火花散る刀鍛冶の現場へ!「布都正崇鍛刀場」で日本刀の鍛錬を見学【天理 倉の耕流祭】

  • 2026-11-6
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真っ赤に熱せられた鋼を打つたびに、火花が飛び散り、金属を打ち付ける音が工房内に響き渡る。奈良県天理市にある「布都正崇鍛刀場(ふつのまさたかたんとうじょう)」では、日本の伝統技術を受け継ぐ刀鍛冶が、一振りの日本刀づくりに情熱を注いでいる。2026年11月6日(金)から8日(日)まで開催されるオープンドア・イベント「天理 倉の耕流祭」を機に、同鍛刀場を訪問した。日本刀が完成するまでの工程について説明を受けるとともに、鋼を熱して何度も打ち鍛える「折り返し鍛錬」の作業を間近で見学した。炎と鋼に向き合う職人の姿を通して、日本刀づくりの奥深さと伝統技術の魅力に迫った。

■「一期一振」の思いを込めて日本刀を製作する「布都正崇鍛刀場」
「布都正崇鍛刀場」は、日本最古の道として知られる「山の辺の道」や石上神宮がある奈良県天理市に位置する鍛刀場だ。日本刀の伝統的な製作技術を受け継ぎ、日々作刀に取り組んでいる。
同鍛刀場が目指しているのは「自然のように奥深い刀」だという。「一期一会」の出会いに感謝を込め、「一期一振」を心に、一振りの日本刀を打つことを大切にしている。

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日本刀は、日本を代表する伝統工芸品のひとつだ。その特徴は、鋭い切れ味と強靭さを両立させた構造だけでなく、美しい曲線や刃文(はもん)などの造形美にもある。
しかし、一振りの日本刀が完成するまでには、素材の選別から鍛錬、成形、焼き入れなど、数多くの工程が必要となる。

今回の見学では、日本刀の原料となる玉鋼(たまはがね)や製作工程について説明を受けた後、実際の作業を見ることができた。

■玉鋼から日本刀へ!一振りの刀が完成するまでの工程
日本刀づくりに欠かせないのが「玉鋼」だ。玉鋼は、砂鉄と木炭を原料として、伝統的な製鉄法である「たたら製鉄」によって生み出される鋼であり、日本刀の主要な材料として使用されている。

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日本刀を製作する際には、まず玉鋼を熱して打ち延ばし、細かく割って素材を選別する。この工程を「水へし・小割り」という。
続いて、選別した鋼を積み重ね、高温で熱してひとつの塊にする「積み沸かし」を行う。

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その後に行われる重要な工程が「折り返し鍛錬」だ。
折り返し鍛錬とは、高温に熱した鋼を鎚(つち)で打ち延ばし、折り返して重ね、再び熱して打ち鍛える作業を繰り返す伝統技法だ。

この作業には、鋼に含まれる不純物を取り除くとともに、炭素の含有量を調整し、素材の性質を均一に近づける目的がある。何度も折り返して鍛えることで、鋼の内部には細かな層が形成され、日本刀特有の美しい地肌にもつながっていく。

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一般的な日本刀の製作では、この折り返し鍛錬を15回程度行うことがある。仮に15回折り返した場合、理論上は約3万3,000層にもなるという。
鍛錬を終えた鋼は、硬さの異なる鋼を組み合わせる「造り込み」などの工程を経て、刀身の形に加工される。

日本刀には、硬い鋼と比較的軟らかい鋼を組み合わせることで、切れ味と粘り強さを両立させる工夫が施されている。

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さらに、鋼を棒状に打ち延ばす「素延べ」、刀身の形を整える「火造り」を経て、日本刀らしい姿が生まれる。
続く「焼き入れ」は、日本刀の切れ味や刃文を生み出す重要な工程だ。刀身に焼刃土(やきばつち)を塗り、加熱した後に水で急冷することで、刃の部分を硬くする。

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その後、刀身の形を整え、研磨などの工程を経て、一振りの日本刀が完成する。

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このように、日本刀づくりは単に鋼を打つだけの作業ではない。素材の選別から鍛錬、成形、焼き入れに至るまで、多くの工程を積み重ねる必要があるのだ。

■火花が飛び散る迫力の作業!「折り返し鍛錬」を間近で見学
今回の見学で特に印象的だったのは、実際の鍛錬作業だ。
鍛刀場では、刀鍛冶が高温に熱した鋼を打ち鍛える「折り返し鍛錬」の作業を見せてもらった。
真っ赤に熱せられた鋼に向かい、鎚を振るう職人。鋼を打つたびに火花が飛び散り、金属を打ち付ける音が工房内に響く。

迫力のある光景だが、決して力任せに鋼を打っているわけではない。
日本刀づくりでは、鋼を熱する温度や打つタイミング、力の加減などを見極める必要がある。素材の状態は常に変化するため、長年培ってきた知識や経験が欠かせない。
特に折り返し鍛錬では、熱した鋼を適切な状態で鍛えなければならず、高度な技術が求められる。

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鋼を折り返して鍛える際には、重ねた部分をしっかりと接合させる必要がある。温度が適切でなかったり、鍛え方に問題があったりすると、鋼の内部に欠陥が生じる可能性もある。
つまり、折り返し鍛錬は単に鋼を強く打つ作業ではなく、素材の状態を見極めながら、慎重に進める必要がある工程なのだ。

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また、鍛錬では火や高温の鋼を扱うため、危険も伴う。今回の見学では、普段は見ることのできない刀鍛冶の作業を間近で確認でき、日本刀づくりがいかに繊細で手間のかかる仕事なのかを実感した。
完成した日本刀を見る機会はあっても、その製作工程を見る機会は多くない。今回の実演は、刀鍛冶が受け継いできた技術の価値を知る貴重な体験となった。

■日本刀の製作技術を生かした包丁やペーパーナイフも展開
布都正崇鍛刀場では、日本刀の製作だけでなく、その技術を応用した製品づくりにも取り組んでいる。
代表的な製品として挙げられるのが、玉鋼を使用した包丁やナイフ、ペーパーナイフなどだ。
これらは、日本刀の作刀技術を生かし、伝統的な製法によって製作されたものだ。長年受け継がれてきた刀鍛冶の技術を、現代の暮らしに取り入れられる製品として展開している。

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日本刀は美術品として高い価値を持つ一方、日常生活で使用する機会は限られている。しかし、包丁やペーパーナイフといった身近な道具に作刀技術を取り入れることで、伝統技術の魅力をより多くの人に伝えることができる。
また、同鍛刀場では、隣接する天然染織工房「rukki」とのコラボレーション製品も手がけている。

日本刀づくりと藍染めという異なる伝統技術を組み合わせることで、それぞれの特徴を生かしたものづくりに取り組んでいる点も興味深い。

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「天理 倉の耕流祭」では、こうしたオリジナル製品の展示・販売も実施。単に製品を購入するだけでなく、作り手の仕事や製作へのこだわりを知ることができる点も、工房を訪れる魅力のひとつだ。

■日本の伝統技術を未来へつなぐ、刀鍛冶のものづくり
今回、布都正崇鍛刀場を訪問して感じたのは、日本刀づくりが想像以上に緻密で、職人の経験と技術に支えられた仕事だということだ。
日本刀は、単に鋼を熱して打ち延ばすだけでは完成しない。素材を見極め、何度も鍛え、形を整え、焼き入れを行う。一つひとつの工程を積み重ねることで、初めて一振りの刀が生まれる。

特に印象的だったのは、炎と鋼に向き合いながら作業を進める職人の姿だ。現代では多くの製造工程が機械化・自動化されているが、日本刀づくりには、今なお人間の感覚や経験が重要な役割を果たしている。
また、日本刀は完成した姿だけでも十分に美しい。しかし、その背景にある工程や職人の技術を知ることで、見方が大きく変わってくる。

「一期一振」という言葉には、一振りの刀に真摯に向き合う職人の思いが込められている。
完成した日本刀の美しさだけでなく、その背景にある技術や作り手の思いを知ることができた今回の見学。普段は見ることのできないものづくりの現場を公開する「天理 倉の耕流祭」の意義を、あらためて感じる機会となった。

伝統技術は、受け継ぐ人がいてこそ未来へとつながっていく。布都正崇鍛刀場で目にした炎と鋼、そして職人の技は、日本のものづくりの奥深さを伝える貴重な光景だった。

■布都正崇鍛刀場

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