテレワーク
勉強会は、NTTコミュニケーションズ株式会社ICTコンサルティング本部担当課長である古澤祐治氏の発表から始まった。日本企業は長年、日本人、特に男性を働く人材の中心としてきたが、最近は外国人や女性にも重要度が増してきている。もはや「男は黙って外で働くべし」という風潮ではなくなったと言える。そして働く場所も職場だけではなく、在宅勤務、ノマドでも十分に実務をこなすことが可能になってきた。
通勤しないワークスタイルに求められるものとして、下記のような働き方があるという
・いつ何時でもどこにいてもスピーディかつ柔軟に業務を継続できる働き方
・どんな環境、世代、人生フェーズでも、活躍し続けることができる働き方
・グループ、グローバルの知恵と知識と発想をスムーズに結集できる働き方
いわば「オフィス中心」から「人材が中心」となる働き方へとシフトしているというのだ。NTTコミュニケーションズでは、2011年より業務の継続性対策、効率性向上、営業力強化、コストの削減などを目的に、ワークスタイルの変革「働き方変革」に取り組んでいる最中だという。
スマートデバイスや仮想デスクトップ環境/リモートアクセスを活用し、いつでもどこにいても業務を遂行できる柔軟な仕組みが存在するからこそテレワークが実現できる。そんなテレワークの活用強化に向けて、同社では“eワーク制度”の条件緩和を実施した。
具体的には、以前は「育児対象/小学校3年生以下、管理者を除く社員」だったものを見直し、「育児対象/小学校6年生以下、管理者を含む」としたのである。
こうした制度を積極的に活用しやすい風土を作って行くことも重要だ。男性社員の在宅勤務制度利用体験談をサイトにて掲載し、PR活動を実施することで「自分もやってみようかな」という気持ちを起こさせるように努めているという。
ところで、安全で活用しやすいテレワーク環境の実現には、何が必要なのか?
大事なことなので繰り返すがテレワークを支えるICTの考え方としては、「できるだけすべての業務を、いつでもどこでも行える環境の整備が必要」とされる。具体的には、これまで紙中心だったものが、PC(デジタル)中心となり、そしてシンクライアントの活用、シンクライアントとBYODへと進化してきている。
いかさらながらBYODとは、「Bring Your Own Device」の略で、社員が個人で所有している情報端末(フィーチャーフォン、スマートフォン、ノートPC、タブレット等)をビジネスに活用し、コストを抑えながら、新しい働き方、効率的でスマートなワークスタイルを実現する方法だ。もちろん、セキュリティに関しては、細心の注意を払う必要がある。
ところで情報漏えいの防止が叫ばれる中「なぜ、いまBYODなのか?」
それには以下の3つの“必要”があったからだという。
理由1:競争力を高め、働きやすい環境を構築する手段として“必要”
理由2:コストのかかるスマートデバイスを低コストに導入するため“必要”
理由3:消費者/生活者のITの方が先進的 => ビジネスで活用するため“必要”
SkypeやLINE、Messengerなどを使ったWeb会議は、インターネット環境が整っていれば、場所や時間に関係なく実施できる。カメラとマイクによってまるで同じ打ち合わせ卓についているようなリアルさでディスカッションできる。今日では、世界中に散らばるスタッフとの業務にWeb会議が不可欠となっている。
テレワークを支える様々な工夫としては、仮想デスクトップを中心とした各種ICTと、導入に関する制度面、ポリシー面の整備が育児中の社員の在宅勤務を含む多様なワークスタイルを実現するという。
■労働市場から見たテレワークの重要性
次いで株式会社キャリア・マム代表取締役堤 香苗氏から労働市場から見たテレワークの重要性についての説明があった。
同社は、全国10万人の主婦をテレワークで組織化し、雇用の限定された地域でも就労可能なビジネスモデルを構築し、マーケティング・プロモーションやアウトソーシング事業などを展開している。テレワークのプロフェッショナルといってもいい企業だ。
設立後18年間、一貫して行ってきたのは「育児などで隔離された人に対する社会復帰支援」、「企業支援事業」、「働き方」「ワークスタイルバランス」「ダイバーシティ」等をテーマにした講演・セミナー、パソコン等の就労訓練事業等の運営などである。
たとえば日本の労働人口は、男性が減少し女性が上昇しているという。非労働力人口(約4500万人)における「就業希望者(約428万人)」の内訳としては、137万人の人が働く意欲があり、そのうちの29万人はテレワークさえ可能ならすぐにでも就業できるという。
たとえば同社では、働き方に合わせ、権限や就労期限はほぼ同等ながら、多様な雇用形態を採っているという。常時在宅型テレワークをしている13人中7人が正社員というのも同社の特徴だ。このほかに就労期限は有限になるが、プロジェクト単位で固定支払いをしているグループリーダーが毎月30人ほどいるそうである。
同社のテレワーク体制について、同社の込戸雄太氏から詳しい説明がなされた。クライアントとのやり取りは、営業またはプロジェクトマネージャーが対応し、サブマネージャーに業務を指示する。サブマネージャーは、グループリーダーや、在宅ワーカーに指示する形を取る。
Webコンテンツ制作事例では、在宅ワーカーは撮影チーム、ライティングチーム、校正チームの3つに分かれており、同社のプロジェクトマネージャーが間に立って進捗管理を行う。各チームが直接やり取りを行わないため、在宅ワーカーの個人情報は漏えいしないというわけだ。
同勉強会では、インターネットのテレビ会議を使って、海外の在宅テレワーカーに実際の勤務について語ってもらった。
いわく、テレワークの良いことは、時間の使い方を、ある程度、自分の采配でコントロールできる点だという。逆に苦労したことは、コミュニケーションが取りにくいことだそうだ。自己管理ができないと仕事に集中できなかったり、逆に仕事に集中しすぎて仕事をしすぎたりすることもあるという。
■テレワーク活用事例「CAVA」
NTTコム チェオ株式会社ICTサポート事業部 事業部長六代 尚氏は、在宅のスタッフを活用したテレワーク事業について解説した。
同社は、ICTで人をつなぎ、人でうごかす「Human Cloud Company」というテーマを掲げている。これはICTテクニカルサポートを核としたサービスの提供で、多くの人がICTを使いこなすための現場ニーズにきちんと応えることができることを目標にしたテーマだそうだ。具体的には、電話サポートサービスや訪問サポートサービスなどを、相手のニーズをくみ取り、しかもわかりやすく行うことだという。
テレワークの事例としては、2001年に開始して以来、在宅スタッフ1900名を擁するまでになった。その内訳としては、電話サポート業務を行う「電話サポートスタッフ(CAVA)」が全国に約1000名、訪問サポート業務を行う「技術スタッフ(F-CAVA)」が全国に約900名からなるそうで、大手ISP会員向けのテクニカルサポートを行っている。
電話サポートスタッフ(CAVA)は在宅であり、インターネット検定「ドットコムマスター」合格者から募集し、説明会、適性検査、面接、スキルチェック、研修などを経て、CAVAスタッフとして業務を開始する。
在宅スタッフ(CAVA)を活用したバーチャルコンタクトセンターの仕組みとしては、ユーザーからデータセンターにダイヤルがあると、クラウドを介して電話サポートスタッフ(CAVA)や、技術スタッフ(F-CAVA)に連絡が入る。顧客情報閲覧を必要とするサポートなどは、電話サポートスタッフ(CAVA)からコンタクトセンターへ転送される。
同社の強みは、在宅スタッフ(CAVA)運用を継続させる業務形態を採っている点だ。一般的な在宅スタッフの活用では、ベース部分はコールセンターで対応し、あふれた部分を在宅スタッフで対応させている。NTTコム チェオでは、ベース部分は在宅スタッフで対応し、あふれた部分はコンタクトセンターで対応と真逆のことを行っているという。
またBCP対策の有効性(災害・パンデミック発生時)も大きな強みだ。全国分散型モデルは、災害などの緊急事態の際に業務停止リスクにセンター分散以上の対策効果がある。実際、2011年3月の東日本大震災で、仙台コアコンタクトセンターが被災し機能停止した際もサポート業務を中断することなく、1時間後には応答率90%以上に回復したというのだから、その効果がいかに優れているかわかるだろう。
同社は今後、テクニカルサポート以外のあらゆる業務分野において、テレワーク活用で受託するビジネスモデルの展開を目指すとしている。
以上、駆け足だがテレワークを実現するための実例や必要とされるICT技術などを紹介してきた。今後もこうした在宅ワークや通勤しない働き方が増えていくことと思われる。
こうした勉強会は、なかなか実際を把握できていないため非常に貴重な機会となった。自社でも有能な女性社員を手放したくないのであれば、テレワークの導入を検討してみるのはどうだろう。その際にNTTコミュニケーションズが持つICTソリューションが在宅テレワークの一助となってくれるかもしれない。